のむコレ2020「レディ・マクベス」を観る

2017年の京都ヒストリカ国際映画祭では、「マクベス夫人」のタイトルで上映。

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2016年公開で、フローレンス・ピューが広く注目されるきっかけになった作品である。

彼女が演じる主人公キャサリンを「悪女」と呼んでしまうにはあまりにも悲しい。17歳で子供を産む道具として殆ど人身売買のように嫁いだ相手は、倍以上年上でしかも父親との確執からキャサリンとのあらゆる接触を拒否。そんな舅と夫との板挟みに遭いながら、1人の人間として扱われない日々を送っていた。

そこに能天気に自分に興味を示す下男が登場。実際大した男でもないのだが、藁にもすがる思いで彼との関係にどんどんのめり込んでいく。

これは19世紀のイギリスの片田舎のお話だが、現代でもこういう女はいるだろう。「男によって自分の人生が劇的にいい方向に変わるかもしれない」と思っている女は。

そういう「ヒロイン願望の女」がうまい具合に「ヒーロー願望の男」と出会えれば、それはそれでめだたしめでたしなのだが、大抵はヒーローにはなりたいけど問題解決能力はほぼ0という男が殆どだ。そもそも人が人を救うこと自体難易度が高いのだから、相手にだけそれを強要するのは酷というもの。

結局キャサリンは現状を打破したかっただけだったのではないかと思う。しかし代償はあまりにも大きかった。次第に心が蝕まれていく様をフローレンス・ピューが実にリアルに演じていた。

そして大事な脇役がメイドのアンナ。舅の命令で彼女が膝まずくシーンは、当時のアンナの立場を的確に表していた。彼女も家の主人から見れば1人の人間ではなく、単なる家事をする道具にすぎない。

このポスターのように座るシーンが確か3回あった。毎回意味合いが違っていて、そして最後、彼女は1人になったが完全な孤独にもなった。