ドロドロが足りない「第三夫人と髪飾り」

主人公をこの女の子にした時点でこの映画の勝ち。

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第一夫人も第二夫人も基本いい人で、14歳のメイ相手に性愛の指南までしたりする。しかしそのおかげかメイがだんな様の覚えめでたく、サクッと妊娠してしまうと3人の関係性が微妙に揺れる。その辺りの細かい心の動きは女性監督ならではだと思う。

第二夫人はいわゆる魔性の女なんだろう。旦那様の息子には言い寄られ、同性のメイにさえ告白されてしまう。罪な女である。

美しい風景を背景に、最初から最後まで「性」の話だった。「女として生きる=セックスをして跡継ぎを生む」というのが常識だった時代はそんなに昔のことではない。現在でも肩身の狭い思いをしている女子は少なくないだろう。でも少なくとも今自分がおかれている状況がそうでなくてホッとする。

ただドロッドロの中国宮廷ドラマをさんざん見てきた後にこの作品を見ると、何となく物足りない。毒されてるなあと思う。

台北発メトロシリーズ第2弾

今回観たのは「鮮肉老爸(淡水河の奇跡)」と「奉子不成婚(振り向けばそこに)」

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「鮮肉老爸」はタイムスリップもの。呉慷仁 (ウー・カンレン )が90年代アイドルに扮しているのが見もの。というか90年代アイドルが撮りたくてこの作品をつくったのかと思うくらい、曲、振付、PVに力が入っている。 

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もうノリノリw MTVならぬWTVだし。

ストーリーはどんでん返しが何回かあって飽きさせない。台湾特有のユルさは無理矢理尺をのばしている感があって、90分ぐらいで収めた方がすっきりしただろう。

「奉子不成婚(振り向けばそこに)」は、「奉子成婚」つまり「できちゃった婚」をもじったもの。監督は北村豐晴。北村監督の細かい遊び心がいろいろ詰まっている。細かいシーンのインサートとか、音楽での盛り上げ方とかは日本のドラマ方式だ。

壁一面に片思いの女性の写真を張るのは、楊徳昌エドワード・ヤン)監督の「恐怖分子」のオマージュ。

うれしかったのは今年亡くなられた馬如龍が出演していたこと。娘思いのパパをユーモアたっぷりに好演している。

「親愛的卵男日記(バオバオ フツウの家族)」を観る

ただ今十三の第七芸術劇場で公開中。台湾では2018年11月2日から公開。

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台湾のLGBT映画は名作は多いが、だからといって全部がすばらしいかというと当然違う。この映画はいろいろ足りない部分が多い。但し今までの映画は恋愛の段階でのお話が多かったのが、この映画はその先を描こうとしている。その新しいテーマに着目したことは褒めていいと思う。

しかし、とにかく脚本と演出が雑。もしも脚本家と監督がLGBTだったなら、こんな言い方や演出はしなかっただろうというところが多々ある。私自身はストレートなので実際どれだけ理解できているかというと心もとないが、LGBT作品は結構多く見ているほうだと思う。そうなるとその雑な部分が引っかかって映画全体の印象が悪くなってしまった。

日本のオシャレなイラストとビームス(協力)の名前から、小粋な都会的センスの映画だと思い込んでしまったが、台湾版のポスターと原題からしてそうじゃないのは分かったはずだ。日本での宣伝戦略にうまいことダマされたかんじ。

台湾映画「念念(あなたを、想う。)」11月2日から日本公開

台湾では2015年4月に公開。私が観たのは多分その時。

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日本の公式HPはこちら

https://apeople.world/anatawoomou/

いくつもの人生が何層にも折り重なって展開していく。そこで重要な要素になっているのが「人魚姫」のお話だ。毎晩母親が語るその童話を聞きながら育った兄妹は、別れた後もその物語を思い出す。

お気に入りのシーンはたくさんある。育美(ユーメイ)と永翔(ヨンシャン)が宿舎のような場所のガラスの向こう側で抱き合うシーンとか。育男(ユーナン)が台風の日に過去に紛れ込んでしまう幻想的なシーンとか。永翔が釣りをしている時に、出会うはずのない父親と出会ってしまうシーンとか。

映画公開時に映画の中で使用された絵画が、あるギャラリーで展示された。ネットで探した住所がわかりづらくてさんざん迷子になった後ようやく辿り着いたのを覚えている。

実はこの絵画は母親役の李心潔(リー・シンジェ)が描いたもの。この映画にとても合っている。

今のところ公開する映画館が渋谷ユーロスペースと横浜シネマリンしか発表されていないが、大阪にもぜひ来てほしいものである。

絶対観に行くから。

 

追記:その後大阪シネヌーヴォでも1月25日から公開が決定した。来年かあ。

 

2020年の台湾巨匠傑作選2020でも上映決定。東京から始まって大阪、神戸、京都、名古屋での開催も予定されている。

https://taiwan-kyosho2020.com/schedule/

 

10月12日からシネ・ヌーヴォXで「台北発メトロシリーズ」公開中

原題は「台北愛情捷運系列電影」。2015年に企画された台北市の地下鉄をテーマにした7話のオムニバス映画&ドラマ。

上映スケジュールはこちらから。

http://www.cinenouveau.com/sakuhin/taipeimetro/taipeimetro.html

私が今回観たのはその中の「西城童話(西門に降る童話)」。

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タイトルからしてファンタジー。西門町は台北の渋谷だとよく言われるが、若者中心の映画やドラマの舞台にいつも使われている。その西門町を縦横無尽にカメラは映している。

美術はかなりがんばっている。主人公の小虎の部屋や、ホームレスの西門慶がねぐらにしている元映画館なども凝っている。

但し話は少しご都合主義で流されているのが惜しい。登場人物もどれも説明的で、奥行きに欠ける。一番残念なのはヤクザのキャラかなあ。ファンタジーの中のヤクザだとしてもちょっと肉付けが足りないと思う。

私が西門町に行くのは映画を観る時と、「麺包厨房」というカフェ&ベーカリーのお店のパンを買う時ぐらいである。「麺包厨房」は蒼井優が台湾で撮影した写真集にも載っているお店だ。台北に来たら、このお店と「呉寶春」のパンは必ず食べるようにしている。

おすすめ。

麺包厨房:https://www.breadkitchen.com.tw/zh_TW 営業時間は火~土のお昼12時~21時まで。

呉寶春:https://www.wupaochun.com/ 台北店は象山駅のそば。営業時間は9時半~20時半まで。

台北金馬影展スケジュール発表!

開催中ずっと台湾にいたいけどそれは無理なので、なるべく多くの作品を見られるようにただ今画策中。

http://www.goldenhorse.org.tw/film/programme/films/?search_year=2019&parent_id=316

まず「夕霧花園」が21日しか上映しないのが悲しい。阿部寛が出演しているので日本公開は(いつかは)すると思うが。観たい台湾映画のほとんどが1日のみの上映だ。そうなると一般上映で観られる作品はなるべく普通の映画館で観るようにしていくしかない。そのかわり香港映画の「金都」は上映回数が3回だ。

日本ではいつ観られるか分からないので観てみたい作品としてこれらを挙げたい。

 

「最乖巧的殺人犯」

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最近は台湾以外でも活躍の場が広がっている超イケメンの黄河(ホアン・ハー)が、オタク役に挑戦。台湾では既に8月30日から一般公開。「香港亜洲電影節」では11月16日に上映。

追記:2020台湾映画上映&トークイベントで、「よい子の殺人犯」としてオンライン上映をした。 

mingmei2046.hatenablog.com

 

 

「楽園」

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台湾ヤクザ映画「角頭2(Netflixで視聴可能)」で昔気質の若頭を好演した王識賢が、この作品ではヤク中の若者を助ける農場の経営者を演じている。予告の中での王識賢と若者たちのぶつかり合いが迫力満点だ。台湾では11月8日から一般公開。

見たい映画が決まっても、次はチケット争奪戦が待っている。金馬のチケット発売は11月27日13時(台湾時間)から。

台湾短編映画「鹹水雞的滋味(2017)」を見る

2017年の台北映画祭で最優秀短編作品賞を受賞したこの映画は何もかも異色だ。当時、監督の張作驥(チャン・ツォーチ)は強姦罪で服役中。彼が台北監獄にいる時に、受刑者を撮影したのがこの作品だ。なので映画の冒頭にまず台北監獄のマークがどーんと入る。といってもドキュメンタリーではなく、元受刑者が創作した原作を元にしてある。


2017鹹水雞的滋味中英文字幕

素人を起用したとは思えないほど、それぞれのキャラがはっきりしていて、話の流れもうまい。ところどころインサートされる監獄内の風景も効果的だ。

そんな転んでもタダでは起きない張作驥監督の新作「那個我最親愛的陌生人」が、今年の金馬のオープニング作品に選ばれた。認知症の父の介護や出所したばかりの娘など、かなり重めの家族の話らしい。

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台湾での一般公開も11月15日からはじまる。