壊れていても家族「小曉(トラブル・ガール)」

チケットが発売直後で完売になり諦めていたが、台湾に行く直前に何気に台北影展のHPを開けたら1枚だけ残っていた。A排1號というものすごく観えづらい席だったが、映画の神様に感謝。

小学生の小曉とその母親がメイン。住んでいる家は高級マンションで、小曉が通っている学校も私立の名門学校というところから2人は富裕層だと分かる。小曉は発達障害を持っていて、クラスでは浮いた存在。心の拠り所は校庭で飼っているふくろうだ。

父親は家に寄り付かず、母親の不倫相手が泊まりに来る。その相手は小曉の若い担任の先生。3人でキャンプに行ったり、プールで泳いだり。それほど隠すつもりはない様子だ。

殺伐とした生活の中で、小曉が同級生にケガを負わせたことから大問題となり不倫のこともバレてしまう。

自分では手に負えない現実を前にして、それでも母娘は一緒に生きていく。

観ていてこちらも息が詰まるような窒息感がある。愛情って自発的なものではなく、使い方を教わらないと誰かにあげることも出来ないものかもしれない。家は立派でもぬくもりはまったくなく、夫婦の関係は完全に冷え切っており、不倫もその場しのぎに過ぎない。娘は発達障害ゆえに常に問題を起こし、その対応だけでお互いの神経がすり減っていく。

主人公の小曉を演じたのは「美國女孩(アメリカから来た少女)」で次女を演じた林品彤。母親役は陳意涵(アイビー・チェン)。映画「軍中樂園(2014)」で慰安婦を演じた時に一瞬お尻まで披露して本気を見せた陳意涵だが、今ではすっかりベテラン女優だ。「母親だって女だし、自分の人生があるのよ!」というのをうまく表現している。

小曉の担任には香港映画「幻愛」の劉俊謙(テレンス・ラウ)。台湾進出に積極的でドラマ「此時此刻(此の時、この瞬間に)」にも出演している。でも言語の壁があり、ここでは「國語がうまくないので英語で教えている」という設定になっている。この担任が2人の生活に介入してくるが深入りはしない。花を添えるだけの存在だ。

監督の靳家驊(ジン・ジアフア)は新人で、脚本や短編で注目されていた。金馬奬では最優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞他7部門でノミネートされている。

一般公開は12月8日から。

 

追記:大阪アジアン映画祭2024にて上映予定。