易烊千玺(イー・ヤンチェンシー)の迫真の演技「小小的我(小さな私)」

2024年の東京国際映画祭で世界初上映。3回上映したが自分の休みと合わず泣く泣く見逃した。中国大陸では2024年12月27日一般公開。その後こっそり中国のサイトで中国語字幕で見て、今回Netflixで日本語字幕付きで観ることが出来た。

東京国際映画祭でのインタビューの様子はここ↓いつまで見られるかな。


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監督の楊荔鈉(ヤン・リーナー)は女優であり、ドキュメンタリー映画の監督でもある。なので今回もドキュメンタリータッチで、リアルに脳性麻痺の家族の生活を描いている。

で、やはり素晴らしいのが易烊千玺の演技に見えない演技。

易烊千玺というよりデビューしたての王宝強に近いwそんな王宝強も年齢と人生経験を重ねて今ではいい顔つきになっている。

映画の中に主人公の春和が夢を見るシーンが2度出てくる。夢の中では脳性麻痺ではない自分と好きな女の子が登場する。その時だけは見た目が易烊千玺になっていて、それがかえって強烈にせつない。

易烊千玺が易烊千玺に見えないのと同様に、祖母役と母親役の女優も最初誰なのか分からなかった。ご本人は動画にもある通りの正統派美人だ。それが全編ほぼスッピン(かそれ以上)で出ている。女優ってすごいわ。

国語教師になろうと勉強している春和が、子供を相手に講義をするシーンで、苔についての詩を解説している。

白日不到處 白日(はくじつ) 到らざる処(ところ)

青春恰自開 青春(せいしゅん) 恰(あたか)も自ら来たる

苔花如米小 苔花(たいか)は米(こめ)の如く小なるも

也學牡丹開 また牡丹(ぼたん)を学んで開く

漢文の時間で五言絶句とかレ点とか習ったなあ。香港映画「白日青春(白日青春-生きてこそ-)」のタイトルの由来もここから来ている。春和は自分をこの苔になぞらえて逞しく生きようとしている。

この春和とおばあちゃんとの関係がいい。世の中で唯一春和を特別扱いしないのがこのおばあちゃんだ。でもバイトの面接の日にこっそり後をつけようとしたりして、一番心配しているのもこのおばあちゃんなのだ。

ロケ地は四川省成都。なのでみんな四川訛りの中国語だ。

楊荔鈉監督は、おばあちゃんの生きざま、母親の葛藤、その母娘の確執と女性の気持ちの機敏を描くのがとてもうまい。なのでお父さんの存在のなんて薄いこと。

映画の最後、春和はひと夏の間にずいぶん大人になって終わる。まだまだつらいことはたくさんありそうだけど、春和ならきっと乗り越えられるのではないだろうか。