AIロボットは恋をすることが出来るか「アフター・ヤン」

A24といえば攻めた作品揃いの映画制作配給会社だが、どうも好き嫌いが分かれるようだ。私も全部が好きとは言わないが、前宣伝から心に引っかかる作品がとても多いので、観ている作品は多いほうだと思う。

監督は韓国系アメリカ人のコゴナダ。近未来の家族の物語だ。AIロボット(テクノ)のヤンが急に動かなくなったことで生まれた喪失感を家族で乗り越えようとする。

特にヤンを哥哥(兄さんの意味。日本語字幕ではグァグァ。何で?)と慕っていた娘の悲しみが胸を打つ。

それとは逆に父親は、この高額なテクノの修理に奔走するが悲しんではいない。父親にとってはあくまでもヤンはよく出来た家政婦なのだ。しかしヤンが残したメモリーを見ることによってヤンの今までの人生を辿り、次第にヤンを人間と同じ感情を持った存在として認知するようになる。

近未来の設定で、人種に関しては差別は無さそうだが、クローンやロボットに対しては差別がありそうだ。この映画にしても父親が一番保守的。それでエイダに質問して鼻で笑われているしw

養子の娘が中国系なので、お茶や言葉など中国文化の説明がちょこちょこ挿入される。

映画の最後のほうに娘がいなくなったヤンに中国語で話しかけるシーンがある。内容は「ヤンは世界で一番よ。嫌いだなんて言ってごめんなさい。いなくなってとてもさみしい。」いいシーンだと思うのだがここに日本語字幕は無い。何故だ?!

建築が好きな監督らしく、家のセットにはこだわっている。

インタビューの中でも答えているが、たまたま見つけたアイクラ―・ホームでセットを作った。アイクラ―・ホームとはミッドセンチュリーに売り出された建売住宅。これを近未来感は控えめにして自然と調和したぬくもりのあるインテリアでコーディネイトしている。

自然と光を切り取ったシーンが多く挿入されており、坂本龍一の音楽と相まってうっかりすると寝てしまう。睡眠はしっかりとってから見ることをお勧めする。