夢が実現しない青春映画「填詞L(作詞家志望)」

広東語での作詞がテーマのこの映画は、翻訳難易度が最高レベル。翻訳した人に拍手。

監督は「金都(私のプリンス・エドワード)」の黃綺琳(ノリス・ウォン)。監督の自伝的映画だそうで、いくつかのエピソードは監督自身が経験したものだ。

主演の鍾雪瑩(ジョン・シュッイン)や、吴冰(サブリナ・ン)、鄧麗英(タン・ライイン)などの若手俳優がとてもフレッシュ。高齢化に歯止めがかからない香港芸能界の希望の星だ。

この映画は2000年以降の香港音楽界が背景になっているが、この頃はまさに広東語音楽の低迷期。1997年の香港返還以降、香港の歌手が広東語と北京語のCDを同時にリリースするのが普通になった。そして2003年の張國榮レスリー・チャン)と梅艷芳(アニタ・ムイ)の死。その後台湾の音楽やドラマが中国大陸で大ブームを起こす。そうこうしているうちにアジアでK-popが大流行。それに合わせて広東語音楽は中華圏でもマーケットの端の方に追いやられてしまった。それがそのまま今に続く。

そんな厳しい世界に、主人公は次々と果敢に挑戦する。そしてある日、その挑戦の過程こそが自分にとって貴重な体験だったのだと悟るのだ。

監督とプロデューサーが手出しで資金をかき集めたという話も泣ける。それでも去年の香港亞洲電影節や金馬影展でも上映され好評を得た。香港での一般公開は3月7日からだが、せめて赤字にならなければいいなあと思う。

上映後のQ&Aには監督とプロデューサー、兄役の潘宗孝(アーネスト・プン)が登壇した。実は原作の本があり、それも監督自身が執筆されたそう。

実物の監督はかなりおキレイ。

主演の鍾雪瑩は香港では作詞家としても有名で、実にこの役にぴったり。だとしたら彼女もあの数字方式で作詞をしているのだろうかw