姜文(チアン・ウェン)監督映画「邪不圧正」を映画館で観る。

7月13日から大陸で公開中。興行収入は既に5億元を突破したので、大ヒットと言えるだろう。

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相変わらず姜文の趣味が100%の映画。しかし今回は主役の座をポンちゃん(彭于晏/エディ・ポン)に譲って自分は脇役に回ったので、以前ほど「オレ様映画」にはなっていない。

というか、姜文ポンちゃんに対する愛に溢れた映像ばかりで、どんだけ好きやねん!て思ってしまった。

映画の中でポンちゃんはその華麗な肉体美を惜しみなく露出している。全裸のシャワーシーンまで用意してサービス満点。誰向けなのかっていうと多分監督向けじゃないかと思ってしまう。ドアップのシーンも多い。

そのポンちゃんの相手役は姜文のヨメ。相変わらず年齢不詳でお美しい。今回は遂にエグゼクティブプロデューサーにもなっていた。姜文のこだわりを受け入れられるのはヨメしかいないとか。

姜文流ユーモアも健在。アクが強いので好き嫌いが分かれるが、澤田謙也が繰り返し言う「梶岡」にはつい笑ってしまった。「梶岡」って誰だよw

復讐を遂げたいがなかなか遂げられない男の話に137分は長い。いなかの映画館ではお尻が痛かった。

舞台は1937年の北平(現在の北京市)だが、撮影は雲南の屋外にバカでかい(4万平方メートル!)屋根のセットを組んで撮影している。

一応抗日で残虐な日本人も登場するが、今年の東京国際映画祭には来るのかな?

 

追記:2018年の第55回金馬奨にて谷垣健治さんがこの作品で最優秀アクション監督賞を獲得した。「捉妖記(モンスター・ハント)2」とのダブルノミネートというのもすごいね。おめでとうございます!

婚活中の人は見ておいた方がいい台湾ドラマ「荼蘼(恋の始まり 夢の終わり)」

またまた名作の誕生。日本でもいろんなチャンネルで放送しているので探せば見られるかも。45分×12話と日本のドラマとボリュームが同じ。

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脚本は「我可能不會愛你(邦題はトホホなので書かず)」「妹妹(僕らのメヌエット)」の徐誉庭。なので今回も格言がいっぱい。

仕事を取るか恋愛を取るかの二者選択を迫られ、それぞれに「プランA」「プランB」と名前を付ける。そしてこの2つの間を行ったり来たりしながら一体どちらが正しかったのか検証していくお話。結論から言えばどちらも正解。目の前のことに対して一所懸命にやればそれが正しい選択になるのだ。

とにかくリアル。特に「プランB」のヨメの地位の低さといったら。世の中には「安定」とか「安心」を求めて結婚したい人が多いが、結婚したって安定も安心も出来ないことをこのドラマは教えてくれる。例えば自分一人なら何とかなる問題も家族の人数分増えたらもうお手上げだ。

このドラマのいいところはちゃんと男性目線もあるところ。夫の苦悩もとても理解出来る。そして想定外の「プランC」の登場もあるあるだ。

主演の楊丞琳(レイニーヤン)と両親役のベテラン俳優を除いて殆ど新人と無名の俳優を起用している。しかし大根はいない。そこもすごい。

タイトルの「荼蘼」は中国語圏では結構有名なバラの名前らしいが、難しくてなかなか読めない。実は英語の「two me(2人の自分)」とかけているので、それで覚えるといいかも。

呉慷仁(ウーカンレン)がゲス王子に。台湾ドラマ「花是愛(2012)」

久しぶりに王道の台湾ラブコメを見た。ネットで見たが、ちょっと古いのでちょこちょこ抜けている。

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この爽やかなブルーのジャケット+白のピチピチパンツがいかにも台湾ドラマらしい。他にピンクや薄グリーンのジャケットも登場する。

32歳の結婚を焦る主人公の前に、颯爽と現れた王子様。しかし実はそいつはいろんな手管手練を使って女性を口説くのを趣味にしているゲス王子だった。

そんなゲス王子も、口説いた後の恋愛経験がないため、その先に関しては中二並みにおぼこかった。次第に性格のいい主人公に本気で好きになるが、うおさおするばかり。

恋愛ドラマは如何にすぐ両想いにならせないかというこの1点にかかっている。今回は恋愛詐欺から出発しているので、そこからどう挽回するのかが見どころだ。

14話で既に両想いになってめでたしめでたしなのだが、そこからまだ続くのが台湾ドラマの特徴だ。

それと台湾ラブコメには必ず一人芝居が入る。ぬいぐるみに恋の悩みを打ち解けたり、妄想したり。このあたりも呉慷仁はそつなくこなしている。

この作品の前後に呉慷仁は多くのラブコメドラマに出演している。普通ならそのままラブコメ要員になるところをうまく軌道修正して、今ではどんな役でも演じてしまう。

先日台北に行ったら雑誌の表紙が呉慷仁だった。ちょっとロン毛なのは役作りなのかな?

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次の作品が楽しみだ。

 

その後ロン毛は台湾ドラマ「憤怒的菩薩(怒りの菩薩)」のための役作りだと判明した。でも・・・何故ロン毛・・・?

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謎は深まるばかりだ。

 

追記:今ではNetflixで視聴可能。

張家輝(ニック・チョン)監督の第3作目映画「低圧槽欲望之城」をネットで見る

第1作目がホラー、第2作目がエクソシスト、そして今回は中国版「シン・シティ」。

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「孤城」という架空の都市が舞台。大人になったらギャングか売春婦か汚職まみれの公務員になるしかないようなバイオレンスな街だ。そこで主人公が請け負うのは潜入捜査。「悪を以って悪を征する」完全無欠なダークヒーローだ。

そんなわけで、ニックは近距離の銃撃戦でも弾はちょっとしか当たらない。カーチェイスでも無茶しっぱなし。韓国仕込みのアクションで敵を打ちめかし、向かうところ敵なしだ。

そこにラスボスが登場。このラスボスの設定はかなり好き。最後のどんでん返しも嫌いじゃない。

日本とタイでもロケしているが、ほとんどは上海で撮影をしている。しかしCG技術の発達で、言われないと分からないくらい無国籍感いっぱい。

「低圧槽」とは低気圧に覆われた状態らしく、常にどんよりとして雨が降っている。映像の色調も基本モノクロで、このダークな映画の世界を見事に表現している。

美術はかなりの凝りよう。

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主人公の隠れ家。

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警察のマークも架空のもの。壁の素材がかっこいい。

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当然パトカーも架空のデザイン。

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ダミーのラスボスと会うシーン。ここで火鍋を食べている。

俳優は香港大陸入り混じっている。「ニックと気の合う仲間たち」という雰囲気。

その中の香港人女優が「幹!(fuckの台湾語)」と言うシーンがあって、いやそこは普通に「でぃう(fuckの広東語)」でいいのになあと思ったw

撮るたびに作品がスケールアップしているが、毎回ニックの評価はイマイチ。しかし流行を追いかけるだけで新しいテーマを見つけられない中国映画の中で、誰も撮らない映画を撮るニックは貴重だと思う。

一体みんなニックに何を期待しているんだろう?

「轉山(転山)2011」をネットで見る

最近チベットの資料を探すついでにいろいろチベット関連の映画を見ている。日本では2011年の第24回東京国際映画祭で上映済み。

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英語タイトルの「KORA」とはコルラのこと。神聖な山の周りを五体投地で巡礼することである。亡くなった兄の代わりに麗江からラサまで自転車で行くのも一種のコルラだろう。

現地の人との淡い恋心とか、親切とか、孤独、ケガ、それを乗り越えての達観とか、この手の映画に必要なものは全て揃っている。特筆すべきなのは主人公がどんどんカッコよくなっていくこと。1人の男の成長をこれほど鮮明に映し出している映画はなかなか無い。

計画はかなり無謀。素人なのに初冬に富士山より高い場所を自転車で走ろうというのだから。それでも28日かけてようやくラサに到着する。途中森の中で死んだ兄と出会うシーンは私もジブリっぽいと思った。

監督は「洗澡(こころの湯)」で、銭湯でオペラを歌う男を演じた杜家毅。その後プロデューサーになり、これが初監督作品となった。どうりでエンドロールでいろいろな人に感謝をしているわけだ。

主人公役の俳優張書豪もその後順調にいくつかの映画で好演している。この映画の撮影を乗り越えられたら、どんな映画も受け入れられるだろう。というぐらい過酷なのが画面を通して伝わってくる。つまりフィクションなんだけど、ある意味ドキュメンタリーでもある。

私もチベットに行きたくなったが、旅行には何かと敷居の高い土地である。何とかモグリで入れないか検索する人も多いが、それは止めといたほうがいい。

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いいなあ。

20話で視聴を断念。劉燁(リウ・イエ)主演ドラマ「老男孩」

47話もいらない。ご都合主義と登場人物の心情がブレまくりで、結局最後までたどり着けなかった。

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独身生活を謳歌する主人公の前にいきなり16歳の高校生が息子だと名乗り出る。このネタだけで面白くなるはずなのに、盛り上がりそうな部分は全てスルーして、薄~い展開のまま進んでいく。

16歳の男の子はええとこのボンボン。母親が急死した後、実は母親の最初の結婚相手が自分の実の父親だと知らされる。そのため怒った養父に家から追い出され路頭に迷う。親友の家でしばらく過ごすも親友の母親からやんわり出ていくように言われる。

というかなり悲惨な状況のはずなのに、そのへんの葛藤とかはスルー。いやいや中国で苦労知らずの16歳の男の子が路頭に迷うってかなり危ないだろう。その後実の父親があっさり分かり、そこに押しかける形で住み込む。そこで父子のケンカとか一応あるが、すぐに打ち解けて男同士の友情みたいなものが芽生える。いやいやいやそこは紆余曲折あるだろう?というドラマらしいおいしい部分は全部やり過ごされる。これが日本や韓国ドラマだったら、15分に1回ぐらいの頻度で泣きのシーンを作るだろうに。

そこに絡むのが「90年後」の高校教師。これを林依晨(アリエル・リン)が演じているが、いくら童顔でもこれは無理。このキャラだったら他に女優はいるだろう。周冬雨は無理だとしても楊紫とか。なのでここでも「90後とオッサンの価値観の違い」というおいしい設定が台無し。

日本のゆとり世代のように上の世代から「これだから90後は!」と言われてしまうこの世代。この「80後」「90後」に中国人はかなりこだわりを持っていて、「80後でも自分は85後だから」とか「オレは90後よりの80後」とかどんどん細分化が進んでいる。つまり中国社会の中で「80後」は既に中年の仲間入りをしているのだ。そこに実際は80後の林依晨が90後の役を演じるのはつらい。もちろん林依晨に罪はないけど。

何故かは分からないがこのドラマでは劉燁が良く歌う。劉燁と言えば俳優の中でも音痴として有名。しかし多分いっぱい練習したんだろう。音は外れていない(笑)。あとパイロット役なので英語のセリフも多い。昔は英語全然話せなかったのに。いっぱい練習したんだろうなあ(涙)。

そしてこのドラマの特徴としてスタジオ内のセットが多い。家の中はセットでも玄関のドアを空けるとロケというのが通常の中国ドラマだ。最初見た時「路地から家に入るくだりが朝ドラっぽいなあ」と思った。

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絡んだ電線などしっかり造りこんでいるが、上海の路地にしては地面が平らでキレイすぎ。後ろに自転車やバイクを走らせると躍動感が増すよ。

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馴染みの食堂もセット。後ろがガラ空きなのが惜しい。

まずは脚本!ドラマも映画も脚本ありきだ。

呉鎮宇が画面いっぱい「脱皮爸爸(シェッド・スキン・パパ)2017」

日本では2016年の第29回東京国際映画祭でお披露目済だった。しかしその後香港での公開が伸び、2017年4月にやっと公開。大陸は更に遅れて2018年の3月に公開となった。香港に行く機会があるたびに公開チェックしても定かではなく、ネットで検索してもずっと見れずじまい。最近になってようやく愛奇藝(アイチーイー)で見ることが出来た。

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はじめに何だか舞台っぽい印象を受けたが、まさに舞台の映画化だった。しかも原作は日本人。舞台では複数の俳優が年齢別の父親を演じていたが、映画では呉鎮宇が全部演じている。

愛奇藝は北京語吹き替えのみで、しかも老けメイクをしているので最初は呉鎮宇の良さがあまり出てこない。しかし脱皮するたびに若返ると、呉鎮宇がエンジンがかかったの如くハジけまくっていく。しかも年齢別にキャラも変わるので、演技の幅がハンパない。

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呉鎮宇全員集合~!

古天樂(ルイス・クー)は冴えない映画監督役。そこにはっぱをかけまくるやんちゃな父親の対比がおもしろい。

表向きはこの父子の物語だが、実はその2人を支える母親へのリスペクトの物語でもある。6人の父親と一緒にみんなで麺をすするシーンがほのぼのしていて良かった。

父親が若返ると家の中の内装も変わり、ノスタルジックな香港の団地の風景が甦る。

遂には家が空に飛んで父親がみんな戦闘機に乗り込むのだが、もとが父親が脱皮するというありえない設定なので、もう何しても平気。

低予算だと思うが、肝心の父親の抜け殻や戦闘機もしっかり作りこんでいているし、好感の持てる映画だった。