愛とは信じるもの「我談的那場戀愛(ラブ・ライズ)」

香港では2024年9月に一般上映され、その後台湾や日本の映画祭でも上映されたが、毎回すれ違いで今回ようやく観ることが出来た。

 

日本版は、見るからに「これはちょっと切ないラブコメですよ」というデザインで親切。

国際ロマンス詐欺って以前はよくニュースにも取り上げられていたが、最近はあまり報道されていない。この世からなくなることはないだろうが。

ロマンス詐欺に関していえば、ウソとはいえ素敵な恋愛体験をしてそれに対して代価を払ったのだから、厳密な詐欺とは言えないんじゃないかと思う。それをいったらホスト通いやパパ活推し活も詐欺の範疇に入るかもだ。

主人公のベロニカは成功した産婦人科医で、死別した夫に対してわだかまりを引きずったままだったが、このウソの恋愛をちゃんと血の通った恋愛に変えている。彼女はクールで理路整然としているように見えて、ちゃんと情熱的な部分も持ち合わせている。じゃなかったらあそこまで金髪にしてないって。札幌で遂に会うとなって「ボンジュール」と描かれたバック(ポスター参照)をチョイスするのも可愛いと思う。

話のバランスとしては主役は2人だが、どうしても自分と年齢の近いベロニカ側に立って映画を観てしまう。そして観ながらうんうんとうなずいてしまう。

吳君如(サンドラ・ン)はいつもの安定した演技力。相手役のMC張天賦(チョン・ティンフー)は、「全民造星II」でよく遅刻する子ぐらいの印象しかない。でもこの普通っぽさが今回ハマっていた。

札幌でのロケは札幌フィルムコミッションの誘致のもと、2023年に約2週間撮影された。ロケ地はここ。↓

このお花畑も札幌。

脚本がよく出来ている。さすが脚本家出身の監督である。これがデビュー作で、低予算映画ながら1800万HKDの興行成績を収めたので今後に期待が持てそう。

人生をグツグツ煮しめたドラマ「欠你的那場婚禮(借りっぱなしの結婚式)」

Netflixドラマ「影后 女優:ボーン・トゥ・シャイン」の後、嚴藝文(イェン・イーウェン)監督がまたまたNetflixで話題作を撮った。こちらも濃いドラマに仕上がっている。配信はら6月20日から。最近やっと全部観れた。

全10話の中にこれでもかとテーマを詰め込んでいるのに、最後はちゃんと丸くおさまっているのがすごい。

熱い友情で結ばれている3人の男とその妻もしくは恋人がメイン。若い時と中年にさしかかった現在が交互に行き交う。男女間の友情、夫婦間の愛情、親子の確執、成功と挫折、理想と現実、いろんな要素がリアリティーを持って迫ってくる。

そのリアルさを担っているのが芸達者な役者たち。最初に若い時を撮影して、その時の演技と中年パートの演技が繋がるように演出されている。張孝全(チャン・シャオチュアン)は役作りで6㎏太り、姚淳耀(ヤオ・チュンヤオ)は若い時から中年までを1人で演じている。

一応タイムスリップものになるのかもしれない。でもSFのお約束は取り敢えず横に置いといて、とにかく若い時と中年の時の同一人物を並べたかったのだろう。漫画でたまに見かける、未来の自分が過去の自分を叱咤したりするような。

立璇(リーシュアン)は長年の片思いが実って、幼馴染の可傑(クージエ)と結婚するが、結婚する前から関係がギクシャクして今ではほぼ会話もなくなっている。だからといって相手を嫌いになったわけではないのは、若い時の可傑と出会ってウキウキする態度からも見て取れる。では何故すれ違ってしまったのか?その辺りをドラマは人生のしょっぱさを交えて語っていく。

男たちの友情も熱いが、立璇とテリーの友情も素敵。立璇の結婚式の当日、立璇が結婚したくないと言ったら、理由も聞かず「よし分かった裏から一緒に逃げよう」と即答する潔さ。

そしてドラマの肝である音楽は宇宙人が担当。ドラマにゲスト出演もしている。

音楽業界の闇の部分もサラッと描いてるのが逆に恐い。

長い人生いろいろあるのは当然。でもその長い時間を一緒に過ごしたことで生まれる関係性は何事にも代え難い。

加賀まりこあっての映画「月曜日のユカ」

タイトルだけは耳にタコができるくらいこれまで何度も聞いたことはあるが、実際に観るのは今回が初めて。神戸新開地にあるCinema KOBEで1週間だけ上映。

横浜を舞台にしたおしゃれな映画。製作は1964年。東京オリンピックの開催に合わせて、日本全体が熱に浮かされたような状態の時代の空気が伝わってくる。

18歳のユカには既にパパがいて、住むところから生活費まで全部出してもらっている。パパ以外の男と寝ることもあるが、お金をもらっているのはパパだけ。母親はかつて米軍軍人の専属愛人で、男に対する手ほどきをいつもユカに指南している。

ユカは愛人稼業で金銭的に恵まれ、その美貌と若さで男にも苦労しない。そのストレスフリーからくる天真爛漫さと抜群のセックステクニックが相まって、まさに男の理想が具象化したような存在だ。

但し、そんなお気楽な気分は前半まで。「家族といる時のパパの笑顔を自分にも見せて欲しい」と欲を出してから歯車は狂い始める。所詮男たちにとって、自分は都合のいい女でしかないのに、愛人以上の存在であると認めて欲しくなったのだ。

それは18歳を過ぎて自我が生まれ始めたから。若さと美貌と技巧で何でも手に入ると思っていたのに、好きになった男に拒否されてから徐々にそれだけでは足りないと分かり始める。でもだからといってどうすればいいのかは、誰も教えてくれない。

後半からユカの表情から笑顔が消えていき、最後はまったくの無表情になる。それは1人の少女が大人になった瞬間でもある。

女性なら売春までいかなくても「女性性は金になる」と実感する場面は人生でいくらでもある。今も昔もパパ活やら愛人稼業で生活している女がいなくなることはない。でも若さも美貌も賞味期限がある。その期限が過ぎた後は自分の脳みそで勝負していくしかない。

とにかく加賀まりこが可愛い。ドアップになってもかわいい。ファッションも素敵で下着にも手を抜いていないところがいい。

そして修が必死に長々とユカを口説いてる場面で、それがユカにはちっとも刺さってないところが実にもの悲しい。修じゃやっぱり無理なんだよなあ。いい奴なんだけど。

うっとりするほど美しい「花様年華25周年特別版」

何度も観たけど、やっぱりまた観たい。今回は「花様年華2001」も併せて上映される。

もちろん当時も映画館で観たけど、あれからもう25年経つとは。感慨深いものがある。

とにかくもう張曼玉(マギー・チャン)のため息の出る美しさよ。ハイカラーのチャイナドレスはこの映画のために20着以上作られた。屋台のラーメンを買う時でさえおしゃれを欠かさないw

ほとんどはタイのバンコクで撮影されている。ロケ地のバンコク旧税関ビルは有名だが今もあるかどうか。香港で撮影された中で、今は閉店してしまった「金雀餐廳」には私も行ったことがある。

カメラマンは杜可風(クリストファードイル)と李屏賓(リー・ピンビン)。横移動のロングショットは李屏賓の十八番。

王家衛(ウォン・カーウァイ)のフェチぶりにも、にやにやしてしまう。とにかく足。しかも太ももとかじゃなくて、ひざから下のラインなのね。そして時計。

鏡の使い方も神レベルだし、色彩も音楽も完璧。

不倫の話だけど、2人はあくまでもプラトニック。なぜそこまで?と思うくらい禁欲的。でもいつかまた出会うような予感がする。

おまけの「花様年華2001」も王家衛らしい作品。トニーさんのヒゲがw衣装がw

こんなお店があったら私も毎日通いたい。

 

追記:2026年6月1日からNetflixで配信。

香港で「世外」が観れなかったから、原作「千年鬼」を読んでみた

台湾の金馬影展、香港の亜洲電影節でも大好評だった「世外」。日本でも公開は決定しているが、いつになるかは未定。

原作は西條奈加の「千年鬼」。だったら先に原作を読んじゃおう。

www.tokuma.jp

出版は2015年で、もうすでに6度の重版出来をしているロングセラー作品。それに合わせて帯も一新。

とても美しく、そして内容を分かりやすく伝えている。

最初はオムニバス形式の小説の一部分を映画化したのかと思ったら、ちゃんと全部繋がっていた。小鬼と女の子とのお互いを思う気持ちがせつないっす。

鬼の概念は日本人以外は馴染みがないので、映画では不気味可愛いキャラになっている。

声の主演は、小鬼Gudo役を鍾雪瑩(ジョン・シュッイン)、小妹Yuri(原作では民)役を蔡曉童(クリスティ・チョイ)、天女Mira役を謝安琪(ケイ・ツェ)という実力派揃い。

まず2019年に14分の短編を製作した時にさまざまな賞を獲得した。その後世界各地から資金を集め、7年の歳月をかけてこの長編を製作した。

日本公開はまだだが、フィギアは先に手に入りそう。

発売は6月からで、今は予約だけ出来る。ちゃんと首が動く。

原作文庫本は大阪市立図書館にもあるよ。

4/2~4/7香港旅行まとめ

今回はとにかく現地で見たい映画がいっぱいあった。そして澳門(マカオ)でのコンサート参戦。相変わらず駆けずり回った5日間だ。2日の夜中の飛行機で香港入り。体力を温存しながら無理せず動いた。

まずは4月なので姜濤(ギョン・トウ)関連。

今回のお宿は銅鑼灣(コーズウェイベイ)だったので、朝晩これを眺めていた。

トラムも。

毎年恒例「The One」でのイベントスペース。今年は姜ファミリーになって、定期的に着ぐるみも登場。

バス停シリーズその1。AK江𤒹生主演の映画。

バス停シリーズその2。ANSON LO盧瀚霆の新曲。

そして映画館の中。

高先電影院は「我們不是什麼」祭。スタッフが来ているTシャツも映画のロゴが入っている。

今回待合室で待っていたら、マスクを付けた鐘雪瑩(ジョン・シュッイン)に遭遇した。確認はしてないけど多分。

そして街中のいたるところで見かけたのがこのポスター。

オールスター勢揃い。香港映画は久しぶりの彦祖(ダニエル・ウー)も真ん中に。MIRRORからはLOKMAN楊樂文、STANLEY邱士縉も参加している。

そして今年の香港国際映画節はこんな感じ。

合計9本映画を観た。右下はプレゼント。「UFO離奇命案」と「世外」が観れなかったのが残念。

次はいつ香港に行こうかな。

今年の旧正月映画のKING「夜王」

「毒舌大狀(毒舌弁護人〜正義への戦い〜)」チームが再び黃子華(ウォン・ジーワー)を主役に据えて撮った超娯楽映画。今回は更にラブコメの女王だった鄭秀文(サミー・チェン)も加入して、大盛り上がりとなった。

とにかくめでたい旧正月映画なので、出演者もモリモリ。

鄭秀文扮するV姐がキマり過ぎ。胸元とか足元も露出多め。画面に登場するだけで威圧感がすごい。このV姐に対抗しながら途中から共に戦うのが、黃子華演じる歡哥。歡哥もV姐も若い頃から尖東(チムサーチョイイースト)の夜の世界に生きてきた人間。映画の中で歡哥が「今更、 旺角(モンコック)や佐敦(ジョーダン)になんて行けない。俺の居場所は尖東だ。」みたいなセリフがあった。それぐらい身体に沁みついているのだ。

他にも「男がナイトクラブで大金を払うのは尊厳を買うためだ。」など歡哥の格言がいっぱい。手取り足取りでお客に対する接客の仕方をホステスたちに手ほどきするシーンも笑える。

時代背景は2012年なので10年ひと昔前だが、それほど気にならない。

お水の世界はやはりドラマティック。嵌められて多額の借金を背負わされたV姐を救うため、お店とお客が総出でダマすやり方が実に巧妙。

とにかく登場人物が多いが、その中で予想外にグッジョブだったのが、葵芳という名前のホステス(名前が地下鉄の駅にもなっている香港の地名)。使えないヘルプとして入ってきたのだが、最後にナイスフォローをして人気者に。それが高じて実際の地下鉄にポスターとして登場するまでになった。

かつての香港の栄華を見せて郷愁を誘いつつ、時代の波に立ち向かってゆく主人公の姿に胸アツ。屋上から眺める香港の夜景を見ながら、登場人物たちが語るそれぞれのストーリーにも共感してしまう。

2時間ちょっとの中にこれでもかといろいろなエピソードを詰め込んでまとめ上げてた吳煒倫(ジャック・ン)監督の手腕はすばらしい。興行成績も1億HKDを突破。Hなシーンを足した三級片(18禁)バージョンも4月16日から上映されるらしい。

日本でも観られたないいなあ。