「そういえばまだ見ていなかった」シリーズ。デジタルリマスター版がネットにあがっていたので鑑賞。
ある事件がそれまで無関係だった人間を繋げていく。まさに名作と呼ぶにふさわしい映画である。
世の中に映画は星の数ほどあるが、常々「面白い映画とつまらない映画の違いは何なんだろう?」と考える。つまらない映画は最初の20分も経たないうちに見続けるのが苦痛になる。最近はネットで見ることも増えたので、そうなるともうポチっと押して最後まで見ない。
しかしこの映画のように、何気ない風景が映し出されるだけなのにぐいぐい引き込まれていく場合もある。おそらく画面上の構図や黄金比率などが絡んでくるのだろうが、この映画の中には「ん?」と思うシーンがいくつかあった。
例えば、警官の家の中に掛けられた安っぽいヌードカレンダーが人物の後ろで風にはためくシーン。「なぜ敢えてヌードカレンダー?」とちょっと考えてしまった。もうひとつは同じく警官の家で男2人が酒を飲むが、人物の手前にずっと花柄のやかんが置いてあるシーン。手前のモノ越しに人物を撮る構図はよくあることだが、なぜやかんなのか。だからといってどちらも画面から消すとちょっとさまにならない。楊徳昌監督の計算なんだろう。
ストーリーも完璧で破綻が無い。特に夫婦のすれ違いっぷりがイタイ。ヨメのセリフの中にも登場するが、絶対に夫は一生ヨメの気持ちは分からない。単にヨメに浮気相手ができて出て行ったのだとしか思わないだろう。この夫婦に限らずここに登場する人物たちの中でコミュニケーションは成立していない。相手の気持ちを視野に入れず、自分の思考の中でぐるぐるまわっている。そういった関係性がタイトルに繫がっているのではないかと思う。
台湾映画やドラマでお馴染みの人も、若い姿で登場している。そういうのを見るのも楽しい。