巨大な権力が暴力と結びついた悲劇「餘燼」

今回一番観たかった映画。チケット発売の初日に売れ切れたが、金馬はチケットの払い戻しが可能なので、毎日キャンセルが出てないかチェックしていた。そして台北に着いたその日にチケットをゲット!席もまずまず。豪華な俳優陣と鍾孟宏(チョン・モンホン)監督自ら撮影した画にシビれる。台湾では11月15日から一般公開。

この中の何処かに私もいる。
2006年の時代設定で、野球などの時事ニュースが時折盛り込まれる。張震チャン・チェン)演じる刑事が市場で起きた殺人事件を調査していく中で、1958年の厳戒令が敷かれた白色テロ時代の真相に迫っていく。

どの役者も全部素晴らしい。特に金士傑(ジン・スージエ)は見えない相手と会話していくほぼ1人語りのシーンばかり。莫子儀(モー・ズーイー)の知的で絶望に満ちた演技も素敵。しかも1人2役。張震とその上司役の陳以文(チェン・イーウェン)との掛け合いや、部下役の劉冠廷(リウ・グァンティン)との関係性もすごくいい。

それぞれの役名が本名と似ているのも監督の意図が隠されているに違いない。例えば張震の役名は張振澤、莫子儀は莫子凡、許瑋甯(ティファニー・シュー)はそのまんま許小姐wそれともいちいち名前つけるのが面倒くさかったとかwww

ロケ地は台中でいくつか。大里菸葉廠、忠孝路長老教會、光音育幼院、第一分局、台中地方法院、霧峰山區、后里區火炎山堤防などなど。鍾孟宏監督は台中がかなりお気に入りらしく、今までの作品でも台中が良く出てくる。

上映後のQ&Aでは陳以文と莫子儀が登場。

お揃いのTシャツ。

観客から「小莫のシャワーシーンは必要だったんでしょうか?」という質問があがったが、「あれは莫子凡の禊みたいなものだから必要」ということだった。それでも台本が書き換えられるたびに変更があったらしい。

白色テロについては以前から映画やドラマの題材に取り上げられることはあるが、政府による本格的な検証や調査はまだ終わっていない。誰が被害者で誰が加害者なのか。それを追求するのは痛みも伴う。

今日はこれが最後なので、ゆっくりめに帰ろうとしたら、ばったり道端で車に乗り込こうとしている小莫と遭遇した。数人のファンに囲まれて一緒に写真を撮られていたが、暗い道端で感度の悪いスマホで撮ってもなあと思い私は踏みとどまった。

それでも超至近距離で見た小莫はやっぱりかっちょ良かったっす。

そして後日、誠品書店で本も購入。

710NTD也。ずっしり重い。