単なるメロドラマで終わらせない「不想一個人(一人にしないで)」

台湾では2021年12月24日のクリスマスシーズンに合わせて一般公開された。

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范揚仲監督の作品は多くない。テレビ映画というテレビで放送された映画が3本のみ。しかしこの映画を観て並々ならない才能を感じた。

メインはこの3人。

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左からデリヘル嬢の金莎役:温貞菱(ウェン・チェンリン)、チンピラの阿龍役:范少勳(フェンディ・ファン)、画廊の経営者乃文:莫允雯(クリスティーナ・モク)。

范少勳は黃秋生(アンソニー・ウォン)主演ドラマ「四樓的天堂」でも激しめのセックスシーンありで好演している。莫允雯は元モデルで、2013年のドラマデビュー以来脇役から徐々に主役を演じるようになった。今回激しいセックス描写に挑戦したのも今後のキャリアを見据えてのことだと思われる。温貞菱は安定した演技力で、掴みどころのない金莎を見事に表現している。一応脇役なのに金莎のパートが多めなのが彼女の実力を証明している。

阿龍はヤクザ組織に属ざず、個人で女性を集めて客に斡旋している1匹狼。その阿龍の紹介で商売をしている金莎とはもうお互いセックスする気も起らないくらい長い付き合いだ。酔いつぶれた客の代行運転もしている阿龍が乃文を家まで送るうちに2人は関係を持ってしまう。

阿龍は乃文が好きだが、自分と比べて高嶺の花だということはわかっているのでセックス以上のことは求めない。危篤状態の不倫相手を愛している乃文の孤独は、そんな阿龍とのセックスでも埋められないくらい深い。

普通だったら、乃文も阿龍のことが好きになってめでたしめでたしになるか、そこに金莎が横やりに入ってドロドロの展開になるかしそうなものだ。しかし范揚仲監督は安易な結末を拒否して、ただひたすら登場人物たちの孤独と不安を描写していく。

無駄な説明は一切ない。登場するアート作品もどれも印象的だ。想定外の妊娠もどうなったのか観客が想像するしかない。

今回見逃してしまってもまだチャンスはある。台湾文化センターとアジアンパラダイス共催の台湾映画上映イベントの中でこの映画の配信が決定した。

www.cinemart.co.jp

「不想一個人」は7月23日14時から。大体その2週間ぐらい前に申し込み受付を始めるので、事前チェックが必要だ。

それとなるべくなら、電車や会社の休憩室で観るのは避けた方がいいと思うw