一筋縄ではいかない映画「夕霧花園」

ぎりぎりまで中止になるのではないかと危惧していた大阪アジアン映画祭は、作品の上映のみという形をとって何とか始まった。舞台挨拶はなくなったが、林書宇(トム・リン)監督のビデオレターはあった。ビデオレターの中で監督もおっしゃていたが、今年の冬に日本公開も決まっているらしい。でも内容が内容だけに公開規模は小さそう。

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製作はマレーシアの大手制作会社とHBOアジア。監督は台湾人。撮影はインド人。マレーシアの奥地で日本庭園を造り続ける日本人の庭師と、日本軍の強制収容所で悲惨な経験をした中華系マレーシア人との愛と憎しみが交じり合う複雑な関係を描いた作品。

実際にマレーシアの山間部で日本家屋と庭園を造ったが、この建て込みに約2か月費やしている。美術は映画「星空」の蔡珮玲(ツァイ・ペイリン)で、この作品のために膨大な資料を読み込み、日本人彫師も撮影場所に呼んで入墨について指南してもらっている。

ここは終戦後も政情が不安定な時期において、一種の異空間というか非日常の世界なのでとても重要だ。この日本家屋が実に自然。熱帯雨林に建てられたマレーシア仕様の純日本家屋だ。

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荒れ地に一から作りこんでいく。

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開口部が多いのは熱帯仕様とか?

時間軸として戦中、終戦直後、80年代と続いていくが、張艾嘉(シルヴィア・チャン)のパートが思ったよりも多かった。主演は李心潔(リー・シンジエ)なのに食われちゃったかんじ。シルヴィア恐るべし。

Netflixで4月30日から!ドラマ「誰是被害者」

張孝全(チャン・シャオチュアン)、許瑋甯(ティファニー・シュー)、王識賢(ワン・シーシェン)が主演のドラマが4月から始まる。

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3人以外にも、林如心(ルビー・リン)、黄河(ホアン・ハー)なども。

張孝全の役どころはアスペルガー症候群の鑑識官。長い間失踪していた娘がある連続殺人事件と関係があることを知り、独自に調査していくというもの。

監督は「人面魚:紅衣小女孩外傳(人面魚 THE DEVIL FISH)」の莊絢維(デビッド・ジュアン)とこれが監督デビューの陳冠仲の2人。

これは楽しみだ。

「人面魚:紅衣小女孩外傳(人面魚 THE DEVIL FISH)2018」を観る

「未体験ゾーンの映画たち2020」のなかのひとつ。

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話としては1と2の前。紅衣小女孩も生まれる前。2で登場する虎爺についても説明が加えられている。2の感想はここ。

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 この映画の見どころは主演の除若瑄(ビビアン・スー)の熱演。

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けっこう怖い。この作品では離婚して精神を病んだピアニストの役を演じている。

ここでも親子の絆が強調されていて、魔王に抵抗しながら子供を守ろうとする親の愛情に焦点が当てられている。

3は前作より更に予算が増えたっぽい。特殊小道具やCGがパワーアップしている。しかし2でもそうだが、悪霊との決闘を主軸にしてしまうと怖さがどんどん薄れていって単なる「ヒーロー映画」になってしまう。それだとマーベルと変わらない。かえって1のほうが底知れない怖さがあってホラーらしかった。

エンディングロールの後におまけとして、1と2に続く映像が差し込まれている。1が上映されたのは2015年なので元々の設定を思い出すのにも必死。そして今さら「彼氏って黄河(ホアン・ハー)だったのか!」と気づく始末。おいおい。

観たいヤツは全部観る!大阪アジアン映画祭

今日から前売り販売開始。もともと香港国際電影節のために有休を使おうとしたら、夏に延期になってしまい、それをアジアンに流用。ガッツリ観るぞ!

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とはいっても有休にも限りがあるので、もう既に観た映画は除いていく。「大飢(大いなる飢え)」「少年的你(少年の君)」「金都(私のプリンス・エドワード)」とか。「少年的你」はゲストが来たら行こうと思っていた。特に生の易烊千璽くんが見たかったのに。残念。

 

絶対ハズさないだろうと期待しているのは「ハッピーオールドイヤー」。

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台湾では「就愛断捨離」のタイトルで2020年2月14日から一般公開中。予告編もイイ感じ。

「江湖無難事(ギャングとオスカー、そして生ける屍)」は去年見逃したのでここで見なくては。

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あらすじを見ただけでもおもしろそう。敢えて予習せずに観たい。

 

花椒之味(花椒の味)」も去年見逃したから。

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冴えない外見のサミー鄭秀文に期待。

 

「堕落花」は「G殺」の李卓斌監督の第2作目。

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 李卓斌が溫碧霞を主演にした理由が是非知りたい。

 

サポーターなので、オープニングの「夕霧花園」は確定。めずらしいところでカトマンズを舞台にした「牙と髭のある女神をさがす」もチョイス。李屏賓(リー・ピンビン)がカトマンズをどういう風に撮影したのか興味深々。あとはもう映画祭の上映スケジュール見ながら自分のスケジュールを埋めていく感じ。

準備は万端だ。

ホラーかと思いきやラブコメだった「彼岸之嫁(彼岸の花嫁)」

Netflixで1月23日から配信開始。全6話。呉慷仁(ウー・カンレン)とエリザベス役の紀培慧(テレサ・デイリー)以外は馴染みのない顔ばかり。

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最近、台湾と他の東南アジアの国との急接近が目立つ。ミャンマー出身の趙德胤(チャオ・ダーイン/Midi Z)監督の活躍もそうだし、陳哲藝(アンソニー・チェン)監督作品「熱帯雨」はシンガポールと台湾の合作だ。去年の金馬で観た映画「波羅蜜」は台湾で映画を学んだマレーシア人の監督が撮った作品だ。

そんな中でマレーシアオールロケで撮ったこの作品。19世紀末のマラッカを舞台にしているので美術や衣装にかなり期待していたが、かなり現代寄りだった。冥界のシーンももっとゴスっぽいほうが良かったなあ。

話のベースをラブコメにした分、緊張感も和らいで軽い軽い。唯一のヒール役である天青も性根の腐りきった感じよりカッコよさ優先で、実に惜しい。天青に限らずそれぞれのキャラはもっと深掘り出来るはずなのに、何故かあっさり処理されたまま。

真犯人の暴露も実にあっけなかった。

マレーシアならではの風景も最後の最後に出ただけ。

なんとも物足りない。

リアルな展開に釘付け「我們與惡的距離(悪との距離)」

去年の電視金鐘奨(ゴールデンベルアワード)で賞を独占した社会派ドラマ。全10話。日本では衛星劇場、U-NEXTなどで放送。2020年6月からNetflixでも配信開始。

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無差別殺傷事件をめぐる加害者と被害者の社会的な立場、報道や医療の問題点を深く突いた意欲的なドラマ。

日本でも残念ながら毎年のように無差別殺傷事件が起きる。事件が起きた直後に感じるのはやはり犯人の異常性なのだが、実はこれは追い詰められたら誰にでも起こりえる事なんだと思わせるのがこのドラマの目的である。

誰でも加害者に成りえるのであれば、それを防止するための対策を社会の中で作っていかなくてはいけないのではないか。「犯人に性格異常者のレッテルを貼って死刑にしてハイおしまい」では類型の犯罪を無くすことは出来ない。

ということもこのドラマを最後まで全部見ると理解出来てしまう。

理性ではそう分かっていても、実際に自分が事件に関わってしまえばどうしても感情が優先してしまうのは仕方がないことだろう。私はこのドラマを見ながらそれぞれの登場人物に深く感情移入してしまった。役者がみんな上手い。

特にお気に入りのキャラは大家さん。常に前向きで、つらい現実と立ち向かおうとする強さに感動する。

今回もドラマの中で新しい単語がいろいろ出てきた。気になったのが「草苺族(イチゴ族)」。主に1980年以降に生まれた、プレッシャーに弱い若者を指す言葉だそうだ。特徴は何より打たれ弱いw。日本にもいるよね。

「パラサイト 半地下の家族」を観る

水曜日(レディースディ)の観たい回の直前に劇場に行ったらまさかのほぼ満席。次の回のチケットを買って2時間後に戻るとこれまたほぼ満席だった。女子が詰めかけるような映画ではないなと油断していたらたいへんなことに。

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あまり予習せずに鑑賞。貧乏人一家がまんまとお金持ち家族とすり替わる映画がと思ったら、予想外の人物の登場で予想外の展開に。

ポン・ジュノ監督の作品は「殺人の追憶(03)」「グエムル-漢江の怪物-(06)」「スノーピアサー(13)」を鑑賞済み。おもしろい発想をする監督だと思う。

今回もほんのりとした笑いがベースになって始まるが、それがクライマックスで行き場のない怒りがどーんと爆発する。そのきっかけが「貧乏人の匂い」のせいというのがせつない。あるんだろうなあ、貧乏人独特の匂いというのが。

途中で出てくる北朝鮮ネタは韓国人なら腹を抱えて笑えるんだろうか?

最後、息子がお金持ちになって戻って来てめでたしめでたしでおしまいなのかと思ったら、実はそれは空想でしたという落とし方は韓国映画っぽいなあと思った。