神戸の名画座パルシネマしんこうえんで「ベルリン・天使の詩 4Kレストア版」を観る

昔から映画が好きだったが、足繫く映画館に通えるようになったのは自分で稼げるようになってからだ。日本での公開当時はまだ貧乏な学生で、大ブームになったのは覚えているがちゃんとは見ていない。

流石4Kレストア版で映像がきれい。

天使が人間に恋をして人間界に降りるお話だが、核心はもっと骨太。甘いクリームに包まれたケーキの中にザワークラウトやソーセージが入っていたみたいな。

「おっさんが天使」という設定が意表を突く。そして基本何も出来ない。つらい人に寄り添うだけ。そして図書館で集まって、自分たちが集めた物語を交換する。

でもその存在自体がすごく優しい。自分がつらい時にも天使がこうやって寄り添ってくれていたらいいなとつい考えてしまう。

廃墟と化したベルリンの街を天使と一緒に歩き回るおじいさんの姿が痛々しい。このおじいさんはナチスが台頭してぐちゃぐちゃになる前のベルリンの街を知っているのだ。

天使ダミエルは人間になったが、もう一人の天使カシエルはそのまま天使であり続け、今度はダミエルとダミエルが恋したマリオンを見守り続ける。

そして元天使だった俳優としてピーター・フォークが本人役で出演している。ピーター・フォークといえば「うちのカミさんがね」が口癖の刑事コロンボだ。本当に元天使なのか真偽のほどが分からないくらい飄々としていておもしろい。

この3人の天使の三者三様の生き様も考えさせられる。

ライブハウスで流れる音楽もいい。そのライブハウスで遂にダミエルとマリオンが出会う。この時のマリオンの長科白の意味は町山智弘さんの解説を見て欲しい。

この映画が公開されたのは1987年(日本は1988年)。ベルリンの壁崩壊は1989年。その後ソビエト連邦が崩壊したのが1991年だ。時代は大きく動いたが、その後は混迷さが増すばかりだ。

天使は今でも人間に寄り添ってくれているのだろうか?