東京国際映画祭で「智齒(リンボ)」を観る

第一印象はポスターからも分かる通り「みっちり」。監督はきっと余白恐怖症に違いない。香港では11月18日から一般公開。

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全編モノクロなのはあまりにもグロいシーンが続くからだろう。最初の腐敗した左手のシーンからして臭いまで漂ってきそう。それでもそれがスタイリッシュかつ美学まで感じ取れてしまうのはベテラン鄭保瑞(ソイ・チェン)監督の力量だろう。「狗咬狗(ドッグ・バイト・ドッグ)2006年」「意外(アクシデント)2009」「車手(モーターウェイ)2012」など私好みの作品も多い。今回は更に監督自身が好きなものを突き詰めて撮った感じ。

舞台はディストピアな香港。登場するのはちょっと壊れてしまった刑事、ヤク中、売人、ゴミ拾い、路上生活者などなど。場所もゴミだらけの部屋、行き止まりの路地裏、さびれた団地と香港の裏の世界ばかり。

池内博之のヨゴレっぷりにも感心。イケメンほどああいう役を嬉々としてやりたがったりする。

役者たちはみんな体当たりで演技していて、特に主演女優の根性にも恐れ入った。

しかし!私が観た6日は別の場所で「瀑布」も上映していて時間が被っていた。なので最後の20分間は観られずじまい。泣く泣く映画館を去った。

きっとどこかで続きが観られることを祈ろう。