第18回大阪アジアン映画祭上映作品発表

今年も大阪アジアン映画祭の季節がやって来た!今年こそリモートではなくゲストの来日に期待したい。

 

今回は特に香港映画が大豊作。まずはこれこれ。

「過時·過節(香港ファミリー)」

MIRRORのメンバーであるEdan(呂爵安)が主演。是非大阪に来て欲しいが、韓国でも台湾でもゲスト参加していないので、監督のみの可能性が大きい。そこを何とか。

 

「白日青春(白日青春)」

去年の金馬獎では黄秋生(アンソニー・ウォン)が最優秀主演男優賞を受賞したことで話題になった。香港では3月30日、台湾では3月30日から一般公開。

 

「窄路微塵(窄路微塵)」

金馬で鑑賞済。感想はこちら。お勧め。日本の配給会社が既についているということは、日本での一般公開も近いかも。

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「深宵閃避球(深夜のドッジボール)」

いくつになっても爽やかな鄭伊健(イーキン・チェン)が主演。アート系だけでなくこういったエンターテイメント映画も上映してくれるのが、大阪アジアン映画祭のいいところ。

 

「流水落花(流水落花)」

鄭秀文(サミー・チェン)がほぼスッピンで主演。香港では3月2日から一般公開。

 

台湾映画も話題作が上映される。

「黑的教育(黒の教育)」

柯震東(クー・チェンドン)が監督、九把刀(ギデンズ・コー)が脚本を担当。78分と少し短め。台湾では3月3日から一般公開。

 

「本日公休(本日公休)」

台湾ではこんなレトロな理容室が今でもあちこちに健在している。台湾では3月3日から一般公開。

 

その他の映画も気になる映画がいろいろ。

「ライク&シェア」

インドネシア映画。イマドキのインドネシアの高校生の実態が垣間見られる。インドネシアの経済の発展につれて、映画のジャンルも多種多様になっている。

 

「ユー&ミー&ミー」

タイ映画。話題作を次々と世に送り続けている「GDH559」の作品。予告編からしてキュンキュンする。

 

「マックスとミンとミャーザキ」

インド映画。金馬で鑑賞済。感想はこちら。お勧め。

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今年はオープニング作品が初日の10日ではなく、15日に上映される。この方が連休が取りやすいのでラッキーだ。さてさてどんな作品が観られるのか楽しみだ。

カメラが捉えた香港理工大学包囲事件「理大圍城(理大囲城)」

香港理工大学は尖東から歩いていけるし、中にザハ・ハディドの建築もあって昔からよく行っていた。それが戦場になるなんて誰が知るだろう?

これもFBなどでニュースを追ってはいたけど、当時は全貌はつかめないまま。周冠威(キウイ・チョウ)監督のドキュメンタリー映画「時代革命」でも取り上げられていたが、今回この映画で更に内情を知ることが出来た。

ここでも若者(18歳未満の未成年も多数)VS警察の対決が描かれている。警察は催涙弾、ゴム弾から放水車まで揃え、特殊部隊も投入して彼らを取り囲む。それに対するのはほぼ丸腰(せいぜい火炎瓶とレンガ)の若者たちだ。これはどう考えてもおかしいだろう。彼らは武器を持ったテロリストや過激派ではないのだ。完全包囲されて外に出られなくなった彼らは何とか必死に脱出を試みる。そこを待ち構えるのが武器を携えたフル装備の警察だ。

前回の雨傘運動と違って、今回のデモには分かりやすいリーダー的存在がいない。スマホとアプリを駆使して、各自が自分の得意分野で参加するフラット型だ。逆に言えばスマホさえあれば、誰でも家族や学校、会社にバレずにデモに参加できる。よく日本の60年代の学生紛争が引き合いに出されるが、それよりもっと敷居が低くなって低年齢化も起きている。台湾の立法院占拠の時、一部の人達だけでデモを進行していくことの限界を見せつけられたが、それも関係しているのかもしれない。

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「時代革命」にしろ今回の2作品にしろ、香港人が訴えているのは、しごくまともで、他の国では保証されている「自由」だ。アメリカから送り込まれたスパイが先導しているわけでもないし、特別な訓練を受けたテロリストがいるわけでもない。

それが当局には理解できない。

見どころ満載の話題作「媽,別鬧了(ママ、やめて!)」

全11話。仲のいい母と娘2人のお話。主役以外の脇役も個性的なキャラばかり。ホームドラマなのにセックスに対する女性の気持ちもあけすけに語られているところが新しい。

最初、60過ぎでも枯れないパワフル過ぎる母親にまったくついていけなかったが、吳慷仁(ウー・カンレン)が最後のほうまで出演しているのでそれでやっと完走出来た。

吳慷仁は今回も役に合わせて肉体改造をして挑んでいる。長女の恋人役だが、これにはからくりがあって最後にそれが明かされる。かなりのナルシストで部屋に飾った自画像が笑える。

しかも自分で描いた設定。どんな奴だよw

今回かなりはじけていて、しかもサービス満載。

全裸+モザイクはドラマ「戀愛沙塵暴」でも披露している。かと思うと

シャイなコンビニの店員になったり。まさに吳慷仁劇場。

単なる母娘のドタバタコメディかと思いきや、時々挿入されるナイスなパパとのエピソードが泣ける。

次女の彼氏のダメ男っぷりもなかなかいい。演じるのは出演作が途切れない人気者の林柏宏(リン・ボーホン)。若い時は何故ダメ男がモテるのか理解できなかったが、最近やっとようやく分かってきた。出木杉君じゃダメな時があるのだ、女には。そしてダメ男にはそんな女を嗅ぎ分ける臭覚みたいなものがあるのだろう。まさに需要と供給だ。

生々しい攻防戦「少年(少年たちの時代革命)」

大坂でも1月2日からシネ・ヌ―ヴォで公開された。

物語はフィクションだが、2019年の民主化デモの最中に撮影された映像がインサートされていて、これが臨場感たっぷりでリアル。

予算は60万香港ドル(約1000万円)、監督は長編映画を撮るのは初めての新人、そして出演者はほぼ素人ばかりという異色の映画。しかし世界中から注目され、映画祭などで上映されている。上映を禁止されている中国、香港を除いて。台湾では2021年の金馬で上映され、2022年4月に一般公開された。

左からプロデューサー兼脚本の陳力行(ダニエル・チャン)、任侠(レックス・レン)監督、林森(ラム・サム)監督。任侠は憎らしい私服刑事役としてこの映画に出演もしている。他にもドライバーの妹役で、任侠監督の短編映画「一Pair囡(クイーンのワンペア)」でも出演していた麥穎森(マック・ウィンサム)が出演している。

監督も出演者も若いが、エンドロールに流れるスタッフの名前が愛称になっていることから見て作り手も若そうだ。映画のテーマに関係して、本名が出せないというのもあると思うが。

少女YYを探すために少年たちは香港の街を駆け巡る。YYが住むマンションは葵盛西邨で、ロケ地も葵涌あたり。MTR荃灣線の葵芳駅や、葵涌廣場も映画の中に登場する。

このポスターは映画の最後のほうにあるワンシーンから切り取ったもの。監督が一番伝えたかったのはこのシーンのはず。

とっても懐かしいぞ「行動代號:孫中山(コードネームは孫中山)2014」

「大阪アジアン映画祭傑作選」から。2014年公開時は台湾にいたので、台湾で鑑賞済。日本語字幕では初めて。

易智言(イー・ツーイェン)監督は「藍色大門(藍色夏恋)2002」で有名だが、とにかく寡作。この作品は彼の第3作目の長編映画になる。

家が貧しい高校生たちが、倉庫に眠っている孫文銅像を何とか盗んで売ろうとするドタバタコメディ。コメディだけど、底辺には子供ではどうにもならない貧乏の連鎖がシリアスに描かれている。

主人公の阿左の性格がひょうひょうとしていて、既に笠智衆の域に入っているのがおもしろい。逆に阿左と銅像を取り合う小天の、必死で貧乏に抵抗している姿にも感動する。

ゲスト出演が豪華。警備員は張孝全で、その恋人に李千娜(リー・チェンナ)。地下鉄に乗り合わせているのは黄河(ホアン・ハー)、担当の先生は張書豪(チャン・シューハオ)だ。テコンドーを教えているのは、実際のテコンドー選手の楊淑君(ヤン・シュージュン)。

作品としてはおもしろいが、台湾でも興行成績はいまひとつでヒットにはいたらなかった。このへんが映画製作の難しいところだ。

大阪アジアン映画祭プレイベントをナナゲイで開催

プレイベントって何?なぜ十三?とかいう疑問は取りあえず置いといて、第七藝術劇場にレッツゴー!

3作品を5日間のみで上映。「戀人絮語(恋人のディスクール)2010」や「行動代號:孫中山(コードネームは孫中山)2014」が今まで日本で公開も配信もされてないことに、逆に驚いた。「戀人絮語」の以前の感想はこちら。

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おそらく中国大陸の違法サイトで拾ったものを見たのだろう。なので日本語字幕で見たのは今回が初めて。

香港映画だが、ポンちゃん(彭于晏/エディ・ポン)は広東語がまだ話せないのか吹き替え。この次の年に台湾映画「翻滾吧!阿信(ジャンプ!アシン)2011」で肉体改造して、香港映画「激戰(激戦 ハート・オブ・ファイト)2013」で更に脂肪をそぎ落とし、その後は中国大陸で大活躍することになる。

妄想少女を演じた謝安琪(ケイ・ツェ)は歌手としてのほうが有名。実は張繼聰 (ルイス・チョン)のヨメで、夫婦ともども動物性の食物を一切取らないらしい。

この映画の中で唯一中国語を話しているのが、范曉萱(メイヴィス・ファン)。台湾出身で彼女も歌手。女優としての出演作は少ないが、どれもツボを押さえた作品ばかり。最近だとNetflixの「罪夢者」の白蘭役の演技が冴えていた。

「人は恋愛すると脳で麻薬性物質が放出されてハイになり、失恋すると禁断症状に陥る。」というのは納得。だからみんなおバカになるのに恋することをやめられないのさ。

「她和她的她(ふたりの私)」をNetflixで観る

約45分×9話。ミステリー仕立てになっていて最後に理由が明かされる。DVにしろ性犯罪にしろ、当事者になってみないと分からないことは多くある。このドラマではそういった被害者の心の傷を丁寧に描いていて、更に加害者の心理状態も見せてくれる。

性犯罪は犯罪自体もつらいが更につらいのは、その後の周りの無理解だろう。時には被害者を責めるような言動にも遭遇して、もしかしたらこっちの2次被害の方が傷つくかもしれない。これは飲酒運転の車に引かれた被害者に対して、「道路を歩いてる時になんでもっと注意しなかったんだ」って責めるようなもの。このドラマでも主人の晨曦(チェンシ―)は家族や学校からの理解が得られず孤立する。

実は性犯罪の加害者の多くは被害者の知り合いだったという統計がある。「2015年版犯罪白書」では顔見知りの犯行は3割。届けていないほうが多いだろうから実際はもっと多いと思う。通りすがりの変態強姦魔なんてごく少数で、加害者はこのダニーのように一見いい人そうな普通の人なのだ。

このダニーに代表される加害者はハンターみたいなもので、弱そうな獲物を的確に見つけ出し狙いを定めたら決して逃がさない。このダニーを演じるのが吳慷仁なのだが、実に見事に演じていて怖い。

そして性犯罪の誤解としてあるのは「被害者が抵抗しなかったので合意だろう」という思い込みだ。人間は大きなストレスがかかると思考がストップしてしまう。そうなると体が思うように動かなくなり抵抗出来なくなる。この心理的な流れはここに詳しく述べられている。

「性犯罪被害者の心理」講演全文

http://vsco.info/270725kouen.html

この晨曦に寄り添う恋人を演じているのが、李程彬(トビー・リー)。このドラマでは1人2役を演じている。どこかで見たようなと思ったら、中国映画「七月與安生(ソウルメイト/七月と安生)」に出ていた。周冬雨(ジョウ・ドンユィ)と馬思純(マー・スージュン)がバチバチにやりあう映画なので影が薄くなっても致し方ないだろう。

主演以外にも俳優陣の層が厚くて見ごたえがある。温貞菱(ウェン・チェンリン)のビッチな演技もますます磨きがかかっている。李霈瑜(リー・ペイユー)も映画「消失的情人節(1秒先の彼女)」以降、出演作が増えて大人気だ。

一度ついた傷が消えることはないが、それがかさぶたになり傷跡だけになって痛く無くなればいいなと思う。