90年代の名作も蘇る「獨立時代(エドワード・ヤンの恋愛時代)4Kレストア版」

90年代前半の台北が舞台。さまざまな人物が入れ代わり立ち代わり登場する群像劇。それを2時間にまとめ上げてハッピーエンドで終わる脚本が素晴らしい。ちょっとしか出番がない役にもキャラを持たせているので、いろいろ想像するのも楽しい。

時代背景としては、80年代からの高度経済成長を経て、交通網が整備され台北市周辺の街も再開発され、次第にサービス業が産業の中心に移っていく頃。厳戒令が解除されたのは1987年。民主化の機運も高まって1994年には初めて国民党以外の政党の台北市長が誕生した。

体裁は90年代のトレンディドラマそのもので、登場するのはバリキャリ女子やヤンエグ男子(古いなあ)に、芸術家に小説家だったりしてきらびやか。歴史からのお堅い引用句や哲学的なセリフを多用しながらもベースはコメディだ。まさに「人生は喜劇そのもの」。それぞれがウオサオしながら自分の思い通りにいかなくて地団駄を踏んでいる。

その中でもっとも気になったのが、琪琪(チチ)とMolly(モーリー)の関係性。学生時代からの親友という設定だが、もっと近しい感じがする。朝会社で仲直りするシーンとかもう老境に入った夫婦のようだ。それを楊德昌(エドワード・ヤン)監督はシルエットだけで見せている。

台湾映画ではお馴染みの顔もちらほら。琪琪役の陳湘琪(チェン・シャンチー)はこの後蔡明亮ツァイ・ミンリャン)監督作品の常連となり、今でもバリバリの現役女優だ。琪琪の彼氏小明の同僚役には陳以文(チェン・イーウェン)、上司役には金士傑(ジン・シージエ)。小明の継母役には香港でも活躍している金燕玲(エレイン・ジン)。

「恐怖分子(1986)」も好き。

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