宗教が人を不幸にしてしまう「ザ・ホエール」

立て続けに人が緩慢的な死に向かっていく映画を観てしまってちょっと気が重い。これもA24が製作している。

元は戯曲なので登場人物は多くない。でもその分キャラが濃い。それぞれがアンビバレントな感情を抱えて爆発している。チャーリーは緩慢な自殺を図っているが、最期を娘のために生きようとしている。看護師のリズはチャーリーを助けたいけど彼の絶望を知っているので結局はその自殺を助ける形になっている。娘のリズは父親が大好きなのに恨んでいる。宣教師は誰かを救いたくて誰かに救われたがっている。ピザ屋はいい人なんだけどその無意識の態度が最終的にチャーリーを傷つける。

欧米の映画を観る時に、キリスト教が根底にあると100%理解するのは難しいと思ってしまう。キリスト教にもいろいろな宗派があるが、この映画に出てくる「ニューライフチャーチ」は同性愛を禁止する厳しめの宗派だろう。私は無宗教なので「自分に合わない宗教なら別のに変えればいいんじゃ?」と思ってしまうが、そういうわけにはいかないのだろうか。でも自分を不幸にする教えってやっぱりおかしいんじゃない?別に横断歩道で白い線からはみ出して歩いても死なないし。戒律を厳しくすればするほど幸せになるとは限らないと、既に紀元前にシッダールタが断食後に気付いているんだけど。

ダーレン・アロノフスキー監督の作品は「ブラック・スワン」も観たし、デビュー作の「π」も当時観た記憶がある。変人という印象しかない。

主演のブレンダン・フレイザーの演技はやはりすごくて、特殊メイクの様子はYouTubeで見られる。


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すごく自然。でもシャワーシーンまで撮る必要があったのだろうかw

タイトルの鯨はもちろんチャーリーのことを指しているが、映画を観ていると、チャーリーがもともとは楽観的で知的でユーモアもあってナイスな人だとわかる。教え子だった恋人と運命的な出会いをして愛し合っていたことも。でもそれは死ななくてはいけないほどの罪なのか?

キリスト教って本当に分からん。