台湾映画「52赫兹我爱你(52Hz, I love you)」を飛行機の中で観る

いつもの如く帰りは香港経由の飛行機に乗った。今回はラッキーなことにビジネスクラスにランクアップしての搭乗だった。人生最初にして最後のビジネスクラスかもしれないので大いに堪能した。

そんな訳で観たい映画が見放題。まずはこれから。

f:id:mingmei2046:20171107204703j:plain

魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督が29日間で撮り切ったミュージカル映画。歌やダンスのユルい感じがいかにも台湾だ。「ラ・ラ・ランド」のキレッキレのダンスの対極だが、結構好きだ。

どんなに世界の中心で愛を叫んでも、52ヘルツじゃ誰にも届かない。それでもバレンタインデーにそれぞれ奇跡は起きた。

いろんなカップルが登場するが、一番目立ったのはこの2人。

f:id:mingmei2046:20171108142758j:plain

 超ラブラブなビアンちゃんカップル。台北市が主催する公開合同結婚式に参加したくてやってきた。式には現役市長の柯文哲も登場。セリフが棒読みなのはご愛嬌。

ゲストの顔ぶれも懐かしい。「賽德克·巴莱(セディックバレ)」主演の林慶台、「艋舺(モンガに散る)」のゲタ親分馬如龍、「海角七號(君想う、国境の南)」に出演していたバンドも歌を披露してくれた。

いかにも台湾らしいと思ったのは、花屋の女の子とチョコレートを配達する男の子が交通事故を起こす場面。気の強い台湾女子にさんざんまくし立てられて言うなりになる草食系台湾男子。でも結局最後はなんとなくいい雰囲気になってしまうのが台湾ラブコメのパターンだ。

大作続きの魏徳聖監督はこんな楽しい小品も撮れるんだと証明してくれた作品。

 

追記:2019年5月17日、台湾の立法院同性婚を合法化する法案の採決を行い、賛成多数で可決。24日には同性の合同披露宴も開催された。まさに映画の現実化だ。

f:id:mingmei2046:20190531095815j:plain

良かったね。

日本で観た映画いろいろ

10月に日本に帰った時にいくつか映画を観た。

「3度目の殺人」

f:id:mingmei2046:20171123205356j:plain

とにかく役所広司すげー。今回はちょっと狙った演出を披露した是枝監督。実は弁護士の重森も被告人の三隅と同類なのではないかと思った。そして広瀬すずのただならない女優としての存在感。朝ドラ女優にするにはもったいない器だと思う。

 

「ローサは密告された」

私が日本にいたときは関西では京都シネマでのみ公開だった。初めて行ったがしみじみいい映画館だ。映画が始まる前にスタッフの方が前に出て注意事項を述べる。超アナログだがこっちのほうが効果抜群だと思う。そして同じ建物内のレストランでは半券割引サービスがある。もちろん映画を観る前でもサービスしてくれる。

f:id:mingmei2046:20171203145215j:plain

フィリピンにはまったく思い入れがないが、この映画は観てみたかった。相変わらずカオスな国だが家族愛だけは強い。兄弟それぞれ精いっぱいお金を集める姿が健気だ。

 

2001年宇宙の旅」爆音バージョン

f:id:mingmei2046:20171123205755j:plain

丸の内ピカデリーのイベントにて。キューブリックの美学が好き。2001年は既に過ぎたが今見てもちっとも古臭くない。そういえば「時計仕掛けのオレンジ」を90年代に観た時にも同じように感じた。

でもやっぱり全部は理解できなかった。特に終わり方。今後も何度も観るに違いない映画。

追記:その後、「町山智弘の映画塾!」を見て疑問が解消されてすっきりした。でも本人も最後におっしゃていたが、全部分かってしまうのもつまらないもの。


町山智浩の映画塾!「2001年宇宙の旅」<予習編>【WOWOW】#193

 

婚約者の友人

f:id:mingmei2046:20171123205922j:plain

人生初オゾン。戦争が個人にもたらす影響を描いた作品。1919年のお話だが、個々のエピソードに対してものすごくしみじみとわかってしまう映画だった。

白黒とカラーの使い分けが秀逸。個人的にはフランスママの何もかもお見通しよ的な性格がツボにハマった。

恋に破れた主人公だが、多分その後の人生において彼女はきっと幸せになると思う。

東京国際映画祭で「報告老師!怪怪怪怪物!(怪怪怪怪物!)」を観る

そう言えば東京国際映画祭だなあと思って、日本にいる間に観られる映画はないかと調べてみた。そうしたら「報告老師!怪怪怪怪物!」が残り4席だったので、速攻ネットで買った。

f:id:mingmei2046:20171109193052j:plain

日本語と中国語のダブル字幕だったのでかなり助かった。耳で聞いた言葉を文字で追う方が楽だ。

いじめられっ子といじめっ子がひょんなことで怪物と出会い、二人で怪物をイジメたおす。しかし怪物は実は元人間で、毒のある薬を飲んだせいで今の姿になってしまったのだと分かる。

いじめられっ子は今までさんざんイジメられてきたので怪物のつらさが分かる。何とか助けたいが、元がヘタレなのでいじめっ子には逆らえない。

実は怪物には姉がいて失踪した妹をずっと捜していた。いじめっ子は妹怪物をエサに姉怪物も捕まえようと画策する。

今年の夏休みに台湾で一般公開された映画なので、若者向きの内容。ホラーやゾンビが好きな人にはたまらないだろう。

いじめっ子もかなり悪いが(一応理由はある)、仏教にのめり込んでいる先生もかなりヤバい。

最後の結末はかなり悲壮。同じくクラスでいじめられている女の子の設定がここで効いている。「明るく笑ってハイおしまい」にはならない映画だ。

映画の終わりには九把刀監督を交えたQ&Aがあったが、私はここでタイムリミット。深夜バスで実家に帰らなくてはいけない。

九把刀は若い人を中心に人気なので、今後も映画を撮り続けていきそう。そのうち若者向けじゃない映画も撮るのかな?

 

追記:「台湾巨匠傑作選2020」でも上映決定。東京から始まって大阪、神戸、京都、名古屋での開催も予定されている。

https://taiwan-kyosho2020.com/schedule/

 

追記:Netflixで2020年11月13日から配信決定。

韓国初上陸(但し2時間だけ)

急用で日本に帰国することになり、全日空の直行便は流石に値段が高かったので、経由便の安い飛行機をいろいろ探してみた。

北京や青島などの国内経由はおもしろくない。そうしたらソウル経由が安かった。帰りは無理矢理香港経由にして往復のチケットを買う。これがネットで決算まで出来てしまうのだから便利になったものだ。

初韓国なので予備知識は全く無し。言われるまま飛行機を降りてトランジットの手続きの列についた。

扉の向こうはまさに空港を舞台にした韓国ドラマの世界だった。日韓と中国では一括りにされることが多いが、どこが違うのかと説明しようとすると自分でもあやふやだった。

今回初めてソウルに来てやっと分かった。とにかく女子がきれい。女を前面に出したメイクとみだしなみで、なんかもうみんな銀座のホステスNO1を取りにいっている感じ。そして男はさわやかさとマッチョさをアピール。女は女らしく、男は男らしく。

そんな韓国人が目の前で談笑しあっているともうここは撮影現場ですか?てかんじで眩暈がしてきた。

特に、全体的に薄暗い中国の空港とあか抜けない中国人税関スタッフの世界から直接来てしまうと、そのキラキラっぷりに驚くばかりである。

気を落ち着かせてせっかくなので韓国のお土産を買うことにする。全部韓国語なので何がなんだが。陽気なおばちゃんに英語でいろいろ質問して人民元で支払う。絶対私も中国人だと思われていることだろう。

10時に羽田に着いて終電を逃さないように慌てて電車に乗り込む。品川を過ぎたあたりでライトアップされた東京タワーが目の前に大きく現れた。

東京に来たんだなあと深く実感。

遂に最終回!ネットドラマ「無証之罪(バーニング・アイス-無証之罪-)」

 

mingmei2046.hatenablog.com

 

1週間が待ち遠しいドラマなんて久しぶりだった。最後までぐいぐい引っ張っていく展開が楽しかった。

他のネットドラマと比べて、脚本も音楽も美術も良かった。中国の刑事ドラマはトリックやアリバイ崩しよりも人間関係に焦点が当たる。それはもしかしたら中国で東野圭吾の本が売れているのと関係あるのかもしれない。

日本だとそれこそ江戸川乱歩からのミステリーの歴史があり、以前はトリックを暴いて犯人を当てることが一番重要になっていた。しかし東野圭吾の場合は、それよりも人間の感情部分の描写に重点が置かれている。なので何だか普通の小説を読んでいるような気になる。それでも日本にいれば両方のジャンルを楽しめるので問題ないが、中国ではそれが偏っているような気がしてならない。

これは他の病院ドラマ、お仕事ドラマ、教育ドラマでもそうで、結局基本どれも誰が誰を好きとか家庭内の痴話ゲンカとかの「ホームドラマ」じゃーんて思う。今流行の刑事ミステリードラマでもホントに警察とか関係者にちゃんと取材しているドラマはごくわずかだと思う。逆にちょい前の警察ドラマの方がリアリティがあったりする。特に海岩原作のドラマは海岩が元警察官なので、警察の裏事情も分かって面白かった。

 

「無証之罪」ではセットにも注目して欲しい。

f:id:mingmei2046:20171006221819j:plain

f:id:mingmei2046:20171006221908j:plain

メインの警察署内。緑を基調にして奥の段差が画面にメリハリをつけている。ハルピンの街並みに合わせてちょいレトロ。

f:id:mingmei2046:20171006222037j:plain

f:id:mingmei2046:20171006222053j:plain

事件で重要なカギを握る人物の部屋。メゾネットタイプでシンプル。TVの画面で流れる映像が気になる。

f:id:mingmei2046:20171006222206j:plain

f:id:mingmei2046:20171006222222j:plain

主人公の部屋。バツ2で一人暮らし。ここでもTVでモノクロの渋い映像が流れている。

最後は上司が主人公に騙されて手錠でベッドにつなぎ留められたのを何とかしようとしている図。

ハルピンでのロケ地に興味のある人はここを見れば詳しく分かる。冬のハルピン、マジで寒そうだ。

www.zhuaying.com

 

明日からは「那年花開月正圓」をがんがん見るぞー。

 

追記:Netflixで配信中。

孫儷(スン・リー)主演ドラマ「那年花開月正圓(月に咲く花の如く)」を観る

私がご飯を食べながらネットで血なまぐさいミステリードラマばかり見ていたら、中国人女子から「『那年花開月正圓』観たほうがいいよ~」と勧められた。

しかし超大河ドラマで74話まであるので尻込みしていた。それでも騰訊視頻(テンセントビデオ)の会員期限が切れる前だったので、重い腰を上げて観てみることにした。

f:id:mingmei2046:20171002204332j:plain f:id:mingmei2046:20171002204313j:plain

ありがちギャラ順に並んでいるポスターVS人物なしポスター

清朝末に実際に活躍した女性商人が元ネタになっている。舞台は商人の町として有名な陕西だ。

今日やっと12話まで観た。確かにおもしろい。孫儷はもちろん言うに及ばず、主人公の夫役の何潤東(ピーター・ホー)の演技が丁寧。映画「三少爺的剣(スウォード・マスター)」で主役を食った演技力をここでも見ることが出来る。

監督は2003年に孫儷、何潤東が主演しているTVドラマ「玉観音」を撮った丁黒だ。

74話は長い!と思う人は宣伝用のダイジェスト版もあるのでそっちがおすすめ。波乱万丈女の一代記だ。テレビでは東方衛視と江蘇衛視で放送している。が、若い人はほとんどネットで鑑賞している。ネット配信中に脇役を使ってコントみたいなオリジナルCMを流すのは既に定番らしい。オチもあって結構おもしろいからつい見てしまう。

話題のネットドラマをいろいろ観てみた件

まずは第1季、第2季まである人気シリーズ「心理罪」。人気がありすぎてドラマ化、映画化作品が乱造されている。

f:id:mingmei2046:20170924145747j:plain

f:id:mingmei2046:20170924145806j:plain

天才的犯罪プロファイラーが犯人像を当てそれにそって連続殺人犯を追っていく刑事ドラマ。俳優、監督はほとんど無名。なのでせっかく初めて主人公が登場シーンでも、もったいないくらいフツーに撮っている。

その他にあらすじ以外で引っかかるところが多くて内容に集中出来ない。「保存すべき犯行現場で見張り役の刑事が朝飯を食べている」とか、「あと一歩で犯人に逃げられた現場で怒り心頭の刑事が暴れようとする」とか、登場する脇役の女優ががっつり整形顔だったりとか。

それでも第2季には主人公の二人も慣れてきて自然に演技が出来るようになったと思ったら、そこに新キャラ登場。主人公に対抗するライバル役なのに、この女優がちっとも演技が出来ていない。眼鏡も主人公とカブっているし。そんなわけで続きは見ていない。

日本で犯罪プロファイルドラマが登場した時は、「たたき上げの刑事VSアメリカ帰りのエリート」的な対立構造がまずあって、プロファイリングに対してもっと細かい説明があったので、見る側も徐々にドラマの世界に入ることが出来た。でもこのドラマではいきなり天才プロファイラーが登場して「犯人は25歳前後の男。白いシャツを着ている。さあ、見つけ出せ!」で捜査が始まってしまう。プロファイルとは何かという説明をスルーしたままではなかなかついていけない。

次は「白夜追凶」。

f:id:mingmei2046:20170924204456j:plain

実は「心理罪」第1季の監督がプロデューサーになっている。一卵性双生児の兄弟が連続殺人犯として嵌められてしまい、その真犯人を捕まえるために交互に刑事である兄のフリをするお話。これも第1話であっさり入れ替わりをバラしている。

猟奇的な殺人事件そのものを追うというより、その周辺の人物に焦点があたっているようなドラマ。

推理ドラマは、犯行現場を理論的に作ったり、証拠となる細々とした小道具も必要だし、証言に合わせて再現ドラマを挿入したり、普通のドラマとは手法が異なるので慣れていないスタッフが撮ると観る方も混乱する。

ネットドラマは基本予算がないので無名俳優が多かったりする。そんな演技力の乏しい子を使って、これまた経験の乏しい監督がそのまま撮ってしまうと単なるワチャワチャした印象しか残らない。

こうなるとやはり頭一つ分飛び抜けているのが「無証之罪」だ。こちらも早々に真犯人は登場するが、その後も展開は謎めいたまま泥沼化している。その真犯人が探している犯人(ちょっとややこしい)の性格がめちゃめちゃ怖い。演技力のあるオッサン俳優が脇を固めているので、若い子が力不足でもワチャワチャしない。最終回は再来週だがとても楽しみだ。