「翠絲(トレイシー)2018」 「濁水漂流(香港の流れ者たち)2021」の李駿碩(ジュン・リー)監督の最新作。今年のベルリン映画祭と台北電影節で上映済だが、香港では未上映。
眾生相とは仏教用語で「世の中にいる様々な人々の異なる表情や様子、または生活のありさま」のこと(by Wiki)だそうで、主人公がアプリを使って次々と相手を替えながらセックスを繰り返す様を映している。
相手の人種、年齢、国籍、職業はそれぞれバラバラ。ほぼ英語で会話している。
主人公は若く、ちょっとティモシーシャラメに似ている。相手役も基本みんなジェントルマンで、教養があり、やさしい。
全編モノクロの同性愛映画というと、今年の3月に大阪アジアン映画祭でも上映した「漂亮朋友(イケメン友だち)」とつい比較してしまいがち。でも私は「漂亮朋友」は見ていないので何とも言えない。だって中国東北地方の片田舎の中年のオッサンのゲイライフである。ハードル高いっすよ。そっちの方がリアルだとしても。
ほぼ全裸でセックスシーンが多いが、引きの画面で動かないのでエロくはない。だんだん慣れてきて2人がブラブラさせながら画面を動き回っても何とも思わなくなってくる。昆虫の生態を見るようなかんじ?
その中に、2019年の民主化デモのこととか、主人公の虚無感とかも挟まれていく。この底辺に漂うあきらめ感は李駿碩の他の作品にも見て取れる。
上映後は監督が登壇してQ&Aがあった。通訳はソフィーさん。
監督自身も同性愛者で10年来のパートナーがいる。この映画に登場する人の半分以上は素人で、アプリで知り合った人たちらしい。
今のところ香港で上映する予定はないが、やっぱり自分が生まれ育った場所での上映を望んでいる。審査を通すためのアドバイスはいろいろ聞いたけど、今回は自分が撮りたいものを優先して撮ったと言っていた。香港は毎年9月に香港レズビアン&ゲイ映画祭を開催するので、チャンスはありそう。