東京国際映画祭で「麥路人(ファストフード店の住人たち)」を観る

この映画ではじめて「マック難民」という言葉を知った。日本で生まれた言葉で、ネットカフェにすら泊まれない人がマックに流れたらしい。

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郭富城(アーロン・クォック)演じる阿博はかつては金融の世界で名を轟かせていたが、公金に手を出し刑務所へ。出所した後は某ファーストフード店で寝泊りする毎日だ。そこで出会う同じく人生いろいろな仲間を助けながら、いつかは家に帰りたいと思っている。

マック難民」という題材は新しいが、内容は底辺に住む人間たちの人情劇場だ。なので彼らの状況は悲惨なのに、見ていると心が温まる。監督はこれが長編デビュー作なのだが、実にうまいところを突いてくるなあと思った。しかもこれは群像劇で、それぞれのエピソードが偏りなく描かれている。つまりそれぐらい各キャラに対して観察と熟考がなされているということだ。

久しぶりに黒髪で演じている楊千嬅(ミリアム・ヨン)も場末の売れない歌手にしか見えなくて、改めて演技力の高さを見せつけられた。その他に張達明はじめ芸達者な面々がそれぞれのキャラを演じている。

この映画は東京国際映画祭が世界初上映ということだが、「ロンドンイーストアジア映画祭」のクロージング映画にも選ばれていて、今後は世界を駆け巡りそうだ。

上映の後にQ&Aがあった。短い時間ながらいろいろ話を聞くことが出来て良かった。某ファストフード店については無許可で撮影したそうで、そういうことが出来る香港てすげーと思った。