「香港映画祭2022」で公開「濁水漂流(香港の流れ者たち)」

2021年2月のロッテルダム国際映画祭でワールドプレミアで上映され、2021年6月に香港で一般公開。2021年の金馬獎、香港電影金像獎などで、多くの賞にノミネートされた。

ずっと観てみたかった映画を大阪で観られることがまずうれしい。リム・カーワイ監督に感謝である。

この映画に対する評価はすこぶる高いが、こういった社会の底辺に住む人のことをどれだけの人が理解できるかどうかはまた別の問題だろう。

まず「かわいそう」という上から目線の同情を拒否するかのように、映画が始まってすぐに主人公輝哥が街角でクスリをキメるシーンがある。刑務所から出所してすぐにヤクに手を出すのだから、更生するとか人生をやり直す意思はまったく感じられない。そのクスリを出所のお祝いとしてあげるのも、同じホームレス仲間の老爺だ。

彼らだけでなくここに登場する人々はいわゆるダメ人間なのだが、夢も希望もないまま長年生きていれば誰でもこうなるという見本みたいなものだ。だけど失語症だがまだ若い木仔にはまだ明るさがあって、ホームレス仲間が彼の世話を焼きたがるのもその明るさに慰められるからだろう。

この映画は2012年に香港で実際にあった話を元に作られている。深水埗の通州街公園で寝泊まりしていたホームレスたちの所有物をゴミとして処理、その後14名のホームレスが裁判を起こしたのだ。裁判の過程はこの映画の通りだが、最後は映画的な終わりになっている。

ホームレスにはホームレスの世界があって、困っている人を手助けするのは当然だとしても、何が何でもホームレスの存在自体を無くそうというのは無理なんじゃないかと思う。