リム・カーワイ監督セレクト「香港映画祭2021」から。「香港映画祭2021」は大阪シネ・ヌーヴォから始まり、今後は出町座(京都)、元町映画館(兵庫)、名古屋シネマスコーレ(愛知)、ユーロライブ(東京)の全国5都市で公開予定。
2019年の「香港亞洲電影節」で上映され、2020年の台北電影節でも上映された。香港での一般公開は2020年7月から。日本でも映画祭などで上映されるかとずっと待っていたが、ここに来てやっと劇場で観ることが出来た。リム・カーワイ監督ありがとう。
タイトルの通り、幻想的で美しい映像が続く。主なロケ地は屯門(トゥンムン)。かつて屯門をこれほど美しく撮った映画があっただろうか。
阿樂が住む団地:湖景邨
香港の団地はよく映画に取り上げられるが、ロの字の建物は閉塞感と緊張感がある。
ポスター撮影地:屯門碼頭長廊
映画を象徴する風景。
2人が乗る屯門軽鐵
香港の乗り物好きにはたまらない。
初めてキスをしたトンネル:沙田禾輋邨隧道
屯門ではなく沙田で撮影して、後でCGで合成している。
総合失調症の男性がとあるきっかけで、自分の妄想で作られた女性と恋をする。その後実際に妄想の女性のモデルとなった女性と再び出会い、お互いに好意を持つ。
妄想の女性欣欣(インイン)は言わば「理想の彼女」。自分の庇護を必要とする純粋な存在だ。しかし実在する女性葉嵐(イップラン)は、卒業をかけた自分の論文を完成させるためには手段を選ばない野心を持っている。しかしそんな彼女の弱点は、誰とでも寝てしまうことだった。
精神分析の過程では「転移感情」といい、本来なら別の人間に向けられるべき感情を分析側或いは患者に向かって再現することを示す。精神科医も人間なのでつい相手の感情に引きずられることもあると思うが、だからと言って恋愛はご法度。このお約束はいろいろな作品にも登場するいわば常識だろう。2人の関係が明るみになった後に、葉嵐が最後に取った選択が気になるところ。
恋した時のフワフワした感じが最後まで残る映画。ラストシーンを甘いとみるかどうかは観客次第。
このシーン自体2人の幻想だと思ってしまった私は夢がないのかも知れない。