未来の姥捨て山「PLAN 75」

平日の昼の回なので、ファーストディとはいえ見事にみんな年齢層高め。他人事ではない人たちばかり。

近い将来、日本でも安楽死が承認されたらどうなるかというお話。今年81歳の倍賞千恵子が78歳のミチを演じていてとても自然。ミチにはすでに家族はいないが、仕事もあって仲良しの友達もいて悪くない人生を送っている。しかし仕事仲間の友達が職場で倒れてから、収入も友情も一度に失ってしまう。そこから「PLAN 75」に申し込むのだが、結果は如何に。

人生100年時代」と言われるようになってきたが、多分人類はもっと長生きすると思う。実際に昔の60代と今の60代を比べてみても差は歴然としている。だって矢沢永吉が72歳だよ?氷室京介も還暦を過ぎてしまった。芸能人に限らず一般人でも、ジムに通ったりとかサプリ飲んだりとか健康に投資して、若者より健康な生活を手に入れている人はたくさんいる。

つまり今後日本は超高齢化社会になるとはいえ、それは誰も見たことが無い高齢化社会になるはずなのだ。「老人=社会のお荷物」という構図はもう古い。

そもそも年齢と個人の能力はあまり関係がない。若かろうが年寄りだろうが怠惰な生活を送れば病気になるし、経済の勉強をしなければ情報弱者になって詐欺に遭うのは当たり前なのだ。老人が若者の利益を搾取していると考えも妥当ではない。弱い立場にいる人が搾取の対象になるのを防ぐには、知恵を身に着けるしか無いと思う。

この映画のミチの問題は、生活圏が狭すぎることだ。ほぼ職場と家の往復のみ。交友関係も職場のみ。これではいざという時に必要な助けを借りられない。今なら超短期のバイトでもアプリで探せる。年齢がハンデにならない仕事なら、家政婦とか話相手とかありそうだ。

老人だからこそ、ITツールは必須だしコミュニケーション能力も必要だ。最低限の経済力も死ぬまで必要なのだから、何か一芸を身に着けるのもいい。

この映画には親切な解説はないが、ブラックな内情はところどころ透けて見える。なぜミチたちが高齢でも清掃員として雇われているのか、なぜ事業内容が怪しい会社が新規の国の政策に参入出来るのか、なぜ外国人がそういった新規の職場で働けるのか。

老人が今後もっと増えるなら老人向けマーケットも必ず大きくなるし、そこに雇用も商機もあるはずだ。日本人は悲観的にモノを考えがちだが、そんな暗い未来でもなさそうな気がする。