林嶺東(リンゴ・ラム)監督「冲天火(スカイ・オン・ファイア 奪われたiPS細胞)」を観る

大陸では2016年11月25日から公開だったが反応はいまひとつ。既にネットでも公開中。

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香港の架空の高層ビル「天空1號 SKY ONE」を舞台にiPS細胞を巡る暗躍をテーマにした映画。主役の呉彦祖はそこの警備部の責任者。

前作「謎城(ワイルド・シティ)」に引き続き張孝全がこれまたコテコテの台湾人として登場する。どれぐらいコテコテかというと常にウェストポーチ+お寺のキャップを持って歩いているwww純朴だけど兵役したことがあるので武術や銃の扱いはお手の物という役どころだ。

香港が舞台なのでロケ場所を探すのも楽しみだ。

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これは上環の文武廟。中で大暴れしている。

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これは油麻地の平安大廈。中には安ホテルがいっぱい。この間行ったらゴダイゴは無くなっていた。やっぱり今時日本人専門でやるのは難しいかったのだろう。

ここから逃げて後に続く屋上のシーンは別の場所。

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真ん中に見えるのはどこの高層ビル?朗豪坊(ランガムプレイス)?と思ったら、後にロケ地が判明。九龍駅の近くにある団地、文華新村だった。

香港の街のど真ん中でのカーチェイスとかビルの中でのアクションとかは香港映画の王道を行く迫力のあるシーンばかりだった。ほぼ実写なので俳優陣は傷だらけだったらしい。

ヒットしなかった要因は

悪役の目的がお金のみで単純だった。iPS細胞は成功すれば莫大な利益が得られるが、研究にも多額の費用がかさむ。その辺りのお金のトラブルをサラッと流し過ぎたのでは。

iPS細胞が話題になった割には実際みんなよく知らない。

張孝全の事件への介入が強引だった。教授会いたさとは言え明らかにヤバそうな場面でトラックを運転して逃げるだろうか?トラック運転手というのはこのための伏線なのか。

殺された教授の息子役の俳優が下手すぎた。

最初と最後に台湾での街角芝居のシーンがある。これが実は人間の死生観にも通じるところがあり、そういうエピソードのはめ込み方はうまいなあと思った。

 

追記:2018年12月29日、林嶺東監督がご自宅でお亡くなりになりました。台北映画祭で「謎城」の舞台挨拶をされた時のユーモアたっぷりのお話が素敵でした。ご冥福をお祈りいたします。

昼と夜と2度おいしいホイアンの街

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ベトナムは3回目で1回目はハノイからホーチミンまで途中でフエに寄りながら鉄道で縦断した。2回目はハノイのみでずっとぐだぐだしていた。

で、今回ホイアン行きを決めたのは昔日本人街があったのと「メティセコ」の本店があったから。

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ダナン空港からツアー会社運営のシャトルバスもあり、思っていたよりスムーズに行けた。ネット上では「ホイアンエキスプレス」のバスしか探せなかったが、他のツアーバスもあるようだ。前もって「ホイアンエキスプレス」のHPでバスの予約をして支払いも「銀聯ユニオンペイ)」でOK。

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フエにも行ける。

飛行機は遅れて出発したが、それも前もってメールで連絡しておいた。空港では名前が書いてあるボードを持った「ホイアンエキスプレス」さんが待っていてくれた。

1時間もしないうちにホイアンに到着。お客は私を含めて2人だけで、予約していたホテルまで送ってくれた。夜の到着だったのでこれはすごく助かった。めちゃくちゃ明るい女の子のホテルの従業員?に迎えられそのまま部屋に案内される。予約番号とか伝えてないけどいいのかなと思ったが、次の日の朝にオーナーママにしっかりチェックされた。

朝は市場あたりをぐるぐる。結構ATMもそこかしこにある。貴金属店でも両替が出来るので、何店かまわってとりあえず300人民元だけ両替する。

それでそのまま街をぐるっと散策。それほど大きな街ではないので観光名所は徒歩で全部見てまわれる。

午後は疲れたのでちょっと昼寝して、夕方を狙ってレンタサイクルで海まで行く。このコースは定番らしく途中で何人もの自転車に乗った観光客とすれ違った。

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海に着いたら駐車場でおばちゃん攻撃に会う。料金は後払いで番号の描いた紙をもらった。

そこでもまったりくつろいで帰ることにした。

おばちゃん「5万ドンだ」

私「は?5千?」

おばちゃん「いや、5万ドンだ」

ホイアン名物カオラウやホワイトローズでさえ3万~4万ドンだ。

ないわー。それは。

「マックワ!ボッディ(高いまけて)」とオーバーアクション気味に言ったら2万ドンに下がった。それでもボっていると思ったが、もういいやとそれで払った。ベトナム人が旅行者をボルのは今に始まったことではない。ただ今回来て思ったのは1万ドン以下の値段はあまり存在しない。

あるとしたらミネラルウォーター600mlが6千ドンとか。額が大きすぎて高いんだか安いんだか。

夜はまた街に戻ってランタンが灯る街中を歩く。ちょうど空には満月がかかっていてとても幻想的だった。人も昼ほど混んでいない。

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おしゃれなお店が多い。

 次の日の朝も予約したシャトルバスでダナン空港へ。ちゃんとホテルまで迎えに来てくれた。

 みんな外国人慣れしているので特に困ることはなかった。ただレストランで料理が出るのがとてもとても遅い。隣で店の家族がご飯食べているのを横目に見ながら空腹で待つのはかなりつらい。

ホテルは香港や台湾ならドミトリーに住む値段で個室(浴室付)が使えるのがありがたかった。TVではNHKもやっていた。

ベトナムはまた来るかも。

 

もろにツボにハマったハンガリー映画「リザとキツネと恋する死者たち」

映画には相性があるので、世の中でどんなにヒットしていようが自分の心の中に入ってこない映画もある。逆もしかり。特に私は好みが(多分)偏っているので、「これは!」と思う映画にはなかなか出会わない。(もし出会ったらとことん追いかけるのさ)

そんな中、ポスターだけで「これ絶対好きだ!」と確信したのがこの映画。

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30歳の生真面目看護師にキツネの妖怪が取り付いて、彼女に近づく男たちを次々殺していく。でも真実の愛に出会う時、その呪いに勝つことが出来る。話もポスター同様キテレツで、特にこの人↓

やっぱおかしいwww

1970年代のポップでレトロな東欧セットに昭和のGSサウンドがかぶさりトミーが踊りまくる。

日本でも去年全国で上映したのでそこそこヒットしたのかな?

例えばこういう人にお薦め。

「アメリ」が好きな人。

チャルカが好きな人。

昭和が好きな人。

このトニー谷がミッチーとダブって見えてしまう人。

機会が合ったら是非観て欲しい。

サントラ欲しいなあ。

 

 

香港の未来を映し出すオムニバス映画「十年」

これは2025年の香港を描いたオムニバス映画である。2016年の大阪アジアン映画祭でも上映され、その後タイ版、日本版、台湾版の映画も作られた。

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5話ともリアルにありそうな話でつらかった。広東語を話す父親と北京語を話す息子の話とか。香港産の物が売れなくなる話とか。

1年4か月ぶりに香港に行った。24時間しかいなかったわけだが、それでも前とは違うとこをいくつか。

大陸人が香港に押しかけて買い物をするのは前と同じだが、香港側の店員の扱い方が変わってきている。以前は広東語で話しかけてこっちが通じないと分かると「上玉のお客」扱いされたものだが、今回はなんだかうんざりした態度。よっぽど嫌な目にあったのかもしれないwそして釣銭を商品の上に置いて渡された。すぐそばにトレーがあるのに?ふかふかの服の上に小銭を置かれ何度も落としそうになった。

香港人が大陸人を嫌うのは今に始まったことではない。それでも以前は「たくさん買い物してくれればそれで自分のボーナスも増えるんだからまあいいか(だからたくさん買えよ)」という目で一応は対応してくれた。なのに今回は心の中の舌打ちまで聞こえてきそうだった。

もう何年も前から日本人には見られないことには慣れているが、一応日本人なんだけどなー。誰も日本人扱いしてくれない。やっぱり他の日本人観光客みたいに、たとえ海外にいようが家の近所に買い物に来たのと同じ空気を醸し出さないといけないのだろうか。

それでも下手くそな広東語を話し続ければ、質問にはいろいろ教えてくれた。答えが北京語というところが泣ける。もっと勉強しよう。

 

追記:その後Netflixでも見られるようになり、2019年の200万デモの後にもう一度見返した。見ていると胸が締め付けられるね。映画の中の出来事が今後起きてもおかしくないぐらいのリアルさがある。

今後香港はどうなってしまうのだろうか?

飛行機で「君の名は。」「何者」を観る

今回短いながらも4回飛行機に乗ることになったので、たっぷり映画を堪能できた。

まずは人気の広がり方が「世界の中心で愛を叫ぶ」とか「一杯のかけそば(古いなあ)」と似ている「君の名は。」から。

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これを観て号泣する人が続出というのは本当ですか?

すっかり川村元気の手のひらの上で転がされていますよ!

次に原作も読んでいてどう映画化するのか気になっていた「何者」。

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旬な若手俳優勢ぞろい。

最後の方で舞台に切り替わる演出がよかった。

相変わらず「よーいドン!」でみんな一斉に就活する日本だが、就職なんていつでもいいし、サラリーマン以外にもたくさんの仕事が世の中にはたくさんあるのになあ。

「まわりから認められる何者」かになりたくてあがく群像劇。でもそのカッコつけがイタいというか痛々しい。

映画「霧島、部活辞めるってよ」を観て「イマドキの高校生に生まれて来なくて良かった」とつくづく思ったが、今回も「イマドキの若者でなくて良かった」と心底思った。私にはこんな生活ムリムリムリ。

観客はこの登場人物の中から自分に近いキャラを探すのだろう。

理想はサワ先輩。うらやましいのは光太郎。でも気がついたらギンジになっていた。

私の場合はこんな感じだろうか。

香港で「一萬公里的約定」を観る

夜の最後の上映で何とか間に合った。

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大陸でも1月9日から上映しているらしいが、近所ではやっていない。

大陸資本が多いが多分プロデューサーのジェイ(周杰倫)が引っ張ってきたんだろう。そのおかげでアメリカロケは迫力満点だ。

1994年前の台湾で、走ることが3度の飯より好きな男の子がウルトラマラソンに挑戦するお話。

スポ根台湾映画というと「翻滾吧!阿信(ジャンプ!アシン)」を思い出さずにはいられない。比べてしまうと「スポ根かと思いきや実はチンピラ映画だった」という意外性と「ポンちゃんのほうが好み」という2点で、「翻滾吧!阿信」に軍配が上がる。

「一萬公里的約定」は純愛にも重みを置いているが、かなりピュアというか観ているこっちが赤面してしまいそうなエピソードばかりだ。設定が90年代だから?

女性コーチ役の頼雅妍は「等一個人咖啡」で人気者になり、台湾ドラマ「愛上哥們(アニキに恋して)」でも男装女子を演じて好評だったが、シリアスな演技はまだ難しかったらしい。主役の黄遠も演技が単純なので、2人がお互い引かれていく過程に深みがない。

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クールなバリスタ役で火が付いた

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いつも見た目は男同士でイチャイチャしているラブコメドラマ

兄役の王大陸くんもこの映画ではまだまだ駆け出しの新人という感じ。今では孫紅雷と組んで大陸のバラエティ番組に出るほど人気者だ。

ジェイもちょこっと特別出演して花を添えているが、全体的に盛り上がりに欠ける映画だった。

 

 

香港で台湾映画「一路順風」を観る

24時間しか滞在時間がない中で、絶対観たかったのがこの映画。去年の東京国際映画祭でも上映された。

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公開2週目に入り、上映回数もそんなに多くない。時間の関係で私は4K版で観た。

主演の許冠文(マイケル・ホイ)は20年前香港から台湾にやってきたしがないタクシードライバー役。納豆は台湾の有名司会者&タレント。タレントとしてはお笑い色が強いが、鍾孟宏(チョン・モンホン)監督の以前の作品には普通の俳優として出演している。

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TVではいつもこんな感じ。

劇中でも納豆役でドラッグの運び屋をしている。

そしてそのドラッグに関わるヤクザのボスに戴立忍(レオン・ダイ)だ。今回の戴さんもクールで腹黒くて素敵。ますます好きになってしまった。

映画はタイから始まる。タイマフィアのボスは「湄公河行動(メコン大作戦)」にも出ていたタイ人のおっさんだ。そこで戴さんは死ぬ一歩手前まで追いつめられるが、何とか切り抜ける。

これを回想して台南のヤクザのボスに話して聞かせるのだが、この2人のやりとりが絶妙だ。嚙み合っているようで微妙にズレている。長年取引している相手とはいえ腹を割って話してはいないのが会話からわかる。

ドラッグの受け渡し場所になっている廃墟のボーリング場がすごくいい。長い長いソファとか手作り感いっぱいのレーンとか。

裏切り者に対するリンチがすごかった。「アウトレイジビヨンド」の中のバッティングマシーンを使った殺し方も秀逸だったが、この映画でも悪夢にうなされそうな方法が登場する。

あ~あ~あ~、痛い痛い痛い痛い。

ヤクザ映画を撮る人はみんな常にどうやって殺そうか考えているんだろうな。

特別ゲストで陳玉勲監督がちょこっと出演していて嬉々として演じていた。

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ちょこっと出演といえば金士傑が納豆の父親役だった。でもボケた写真でしか登場しない。最後のエンディングロールで分かったくらい。

タクシードライバーの小龍包のエピソードも実に切ない。でも私もこんな融通の利かない夫は嫌だと思う。ヨメ役の林秀美の見下した態度がまたたまらない。

その小龍包絡みで最後はちょっといい話ふうで終わる。

台湾を出てまだ1年しか経っていないのに、もうこんなに懐かしい。