本編より予告編の方がいい「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」

映画館で予告編を観て「これは観なくては!」と思い映画館で観たが、予告編から想像していたのと少し違っていた。今回も敢えて予習は無し。

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だからと言ってダメ映画ではないんだけど。この監督は母親に対して思い入れがありすぎ。「スタンド・バイ・ミー」の歌をバッグに大雨の中母親と抱き合うシーンは、ちょっというかかなり引いたぞ。

後、最後2人でバイクに乗って去るシーンも監督の思い入れ強すぎ。「はい!ここ!!よく見て!」て画面から叫ばれている感じがした。どんだけ「マイ・プライベート・アイダホ」好きなんだよ。

俳優たちにそれぞれ見せ場を作っているところがよかった。特にキャシー・ベイツが堪能できたことがうれしい。長台詞のシーンの迫力はなかなか。

グザヴィエ・ドラン監督の他の作品も気になるところ。今年9月25日からは新作も公開予定。

https://phantom-film.com/m-m/

のんびりしていたら上映回数すぐ減りそう。

笑いの力を見せつけられる「テルアビブ・オン・ファイア」

イスラエルパレスチナの対立をユーモアたっぷりに描いた映画。「テルアビブ・オン・ファイア」は劇中の人気ドラマのタイトルでもある。

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映画の最初に流れるその劇中ドラマのオープニングが、いかにもメロドラマって感じでめちゃくちゃいい。

主人公が見るからに気が弱そうで、周りの意見に押し切られそうになるのを何とか切り抜け、最後にはあっと驚く大団円が待っていた。映画の中にたびたび登場するずっと続く壁や検問所が物々しい。しかし実際の現実はどうであれこの映画の中は愛と平和に満ちている。

日本では2018年の東京国際映画祭で上映され、2019年11月には一般公開された。そして今でも日本のどこかで上映され続けている。私はCinema KOBEで観た。

劇中で登場するTシャツが欲しくてたまらない。(ポスターの中で主人公が着ている黒いTシャツ。)スタッフTシャツっぽいが、グッズとして売ってくれないかなー。

「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」を観る

長い日本語タイトルだ。「若草物語」と翻訳した昔の人の方がセンスは上だろう。

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町山智浩さんの映画評を聞いた後に、「フランシス・ハ」をNetflixで観て頭の中がすっかりグレタ・ガーウィグ一色。今ならLine Payで1200円で観られるのでお得だ。

原作者ルイザ・メイ・オルコットが主人公だが、オルコット=ジョーなので、若草物語の有名なエピソードもいろいろ登場する。

古典ともいえるこの作品を改めて観れば、「渡る世間は鬼ばかり」や「海街diary(漫画のほう)」と共通しているのが分かる。内容は日常を精いっぱいに生きている人々の生活のあれこれ。でもちっとも退屈じゃないのは描いている作者の力量だろう。

ジョーがオルコット自身を投影させた人物なら、そのオルコットに自身を投影させているのは監督のグレタ・ガーウィグだ。で、そんな2人に見ている側も共感してしまう。「結婚したくない」と世間の常識にあらがうジョーを応援しながらも、ジョーが最後の方に寂しいと泣いてしまうシーンでは「やっぱりそうなるよね」とこっちまで気落ちしたり。

「女の生きる道(特に老後)」を日々模索する私にとって、メリル・ストリープ演じる大叔母のセリフが心に刺さりまくり。お金で買えるものって案外多い。

さよなら、イップマン「葉問4:完結篇(イップ・マン 完結)」

コロナの影響で上映延期になっていたが、7月3日から日本でも一般公開した。

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今回の舞台は1964年のサンフランシスコ。人種差別に立ち向かうイップマンのお話。次の相手がアメリカっていうのがまたなあ。

親子の絆のエピソードも絡めつつ、最終章にふさわしい充実した内容だった。美術も見応えたっぷり。チャイナタウンの街並みも、中華総会のセットもすごくいい。

そして同時期にブルース・リーの名作映画も4Kリマスターで全国で復活上映している。新旧の名作アクション映画を見比べられるとはなんて贅沢なんだろう。

 

そして気になるのはドニーさん主演のもう一つの映画「肥龍過江」。

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タイトルは1978年香港公開の「燃えよデブゴン」と同じ。今見ると当時の洪金寶(サモ・ハン・キンポー)ってそんなに太ってないなって思う。

監督は谷垣健治。新宿歌舞伎町を中心に太ったドニーさんが大暴れする。といっても歌舞伎町は街まるごとセット。但し、このセットは「香港人がイメージする歌舞伎町」なので、種田陽平さんが「不夜城(1998)」で作った歌舞伎町のセットとは少し趣が違っている。コメディとハードボイルドという違いもあるし。

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細かい部分もリアルな歌舞伎町のセットの仕上がり。詳しくはここに。

https://www.livio.com.tw/%E3%80%8A%E8%82%A5%E9%BE%8D%E9%81%8E%E6%B1%9F%E3%80%8B%E3%80%8C%E7%94%84%E5%AD%90%E4%B8%B9%E3%80%8D%E5%A4%A7%E9%AC%A7%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E8%A1%97%E9%A0%AD-%E6%89%93%E7%88%9B%E6%96%B0%E5%AE%BF%E6%AD%8C/

中華圏ではクリスマス映画で「葉問」、旧正月映画で「肥龍過江」を観ることになったのだが、このドニーさんの演技の振り幅がすごい。

イメージが固定しないようわざとそうしているのか、単純にアクションが好きで次々撮っていたらこうなったのか、一度ドニーさんに聞いてみたいものだ。

 

追記:日本でも2021年1月1日から「燃えよデブゴン/TOKYO MISSION」のタイトルで一般公開決定!今回はTOHOシネマズ系列ということで公開する映画館の数が今までと桁違い。お正月は全国津々浦々みんなで観に行こう。

陳凱歌(チェン・カイコー)奇跡の名作「覇王別姫(さらば、わが愛/覇王別姫)1993」

日本での一般公開は1994年。映画自体はDVDやテレビなどで何度も見たことあるのに、映画館で観たかどうかはうろ覚え。ちょうど塚口サンサン劇場で1週間だけ上映をしていたので早速行ってみた。

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 「貴妃酔酒」の楊貴妃。この世のものとは思えない美しさ。

陳凱歌の作品の中でこの映画だけがずば抜けて評価が高い。陳凱歌は張國榮レスリー・チャン)と鞏俐(コン・リー)の主演ですぐに「風月(花の影)1996」を撮っている。こちらの方は当時映画館でしっかり観ていて、同じ製作会社、同じ監督、同じ役者でこうも仕上がりが違うのかと驚いたものだ。

覇王別姫」の中で、張國榮は程蝶衣そのものだ。レスリーは言わずと知れた大スターだが、レスリーが演じていると思って見たことはない。まさにレスリーに蝶衣が憑依しているかんじだ。

蝶衣の恋敵、菊仙を演じる鞏俐姐さんも実に素晴らしい。2人がバチバチに火花を散らすシーンもゾクゾクするが、アヘン中毒の禁断症状が出ている蝶衣を菊仙が母親のようにそっと抱きかかえるシーンも胸が熱くなる。

その後の嵐のような文革時代の描写は恐怖しか感じない。世界の人々が中国共産党に対して心から信頼できないのは、この映画のせいかもしれない。

団地好きは必見「しなやかな獣(1962)」

シネ・ヌーヴォにて「若尾文子映画祭」開催中。その中の作品のひとつ。

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ため息が出るほどお美しい。

お互い協力しながら何とかしてお金持ち達からお金を騙し取ろうとする家族と、そこからまたお金を巻き上げようとする女のお話。どん底の貧乏生活を経験したからことからくる貪欲さは逆に清々しいくらいだ。貧乏がどんなに怖いか知っている人間には、お父さんのセリフが骨身に染みるはずだ。

複数の男たちを手玉に取る悪女に若尾文子が扮しているが、お色気シーンはもっぱらお姉ちゃん役の浜田ゆう子が担当。

個性的なキャラばかりの中でも埋もれないお母さん役の山岡久乃は流石。お父さんを立てる上品な女性だが、状況を一番把握してみんなのフォローをしている。

自分の頭と体を武器にのし上がっていく悪女の話は大好物。この若尾文子演じる子持ちの寡婦の切迫したお金への執着もよく解かる。

住まいが晴海団地の「高層じゃない5階建ての家賃の安い方」という設定もうまい。ほぼ団地の家の中で話は進行していくが、カメラワークが縦横無尽で飽きない。階段と廊下の部分の使い方も素晴らしいし、玄関横に付いている小さい扉の使い方も心憎い。

私も団地に住みたくなってしまう。

 

追記:今ならNetflixで鑑賞可能。

今年は脳内で開催!妄想台北電影節

2020年は6月25日~7月11日まで台北で開催。このご時世、海外旅行なんて夢のまた夢。でも気分だけでも味わいたい。

今年も観たい映画はいろいろ。旅行に行ったつもりで公開順に紹介したい。

写真は台北電影節のHPから引用。

https://www.taipeiff.taipei/

 

「惡之畫」6月26日19:20~ 臺北市中山堂

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出演する作品が次々と公開されている黄河(ホアン・ハー)の主演映画。画家がある受刑者の絵の魅力に取り憑かれていくお話っぽい。

 

「幻愛」6月29日18:20~ 光點華山電影館 他2回

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香港映画。香港では7月2日から一般公開。統合失調症の男性と心療内科医を目指す女性との恋愛における葛藤を描いたお話。主演女優は台湾映画「返校」で教師を好演。この映画では1人2役を演じ分けている。屯門あたりがロケ地かな。

 

「親愛的房客」7月4日19:20~ 臺北市中山堂 他1回

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今年一番観たかった映画。主演の莫子儀(モー・ズーイー)が謎めいた賃借人を演じている。献身的に大家一家の世話をするがその真意とは。

 

「打噴嚏」7月5日20:30~ 臺北市中山堂

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九把刀原作、柯震東(クー・チェンドン)と林依晨(アリエル・リン)が主演。柯の大麻事件で長い間お蔵入りになっていた作品。確かに2人とも若い。7月15日からは一般公開もする予定。

追記:Netflixで「ハクション!」のタイトルで視聴可能。

 

「日子」7月7日19:00~ 信義威秀 他1回

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李康生(リー・カンション)が、また蔡明亮ツァイ・ミンリャン)監督に言われるがまま撮っちゃったような映画。

 

「残值」7月9日19:20~ 信義威秀

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高利貸しの借金を返すための保険セールスをしている男が主人公。出演者はベテラン揃い。公視テレビで放送されたシリーズの1つ。

 

他にも気になる作品はまだまだある。オープニング作品の「無聲」は予告片を見るだけでも鬱々しそうになる。「不丹是教室」はブータンの景色をじっくり見られるだけでいい。

 

「親愛的房客」は来年の大阪アジアン映画祭とかに来てくれないかなあ。もちろん莫子儀込みで。