小天が次々と撃ちまくる「周處除三害(我、邪で邪を制す)」

関空で一夜を過ごし、台北に朝10時頃に着いて、午後4時頃に映画祭で観たが、前半部分ほぼ寝落ちしてしまい、後日一般上映で観直した。

「周處除三害」は故事から取られたタイトル。周處という嫌われ者の暴れん坊が三つの害(虎と蛟と自分自身)を駆除したというお話。それとは別に英語のタイトル「The Pig, the Snake and the Pigeon」は仏教用語の「三毒」が由来。仏教において克服すべき最も根本的な三つの煩悩は貪(とん)・瞋(しん)・癡(ち)とされ、それぞれ鶏、蛇、豚が象徴している。

陳桂林はヤクザの世界でも怖いもの知らずで名を知られているが、ある日自分が末期癌に侵されて余命いくばくも無いと告げられる。死ぬ前に自分の存在を世に知らしめようと、同時に指名手配されていた凶悪犯2人を殺そうとする。

1人は香港から逃げてきたヤクザの香港仔。そしてもう1人の林祿和を追ううちに怪しげな新興宗教に感化されてしまう。

見せ場が盛りだくさん。まず冒頭のヤクザの親分の葬式は桃園中壢で撮影。李李仁扮する警察官との死闘は台中で撮影。この時の小天の走り方がきれい。香港仔が隠れ家に使っている美容室は台中の精明商圈。新興宗教のアジトは設定は澎湖だが、セットを建てたのは桃園の龍溪花園。ここでの大虐殺は血みどろだけどあっさり。

監督の黃精甫(ウォン・ジンポー)は香港人で、今まで「江湖(ベルベット・レイン)2004」や「復仇者之死(復讐の絆 Revenge:A Love Story)2010」を撮っている。台湾で映画を撮るのはこれが初めて。

主演の阮經天は元がシュッとしているので、ヤクザ役でも泥臭くない。最期死刑執行の時、スクリーンいっぱいに顔のアップが映し出されるが、大量殺人犯なのに眼が本当にきれいでドキドキする。

王淨(ワン・ジン)は香港仔の再婚相手の連れ子の役。夜な夜な香港仔に性的行為を強要される薄幸の女の子だ。但し露出は背中まで。ドラマ「人選之人-造浪者(WAVE MAKERS~選挙の人々)」でも背中までだった。汚れ役を買って出るならもっと潔さがないと。

ヤクザ映画の中に正義や宗教が絡んで、単なる殺し合い以上の意味を含んでいる。映画の流れとしては「陳桂林よくやった!」みたいなノリで終わっているが、超悪人だからと言って個人的に殺していいのかと思ってしまう。現実的に考えれば信者の人なんてむしろ被害者側なんじゃないか。

しかし、この映画はある種の男性的なダークファンタジーで、陳桂林はダークヒーローだ。そう考えると黃精甫のこれまでの作品と通じるものがある。

金馬奬では7部門でノミネートされている。結果は11月25日発表。

 

追記:2024年3月1日から、Netflixで配信。