荒俣宏が教えてくれる映画「リリーのすべて」の謎

今日は映画を一休みして、宿から歩いて日比谷公園に行った。目的は「荒俣宏の大マンガラク館」だ。

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京都国際マンガミュージアムでは9月27日で終了していたので、東京で観られるのはありがたい。

その会場ではゲアナ・ヴィ―イナのイラストが多数展示されていた。実は荒俣宏は当時のガールアートイラストのコレクターでもあったのだ。ゲアナが雑誌の表紙や挿絵のために描いたイラストを、まさかそのまま見られるなんて思わなかった。

そして荒俣宏はゲアナとその夫アイナについての本も書いていた。その本も会場である日比谷図書館内で読めるではないか!さすがに図書館内で全部読めなかったので、大阪に帰って早速市立図書館に予約を入れた。

その本がこれ。

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本の冒頭にゲアナの作品が年代順にカラーで紹介されている。この本の初版が2016年3月20日。映画「リリーのすべて」が世界で初上映されたのは2015年12月31日である。ということは、荒俣宏は日本で話題になるはるか前にイラストを収集し、本を執筆したのだ。やっぱり荒俣宏はすごい。

この本を読んでやっと映画「リリーのすべて」を見て疑問に思ったことの答えを見つけ出すことが出来た。

映画では2時間という制約もあり、夫アイナの心情が中心で、ゲアナは「世界で初めて性別適合手術に挑戦する夫を献身的に支えるデキたヨメ」みたいなスタンスで作られていた。更に「男女という性差を超えた究極の人間愛」という宣伝文句が煽る。

しかしこの映画を観た後、「え?」て感じで違和感しかなかった。

監督は「英国王のスピーチ」「レ・ミゼラブル」のトム・フーパ―で、私の印象では品行方正なイメージだ。

そんな優等生が作ったトランスジェンダーの映画なので、いろいろ取りこぼしている気がするのだ。あまりにもきれいごとすぎないかと。

何故ゲアナは生命の危険があるのを承知でアイナの手術に同意したのか?

何故アイナは子宮の移植にまでこだわったのか?

本ではゲアナの作品の紹介が多いこともあり、ゲアナよりのストーリー展開になっている。映画のスピンオフみたいなかんじだ。

但し2人が愛し合って結婚したことは疑いが無いし、その愛はリリーが登場してからもやはり変わらない。3人の生活の中でリリーの存在が大きくなることにアイナは次第に耐えられなくなるが、その原因を作り助長したのはゲアナなのである。そして2人とも才能のある芸術家だったということが大きな要因だったと思う。

映画も本も両方見ることをお勧めしたい。

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めっちゃおしゃれ。

 

追記:Netflixで配信中。