ナワポンは絶対いいヤツ「ハッピー・オールド・フィルムズ2」

東京、京都に引き続き「ナワポン・タムロンラタナリット監督特集~タイからの新しい風~」が大阪シネ・ヌーヴォでも上映された。

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監督が自ら企画&制作した特集上映のオリジナルポスター大阪版。映画の登場人物も混じっているらしい。東京、京都版も同じくらい素敵な仕上がり。

京都で観た「あの店長」の感想はこちら。

mingmei2046.hatenablog.com

4日間しかない中で今回観たのは16本の短編が詰まった「ハッピー・オールド・フィルムズ2」。

TOYOTAのCMがあったり、東京で撮影した短編があったり、バラエティに富んでいる。ユーモアの質が丁度自分のツボにはまった。

一番好きなのは盗撮された動画がSNSで拡散され、ひとりの人生が大勢の何気ない好奇心によって狂わされてしまったお話。主人公をチュティモン・ジュンジャルーンスックイン(愛称はオークべッブ)が演じているが、最初は笑えるのに最後の一粒の涙の演技でこちらも泣きそうになる。オークべッブもよくこの役を引き受けたなあと感心する。

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映画監督と言えば社会不適応合者の曲者揃いで、町山智浩風に言えば「どーかしている」人ばっかりなイメージがある。しかし最近の特に若手の監督は、才能はあっても性格が良さそうな人が増えたような気がする。インタビューやビデオレターで登場する場合には、観客にウケそうなネタまで用意してくれたりする。

映画というのは大人数のスタッフが集まって作り上げていくものなので、例え監督が天才でも1人で制作するのは不可能だ。そのうえ制作に時間がかかるので、1本の映画を仕上げるのに何ヶ月、何年もかかる場合がある。

そうなると、嫌なヤツとずっとくっついて仕事をするのは苦痛になる。それでもスタッフや俳優はプロの職人なので自分の仕事の下げることは絶対にしないが、上げることも無いと思う。しかも監督は映画を1本撮って終わりではない。撮り続けてこそ映画監督なのだから、「次も一緒に仕事をしたい」と思わせないと難しくなる。

観る方にしても、性格が嫌なヤツの撮った作品は観たくない。人間の暗部を深く掘り下げるのも映画だが、その暗部に取り込まれるのではなく客観視して表現として作品に反映させなくてはならない。

健全な変態という二律背反な存在が監督の理想の形かな。