底辺層の怒りと悲しみ「大佛普拉斯(大仏+)2017」

「台湾巨匠傑作選2021」から。大阪で見逃したので、アップリンク京都で観た。

2014年金馬奨で最優秀短編映画賞を獲った「大佛」を長編に変えた作品。2017年の台北電影節と金馬奨では多くの賞を獲得した。2017年東京国際映画祭でも上映された。

f:id:mingmei2046:20210804100142j:plain

短編映画「大佛」もネットで探せば見られる。長編に変えるにあたって元ネタはそのままに大幅にグレードアップしている。
ロケ地はほとんど台中市。底辺に生きる菜脯や肚財も冴えない人生だが、社長の啓文や権力の上に胡坐をかいている人達も誰も幸せそうに見えない。

プロデューサー兼撮影は鍾孟宏 (チョン・モンホン)で、モノクロ映像が実に美しい。映っているのがゴミの山や廃屋でさえも美しい。そしてドライブレコーダーの映像だけカラーというのが、痛烈に世界を皮肉っている。

啓文役は戴立忍(レオン・ダイ)が演じているが、死んだ魚の目をした悪役をやらせたらこの人の右に出るものはいない。いつも底なしの怖さを醸し出している。今回特に衝撃的な演出があって、思わず映画館の中で「あっ」て声を出してしまった。その姿がやけに馴染んでいるのがまたいい。

陳以文(チェン・イーウェン)と林美秀(リン・メイシユウ)の「阿彌佛陀」の掛け合いも息がぴったりで流石ベテラン。

黃信堯(ホアン・シンヤオ)監督と鍾孟宏が撮ると一見突き放したクールな映画に見えるが、最後は一気に怒りを爆発させる。どうにもならない世の中とどうにもならない自分に対して。

2作目の「同學麥娜絲(同級生マイナス)」では、ついに監督自身が怒りを爆発させて映画の中で暴れまくる。 

mingmei2046.hatenablog.com

今後も楽しみ。