弥生美術館で「線と言葉・楠本まきの仕事展」を観る

2021年6月から京都国際マンガミュージアムで開催されていたのをうっかり見逃していたので、東京で鑑賞。

私も20代の頃はすっかりハマっていた。しかし何度も引っ越しするので、今では愛蔵書も実家の段ボールの中に眠ったままである。

楠本まきは筆が遅いことで有名だが、ここで展示されている原稿を見て納得した。ミリ単位のこだわりがすごい。逆によく雑誌に連載出来たなあと思う。

今はイギリスに住んでいるということも納得である。何となく今の絵の方がやさしい感じがする。角がとれたというか。

昔よく遊んでいた友達に久しぶりに会ったような、そんな気分になった。

理由のない無差別殺人「該死的阿修羅(ガッデム阿修羅)」

去年の金馬獎にノミネートされ、今年の3月に台湾で一般公開された話題作。台湾文化センターの2022台湾映画上映&トークイベント「台湾映画の"いま"〜革新と継承〜」でオンライン配信された。

映画は3部構成になっている。

第一話:「憤怒的零(怒れるゼロ)」事件が起きるまでの話、第二話:「該死的阿修羅(死ぬべき阿修羅)」事件後の登場人物たちの話、第三話:「奈何橋(三途の川に架かる橋)」もう一つの可能性の話。

この3つの話は事件を起こした少年詹文(ジャン・ウェン)とその友人阿興(アシン)が共同で描いたWEB漫画にもなっている。

そしてこの事件に偶然遭遇した記者の黴菌(メイジュン/バイキン)、高校生の琳琳(リンリン)、広告会社で働いているVita、その婚約者の小盛(シャオション)のその後の生活を描いている。

黴菌以外の5人に共通するのが、オンラインゲームの「王者世界」。特に小盛と琳琳がかなりのめり込んでいて、これがもう一つの事件のきっかけになっている。

全体を通して描かれるのが、それぞれの行き場のない閉塞感。それを象徴するのが檻につながれた犬のオレオだ。例え檻から出してあげてもオレオは逃げられず、また檻の中に戻ってしまう。

第三話は誰にでも加害者にも被害者にもなれる可能性があることを示唆している。詹文が言う臨界点を超えるかどうか。あの世とこの世を繋ぐ奈何橋を渡ってしまうかどうかだ。でもこれは「実は漫画の中のお話でした」というオチかもしれないというちょっと曖昧な終わり方をしている。じゃないとあまりにも救いのない終わり方だ。

現実は100%の幸せも100%の不幸もなくて、その中間でマーブル模様に混ざっているほうがリアルだと思うので、個人的にはこういう終わり方もアリだろう。

監督は映画「一席之地(2009)」「失控謊言(2016)」、ドラマ「台北歌手(2018)」の樓一安(ロウ・イーアン)。監督以外にも脚本も書くし、俳優もしたりする。「台北歌手」は力作で、舞台劇が劇中劇として入るがその中の農民に扮する莫子儀の演技が素晴らしい。

2023年米アカデミー賞国際長編映画賞にも台湾代表として選出されている。

 

追記:2023年6月9日より日本で一般公開。

今年こそ行けるのか!?「台北金馬影展2022」

隔離も無くなり、だいぶ規制が緩和されてきた台湾。タイガーエアも飛んでいるし、これはもしかしたらイケるんじゃないかと期待大。作品ラインナップ&スケジュールも発表されて心はうきうき。そんな中から気になる作品を選んでみた。

台北金馬影展 Taipei Golden Horse Film Festival

 

まずはクロージング作品の「關於我和鬼變成家人的那件事」

林柏宏(リン・ボーホン)と許光漢(グレッグ・ハン)が主演で、監督が「紅衣小女孩(赤い服の少女)」「目擊者(目撃者 闇の中の瞳)」「緝魂(繋がれる魂)」の程偉豪(チェン・ウェイハオ)監督とくれば、観たくなるのは当然。ゲイで幽霊役の林柏宏とストレートで熱血警官役の許光漢が夫夫(ふうふ)になって難事件を解決するお話っぽい。

 

そして金馬獎の各賞にノミネートされている作品の中から「查無此心」

プロデューサー兼主演が張鈞甯(チャン・チュンニン)。連続殺人事件に絡む人物を久々に見る阮經天(イーサン・ルアン)が演じる。

 

「罪後真相」

張孝全(ジャン・シャオチュアン)演じるニュースキャスターが、冤罪で服役している男と一緒に真相を究明するお話っぽい。10月28日から台湾で一般公開される。

 

「黒的教育」

柯震東(クー・チェンドン)の初監督作品で、新人監督賞にノミネートされた。2014年の大麻使用事件で芸能界追放かと思われたが、その後も主演作は途切れず今回は監督としての才能も開花させた。高校生男子3人の青春映画っぽい。

 

香港映画も今年は多くノミネートされている。「窄路微塵」「智齒(リンボ)」「燈火闌珊(消えゆく燈火)」「緣路山旮旯(僻地へと向かう/縁路はるばる)」等等。「白日青春」もその一つ。

黃秋生(アンソニー・ウォン)がパキスタンの難民少年を助けるタクシー運転手を演じている。老人と子供の組み合わせは鉄板だろう。

 

「海鷗來過的房間」

珍しいマカオ映画。作家と役者が虚実を交えてやりあうお話っぽい。

 

ノミネート作品以外にもおもしろそうな映画がたくさん。「聖筊」

今年の12月から公視テレビで放送予定の「你的婚姻不是你的婚姻」シリーズの中の1エピソード。聖筊とは台湾のお寺で占う時に使う赤い半月型のもの。これですべての問題を解決しようとする夫婦のコメディ映画。劉冠廷(リウ・グァンティン)が、最近は演技の幅を広げてコメディにも手を出してきている。

 

「給十九歲的我」

張婉婷(メイベル・チャン)監督が母校の英華女學校が新校舎に改装するにあたり、学生たちを10年に渡って撮ったドキュメンタリー映画。英華女學校は100年以上の歴史がある香港の中でも由緒正しい学校。

 

中華圏以外のアジアからは「愛情超競速(Fast & Feel Love)」

タイ映画。やっぱり面白そうだ。だってナワポンだもの。

 

愛的路上貓同行(Max, Min and Meowzaki)

インド映画。タイトルの中の「Meowzaki」は猫の名前。何となく日本人の名前っぽい?猫アレルギーなのに猫を飼うことになる男のコメディ映画。

 

期待していた「過時・過節」はどうも日にちが合わなさそう。こうなったら大阪アジアン映画祭に期待するしかない。

チケット発売は10月22日13時台湾時間から!

ディズニープラスで観られる「正義的算法(正義の法則)」

ディズニープラスが初めて配信した台湾ドラマ。bilibiliもお金を出していて中国大陸でも見られる。約40分×26話で、2話で1エピソードが完結する。

主演は陳柏霖(チェン・ボーリン)と、郭雪芙(パフ・グオ)というコメディもシリアスもイケる手堅いキャスティング。脇役やゲストも曲者揃い。法律ドラマだけどコメディなのでサクサク続けて見られる。

第1話なのに実は第7話の続きになっていて、オープニングが終わってすぐにそこから過去に遡るのはかなり斬新。初日に一気に6話まで配信されたのと関係があるのだろう。敏腕悪辣弁護士劉浪の性格が徐々に変化していくのを、陳柏霖は実にうまく演じている。

ラーメン頭で奮闘する熱血弁護士林小顏を演じる郭雪芙と陳柏霖との掛け合いもぴったりだ。だからといって恋愛話に発展したりしないもいい。

主役以外にもみんなそれぞれいい味出しているが、大家役の廖威廉(ウィリアム・リャオ)の変身ぶりに一番驚く。

これが

こうなる。こういうのを見ると役者ってすごいと思う。こんな強面だけど、やさしくて頼りになるいい大家さんだ。

そしてもう1人、このドラマを盛り上げているのが良良。

この子役がめちゃくちゃ可愛い。しかも演技もうまい。10年後がとても楽しみ。

監督の許富翔は2021年に陳柏霖主演で映画「詭扯」を撮っている。これもゆるいブラックコメディ。

「正義的算法」に出ている役者もちらほら。信頼関係があるからこそ「正義的算法」でのびのび演技出来たのかもしれない。

そして昔も今も変わらずかっこいい陳柏霖。人気も演技力もまったく衰えないのがすごい。このままおっさんになってもかっこいいんだろうな。

香港亞洲電影節2022(Hong Kong Asian Film Festival)ラインナップ発表

期間は10月25日から11月13日まで。香港映画はもとより、台湾、タイ、フィリピンなどの作品も多数。チケットの発売はオープニング&クロージング作品は10月1日午前11時(香港時間)から。その他の作品は10月2日午前11時から。

HKAFF - Hong Kong Asian Film Festival

オープニングは2作品。そのうちの1つが「過時・過節」。

釜山国際映画祭に続いての上映。香港での一般公開は11月24日。上映は初日の2回のみなので、チケットは秒殺で売り切れそう。

→案の定1時間で完売。

 

もう1つは「窄路微塵」。

最近主演作品が増えた張繼聰(ルイス・チョン)。清掃会社を経営するしがない中年とシングルマザーとの間に恋がめばえるお話っぽい。

 

クロージングも2作品。まずは「燈火闌珊(消えゆく燈火)」。

今年の東京国際映画祭でも上映予定。ベテラン俳優2人の手堅い映画。

 

もう1つは「流水落花」。

鄭秀文(サミー・チェン)主演だけど、ラブコメではない。里親としてさまざまな子供たちと接することによって過去の悲しみを乗り越えようとする女性のお話らしい。サミーが出演する真面目な映画ってイマイチな場合が多いが、今回はどうだろう。

 

その他で気になる作品もいろいろ。「Fast & Feel Love」。

ナワポン・タムロンラタナリット監督の最新タイ映画。スポーツスタッキングに命を懸ける男が愛を取り戻すお話らしい。このポスターも何かのパロディっぽいが、ベトナム版のポスターはまさにあの韓国映画のパロディ。でも何でwww

 

同じくタイ映画「Arnold Is A Model Student(アーノルドは模範生)」

こちらも釜山国際映画祭に続いての上映。模範生の学生が学校や社会に反抗していくお話らしい。この絵面だけで楽しそう。監督はこれが長編デビューの新人。

→今年の「東京フィルメックス」で上映決定。

filmex.jp

 

香港への渡航はだいぶ緩和されてきたが、まだまだ普段通りとはいかなそう。あともう少しだ。

遂に登場「台北女子圖鑑(台北女子図鑑)」

コロナの影響で製作スケジュールが延び延びになってしまったが、遂に9月からディズニープラスで配信が開始された。Netflixに対抗しているのか、ディズニープラスもアジア向けの作品に力を入れ始めている。

しかも主演は桂綸鎂(グイ・ルンメイ)。ドラマの主演は14年ぶりだとか。他にも王柏傑(ワン・ボージエ)や夏于喬(シャー・ユーチャオ)も幼馴染として登場する。最初の彼氏阿南は巫建和(ウー・ジエンホー)だし、今後登場する俳優リストには張孝全(ジャン・シャオチュアン)、石頭(ストーン)、鳳小岳(リディアン・ヴォーン)、林柏宏(リン・ボーホン))范少勳(ファン・シャオシュン)の名前も入っている。

「北京女子図鑑」「上海女子図鑑」は10年間の物語だが、台北編は20年間。だから桂綸鎂なのかとここで納得する。

以前の感想はここ。

mingmei2046.hatenablog.com

今回も地方から上京して都会で自分の欲しい生活を手に入れるサクセスストーリーだ。毎週水曜日に更新で、21日のみ2話分を配信している。なのでまだ2話しか見ていないが、かなり期待出来る。

監督は映画「人魚朵朵(靴に恋する人魚)2005」「基因決定我愛你(DNAがアイラブユー)2007」「背著你跳舞(2010)」の他、台湾版ドラマ「ハチミツとクローバー」「あすなろ白書」を撮った李芸嬋(ロビン・リー)。ちょっと浮世離れしたファンタジーが好きな監督だ。

女の20代から30代はまさに人生いろいろ。自分を見失うこともあるし、誘惑に負けることもあるさ。そこを乗り越えた先に見える景色は多分、想定外。

第27回釜山国際映画祭で香港映画「過時・過節」が上映されるよ

韓国語も英語も映画の内容を追えるほど得意ではないので、釜山国際映画祭は作品のチェックはするが行こうと思ったことはない。

부산국제영화제 | 5-14 October, 2022

しかし今年は違う。どうしても見たい映画を見つけてしまった。通常だったらさくっと日帰りで行くところだ。


www.youtube.com

だってこの2人が出てるから。香港では11月24日から一般上映予定。この釜山での上映がワールドプレミアになる。家族間の矛盾を描いた映画らしい。主演は毛舜筠(テレサ・モウ)。Edan(呂爵安)はその息子の阿陽役で、Anson Lo(盧瀚霆)は阿陽の友人役。

日本、台湾,澳門マカオ)のパスポート保持者であれば、今ならビザも隔離も必要が無い。でも登録しなければいけないものがいろいろあってそれが面倒くさい。今から連休も取れないのでやはり無理だろうな。

「過時・過節」以外にも気になる作品がいくつかある。

 

「別れる決心」

湯唯(タン・ウェイ)主演の韓国映画。韓国では既に一般公開済。

 

「DECEMBER」

アンシュル・チョウハン監督の日本映画。

→2023年大阪アジアン映画祭コンペティション部門に「赦し」のタイトルで上映決定。

 

「默殺」

マレーシア人監督柯汶利(Sam Quah)の台湾映画。吳慷仁(ウー・カンレン)と黃健瑋(ホアン・ジエンウェイ)が出演。

チケットは9月27日14:00から発売開始。

その他今年の大阪アジアン映画祭で注目を浴びたモンゴル映画「セールスガール」も上映される。タイ映画「Arnold is a Model Student」もおもしろそう。