映画「犯罪現場(2019)」で、古天樂(ルイス・クー)に負けない存在感を出した張繼聰(ルイス・チョン)の主演作。シングルマザー役の袁澧林(アンジェラ・ユン)が悲惨な状況でも前向きに生きるイマドキの女の子を好演。
小さな清掃会社を営んでいる窄哥は、独身で老いた母親との2人暮らし。同じ建物に住んでいるシングルマザーと一緒に働くうちに、次第に彼女につられて自分も前向きな気持ちになっていく。しかし彼女のミスで会社は営業できなくなり、自分も転職を余儀なくされる。それでも2人の人生は続いていく。
今年の金馬獎は香港映画が多くノミネートされていて、どれも人気であっという間にチケットも売り切れ続出となった。その中で必死になってゲットした1枚。
この作品の成功の要因はこのシングルマザーのキャラ設定。悲惨な状況でもめげずに図太く生きていこうとしている。例えお金が無くてもカラフルなファッションやキラキラしたインテリアをあきらめたりしない。根性もあるし、努力もするけど、万引きのようなズルもしてしまう。
一方のしがない中年手前の窄哥は、人生の負け犬決定とばかりに半分諦めながら生きている。それでも仕事は手を抜かずに丁寧に仕上げるので顧客からの信頼は厚い。
会社が潰れた時、もう2人はだめなのかと思ったが、その後の展開が予想のはるか上でつい笑ってしまった。でも低空飛行のまま続く人生もありだろうなと思う。
上映後には監督の林森と袁澧林と音楽担当の黃衍仁が登場した。もともと清掃会社の話を考えていたが、それはコロナ前だったらしい。
「撮影はコロナのピークとピークの間の時間に撮った。スケジュールもコロナの影響を受けて変更も多かった。主演女優は実は違う女優に決まっていたが、契約期間がずれてしまった。改めてカメラテストをした時に袁澧林が来て役のイメージにぴったりだったので彼女に決めた。」
袁澧林が「一番印象に残ったシーンはどこか?」という観客からの質問に対して
「窄哥が訪ねてきた後の娘との2人のシーンで、監督が途中で娘役を呼んで何か話している。その後撮影を続ける時に、その娘の言葉を聞いて本当に母親の気持ちになった。」
と言っていた。確かにこのシーンはグッときた。
こんな風に映画の話が聞けるのが映画祭の醍醐味だね。
追記1:2023年の大阪アジアン映画祭で上映。
追記2:「星くずの片隅で」の邦題で2023年7月14日から日本一般公開決定。
さわやかなポスター。