東京フィルメックスで「瀑布(The Falls)」を観る

鍾孟宏(チョン・モンホン)監督の新作。台湾では10月29日から一般公開。

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鍾孟宏ファミリー以外にもよく見かける面々がゲスト出演している。離婚した父親は李李仁(リー・リーレン)、母親の再就職先の上司は陳以文(チェン・イーウェン)、精神科医は許瑋甯(ティファニー・シュー)、消防士は劉冠廷(リウ・グァンティン)だ。

高校卒業まじかの娘が統合失調症の母親の面倒を見る内容だが、敢えて極端な展開は避けている。ドラマティックに話を盛ろうとすれば、母親をもっと怖ろしく描くことも出来ただろうし、言い寄ってくる上司も下心見え見えのゲス男にすることも出来たはずだ。しかし監督がここで描き出したいのは、未成年の娘と母親の立場が逆転した日常生活なのだ。2人の生活に寄り添うように物語は進んでいき、後半にはくすっと笑えるようなエピソードも盛り込まれている。そしてそのまま平穏な日々が続くのかと思いきや、最後に怒涛の展開が。これにはちょっと驚いた。結末が悲惨じゃなくて良かったが。

上映の後は監督とのQ&Aがリモートで行われた。相変わらず飄々とした冗談好きな監督である。

プロデューサーとしても含め、毎年何かしら映画制作に携わっている多忙な監督である。次回作は是非監督本人が日本に来てもらいたいものだ。

東京国際映画祭で「智齒(リンボ)」を観る

第一印象はポスターからも分かる通り「みっちり」。監督はきっと余白恐怖症に違いない。香港では11月18日から一般公開。

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全編モノクロなのはあまりにもグロいシーンが続くからだろう。最初の腐敗した左手のシーンからして臭いまで漂ってきそう。それでもそれがスタイリッシュかつ美学まで感じ取れてしまうのはベテラン鄭保瑞(ソイ・チェン)監督の力量だろう。「狗咬狗(ドッグ・バイト・ドッグ)2006年」「意外(アクシデント)2009」「車手(モーターウェイ)2012」など私好みの作品も多い。今回は更に監督自身が好きなものを突き詰めて撮った感じ。

舞台はディストピアな香港。登場するのはちょっと壊れてしまった刑事、ヤク中、売人、ゴミ拾い、路上生活者などなど。場所もゴミだらけの部屋、行き止まりの路地裏、さびれた団地と香港の裏の世界ばかり。

池内博之の汚れ役っぷりにも感心。イケメンほどああいう役を嬉々としてやりたがったりする。

役者たちはみんな体当たりで演技していて、特に主演女優の根性にも恐れ入った。

しかし!私が観た6日は別の場所で「瀑布」も上映していて時間が被っていた。なので最後の20分間は観られずじまい。泣く泣く映画館を去った。

きっとどこかで続きが観られることを祈ろう。

東京国際映画祭で「青春弒戀(テロライザーズ)」を観る

「弒」て難しい漢字だなあと思っていたら、たまたまその時読んでいた京極夏彦の小説にも書かれていた。これがシンクロニシティということなのか!?

台湾では11月19日から一般公開。

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予告編を見ると通り魔的な犯罪を思わせたが、もっと複雑な構造になっていた。現代を生きる都市部の若者群像劇で、今最も活躍している実力派若手俳優が主演を務めている。そして愛情を渇望しているのに手に入らないもどかしさを初々しく演じている。

しかし、その若手たちを上回る存在感を見せつけているのが、前回「幸福城市」から続けて出演している丁寧(ディン・ニン)姐さん。

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この丁寧姐さん演じる萧姐と事件を起こす明亮が疑似親子のような関係になり、明亮の自首へと繋がっていく。前作の「幸福城市」でもそうだが、この「母親に対する渇望」が何蔚庭(ホー・ウィディン)監督にとって、作品の重要な要素になっているのかもしれない。

但し2010年で長編デビューしてから作品数はまだ多くないので、この2作品で監督の個性を語るのも時期早々だろう。

「幸福城市」の感想はこちら。

mingmei2046.hatenablog.com

最後のうやむやなラストシーンは、観客の想像に委ねるということでいいのではないか。個人的には2人でその後幸せになればいいなあと思う。おバカだけど偉大な愛だ。

メインはバス!「阿索的故事(人生の運転手(ドライバー)~明るい未来に進む路~)2020」

香港はあんなに小さいのに交通機関が充実している。今回は城巴(シティバス)の全面協力のもと撮影されている。シネマート心斎橋にて1週間だけ公開。

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この映画のために王菀之(イヴァナ・ウォン)と林盛斌( ボブ・ラム)はバスの免許を取得。王菀之は9か月かかったらしい。その甲斐あって映画の宣伝では颯爽とバスを運転して登場した。

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分かりづらいけど、運転しているのは王菀之。

王菀之演じる阿索が失恋から立ち直る物語だが、この阿索が実によく出来たヨメでwここでも香港人男子は大人になりきれない頼りない性格として描かれている。

前向きに進む人にはやはり明るい未来が待っている。対照的に登場するのが、姜皓文(フィリップ・キョン)演じる大陸女に振られた李振民。復讐のためには手段を選ばず、阿索も道具の一つとしてみなし綿密な計画を立てていく。最近主演作が増えた姜皓文だが、やっぱり演技が一本調子。実直な役には向いているが。

実はヒール役の大陸女も個人的には嫌いではない。自分の頭と体を使って他人を踏み台にしながらのし上がっていく女というのは、傍で見ている分には面白いからだ。

香港に行けば必ず2階建てバスの2階部分の前から3番目くらいの窓際席を陣取る(最前列は事故ったら危ないから乗らない)。坂道発進やくねくねした細い道にヒヤヒヤしながら乗るのが大好きだ。銅鑼湾(コーズウェイベイ)から東に向かうために海の上に架かった道路を走る時は、まるで海の上を飛ぶ鳥になった気分になる。逆に山道は車酔いをするので絶対乗らない。

また香港のバスに乗りたいなあ。

今年は10月30日~11月8日まで!東京国際映画祭

秋は映画祭の季節。しかし今年も行けるのは東京国際映画祭のみ。スケジュールの発表はこれからだが、取り合えず観たい映画をピックアップしている。しかし中国映画が1作のみで、韓国映画が皆無とは。(もしかしたら注意深く探したらあるのかもしれない。)釜山国際映画祭の中国、台湾、香港映画の多さとは比ぶべくもない。ポンちゃん(彭于晏)の「熱帯往事」と張芸謀チャン・イーモウ)監督の「一秒鐘」は東京にも来ると思ったのだが。その代わり「怒火」と「智齒」は観ることが出来る。

 

「怒火(RAGING FIRE )」香港映画

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陳木勝(ベニー・チャン)監督の遺作。ニコ(謝霆鋒)主演映画は久しぶり。かなりド派手なアクションが目白押し。

 

「智齒(LIMBO)」香港映画

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モノクロがかっこいい。連続殺人事件を追う刑事のお話らしい。ちなみに主演の李淳(メイソン・リー)は李安(アン・リー)監督の次男。

「青春弒戀(テロライザーズ)」台湾映画

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今年の金馬オープニング作品。何蔚庭(ホー・ウェイティン)監督、林柏宏(リン・ボーホン)、林哲熹(リン・ジェーシー)、李沐(ムーン・リー)主演。一見無関係に見えるZ世代の6人が影響し合って、無差別殺人を起こしてしまうお話らしい。ロケ地は大好きな台北駅。台湾では11月に一般公開予定。

 

「復讐(Payback)」「GENSAN PUNCH」フィリピン映画

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メンドーサ監督の作品は、いつも期待を裏切らない。今年は2本立て。

 

「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」

アメリカ映画

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日本では2022年1月一般公開予定。ウェス・アンダーソン監督のキャスティングは結構ミーハー。今回はティモシー・シャラメくんも登場する。予告編からして楽しい。人気を見通してこちらは抽選販売。応募締め切りは10月5日の13時まで。

 

映画祭は今年から六本木から有楽町周辺にお引越し。渋谷から六本木に移る時には交通の不便さにぶうたれていたが、今回はそれが無さそう。

今年も脳内開催中!「台北電影節」

コロナの影響で6月から9月に移動して9月23日から10月9日まで開催中。気になった作品をいくつかピックアップしてみた。

まずはオープニング&クロージング作品。

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「月老」は縁結びの神様。監督は九把刀。柯震東(コー・チェントン)、王淨(ワン・ジン)、宋芸樺(ビビアン・ソン)という 若手人気俳優を揃えての話題作。

「詭扯」は陳柏霖(チェン・ボーリン)と劉冠廷(リウ・グァンティン)が主演。見た目からてっきり陳柏霖はヤクザなのかと思ったが、どうも悪い警察官らしい。山の中の村人達とヤクザ絡みのダイヤを取り合うお話。

 

香港からは「濁水漂流」

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呉鐘宇(ン・ジャンユー)が不法占拠しているホームレスを演じている。

 

気になる台湾映画はこれ。

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「複身犯」は死刑囚の体に容疑者の人格を植え付けて、誘拐された子供を見つけ出そうとするお話。

「親愛的殺手」は身体障碍者と社会的弱者との純愛を描いた映画。

どちらも内容よりも役者の力量を観て欲しい。「複身犯」主演の楊祐寧(ヤン・ヨウニン)はここで1人6役をこなしている。その中には女性の王淨(ワン・ジン)も入っていて、ほとんど物まねショーに近い。陳以文(チェン・イーウェン)が乗り移った演技は陳以文にそっくり。

「親愛的殺手」主演の鄭人碩(チェン・レンシュオ)は、ピンでの主演はこれが初めてなのではないだろうか?何かと濡れ場の多い鄭人碩。でも今回は上半身だけ。相手役の邱偲琹(アリー・チウ)はかなりの薄幸顔。香港映画「遺愛(エリサの日)」の陳漢娜(ハンナ・チャン)、香港映画「幻愛」の蔡思韵(セシリア・チョイ) といい勝負だ。

 

そしてドラマのスペシャル版として登場するのが黄秋生(アンソニー・ウォン)。

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去年から台湾に移民してきて、今後は台湾での活躍が楽しみな黄秋生。ドラマは60分×10話。香港から来た謎のマッサージ師がみんなを幸せにするお話らしい。

 

今はyou tubeで予告編が見られるいい時代。公式HPはここ。

www.taipeiff.taipei

 

来年こそは現地で観たい。

23日から日本初放送「靈異街11號(R.I.P. 霊異街11号)2019年」

「頭部に銃撃を受けたことで死者と対話出来るようになる」と聞くと、小栗旬が主演したドラマ「BORDER」を思い出す。しかしそこに台湾の味付けが加わると、ユルくてちょっといい話に変わる。

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ヤクザが抗争中に頭部を銃撃され、その後仲の悪かった父親の家業である葬儀屋を引き継ぐまでのお話。全13話。

その元ヤクザと超堅物の法医が、お互いの意に反しながらも協力して事件をひとつひとつ究明していく。

そこでたくさんの「?」が浮かぶ。「台湾では葬儀屋が現場から遺体を搬送するのか?」とか「監察はおらんのかい?」とか。ドラマの中では父親が遺体の一部を家の冷蔵庫に保管したり、主人公の阿海が遺体の指紋を記録したりしている。

しかし日本でも大都市以外は監察制度自体が無かったりするので何とも言えない。事件性無しとみなされて引き取り先が決まれば、そのまま普通に荼毘に付されるのだろう。

メイン以外にも魅力的なキャラが多い。潰れそうな葬儀屋で健気に働く唯一の従業員朵朵はお笑い担当。暗くなりがちなドラマの空気をいつも明るくしてくれる。法医の盛音の先輩も短い出番ながらいい味出している。そして阿海の好兄弟に張再興(チャン・ザイシン)。

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今回もしがないチンピラ役。途中から死亡フラグが立ちっぱなし。でも最後はしっかり泣かしてくれる。

事件を解決していく過程で徐々に距離が縮まっていく阿海と盛音。物語の最後、2人が一緒に米粉湯(汁ビーフン)を食べるシーンが好きだ。

ホームドラマチャンネルはこちらから

https://www.homedrama-ch.com/series/14625/trailer

詳しい紹介はこちらから

R.I.P. 霊異街11号