台湾BL作品の金字塔「孽子」

これも大阪市立図書館で借りた。1970年代の台湾におけるゲイたちの恋愛、苦悩が分かる。

1983年に出版され、まず1986年に映画化、2003年に公視で20集のドラマ化、2014年に初の舞台化となり、2020年には再び舞台化された。

ドラマと2014年版の舞台は私も見た。舞台版では莫子儀(モー・ズーイー)が主役を演じている。

しかし舞台はどちらかというと主役の阿青よりも伝説の恋人龍子×阿鳳の恋愛の方に重点が置かれていた。すごかった。超耽美で。

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写真は2020年版から。運命に定められた恋。花びらの嵐の中、2人が空中で舞い踊る。

今回あらためて原作を読むと、名言の連続できゅんきゅんする。

龍子と阿鳳はその性格の激しさ故いつも衝突してしまう。そして「自分には生まれながら心がない」という阿鳳に龍子は「だったら僕のをあげる」と言うのだ。そして更に「君の体中の汚れも僕が舐めてきれいにしてあげる」と告げる。

そして大みそかの夜、龍子はナイフで阿鳳の胸を突き刺す。しかし突き刺したのは阿鳳にあげた自分の心なのだ。その時龍子の心も同時に死んだ。

この2人以外にもツボはたくさんある。呉敏の一途さ、小玉のしたたかさと純情。行き場のない若者たちと、彼らを求める老人たち。その間を取り持ちながら若者たちの面倒を見ている楊教頭(楊師範)。この辺りは映画「マイ・プライベート・アイダホ」と共通点がある。

阿青と父、龍子とその父、陰ながら資金を出して若者を支援する傅老人と自殺した息子の3組の父子の葛藤も感慨深い。

家族の崩壊の話でもあり、父子の絆の話でもあり、多層的な物語の底辺を流れるのは孤独だったりする。

この物語で印象的なのはかつて公園に咲いていたという真っ赤な蓮なのだが、実際にあるらしい。しかも大阪府泉南郡熊取町に。真っ赤ではないがかなり色の濃い蓮で、品種は「恋紅」だそうだ。

夏になったら見に行こうかな。