駆け込みセーフで観た「初戀慢半拍(ママボーイ)」

今年の台北電影節のオープニング作品。台湾での一般上映は8月で、私が観たのは二輪(ロードショー上映が終わった後に、主に2本立てで安く観られる映画館)の湳山戲院。前は台北市に4つあった二輪映画館も、今では2つになってしまった。

母親と2人暮らしの小洪はもうすぐ29歳になるが、母親が過保護なために今までまともに女の子と口をきいたことがないぐらい奥手。ある日子持ちの風俗店のママ樂樂と出会い、彼女に恋をする。

監督は「一頁台北台北の朝、僕は恋をする)2009」「明天記得愛上我(2012)」の陳駿霖(アーヴィン・チェン)。長編は今回が3作品目の寡作な監督だ。

主演の徐若瑄(ビビアン・スー)はNetflixドラマ「華燈初上」での日式クラブのママ役が短い登場ながらも話題をさらったが、今回は風俗店で女の子達を取り仕切るワケありママを演じている。これがかなり堂に入っていて説得力がある。男運が無くて、もう成人した息子も詐欺に引っかかってお金をせびりに来るだけ。ピュアな気持ちを寄せる小洪についやさしくしてしまうが、小洪の母親にバレて会えなくなってしまう。

小洪のように母親から自立できない男性も、息子をまるで恋人や夫の代わりのように扱う母親もめずらしくないだろう。小洪が樂樂を好きになるのも、どことなく樂樂と母親が似ているからだ。年上で、自分を否定せず受け入れてくれるところ。顔も似ているし。

樂樂と樂樂の息子の関係は真逆で、樂樂は母親らしいことは出来ずほぼほったらかしてきた。人生における基本的なことを教わってこなかったせいで、うまく生きれないこの息子も少しかわいそうだ。

その息子役は范少勳(ファン・シャオシュン)が演じている。今回はそれほど目立っていない。

最終的に小洪はちょっぴり大人になって、新しい恋の始まりの予感させて映画は終わる。

2人でワルツを踊るシーンがファンタジーで微笑ましい。こういうシーンは陳駿霖監督のお得意とするところ。「一頁台北」の一番最後のユルいダンスシーンも大好きだ。

 

追記:2023年7月7日より「ママボーイ」の邦題で、シネマート新宿他にて全国順次公開決定。