まさに香港郊外ツアー「緣路山旯旮(僻地へと向かう/縁路はるばる)」

今回も香港の新たな魅力を見せてくれた黃浩然(アモス・ウィー)監督。香港では2022年2月のバレンタインデーに合わせて公開された。2021年香港亞洲映画祭のクロージング作品にも選ばれている。舞台挨拶の様子がYouTubeにupされていて、主演の岑珈其(サム・ガーケイ)が、「自分が主演でお客が入るか不安」みたいなことを言ったら、すかさず監督から「お客が見に来るのは美女だから大丈夫」というツッコミが入ってみんなで爆笑という場面があった。

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主人公である阿厚は茶果嶺村出身で今は観塘(クントン)にある父親所有のマンションに住んでいる。5人の美女はそれぞれ、沙頭角のA. Lee、白泥の戴花花、大澳のMena Ma、梅子林のLisa、大嶼山澄碧邨の咩姐になる。

沙頭角といえば中英街ともいわれる制限区域で、「禁区許可証」が無いと香港人でも中に入れない。街の様子は2018年の大阪アジアン映画祭で上映された「中英街壹號(中英街一号)」で描かれている。

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どれも香港の中心部からめちゃめちゃ遠い。普通の旅行者はまず行かないだろう。でもたとえ香港の地理に疎い人でもちゃんと距離感が理解できるよう、映画の中でアプリを使って教えてくれるから安心だ。

A. Leeを演じる蘇麗珊(シシリア・ソー)は黃浩然監督の前作「逆向誘拐」にも出演している。Lisa役の陳漢娜(ハンナ・チャン)は2017年の映画デビュー以来出演作は多くはないが、どれも話題作ばかりだ。咩姐役の余香凝(ジェニファー・ユー)は黃浩然監督の短編映画「4×4(四段四分鐘)」では主演を務めている。

この「4×4(四段四分鐘)」の4つの季節に4人の男性というアイディアを、男女を置き換えて再構成したのがこの映画らしい。

単なる場所の紹介にとどまらず、阿厚の成長物語としても成り立っているところがおもしろい。これがイケメンの名の通った俳優だったなら、これほど味のある映画にはならなかっただろう。

この映画ではじめて主役を演じた岑珈其は、売れない役者の例にもれずずっと苦労をしてきた。デビュー作が「烈日當空(2008)」だというからキャリアは長い。

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当時まったく印象に無いwしかし今回の大阪アジアン映画祭ではこの映画以外に2作品に出演しているので、もう既に売れっ子なのかもしれない。

若手には厳しい香港映画界。これからも芸を磨いてがんばってほしい。

 

追記:2023年5月19日から「縁路はるばる」の邦題で、日本でも一般公開決定。

邦題が秀逸。ポスターデザインもgood。

 

追記2:シネ・リーブル梅田にて再び鑑賞。映画の中で「MIRRORのチケットがあるけど、どう?」というSNSのやりとりがあったのを確認。日本語字幕は「アイドルのチケット」になっていたけどね。

映画に登場する広東語の粗口が書かれたルービックキューブは、Yahoo!ショッピングで購入可能。

store.shopping.yahoo.co.jp

粗口の勉強になるかも。