東山章良の「流」を読む

大阪にとりあえず住むにあたりいろいろな諸手続きを終えて、まずやりたかったのは市立図書館の図書カードを作ることだった。そしてこの15年ほど読めずにいた本たちを片っ端から読んでいる。しかし京極夏彦の似たようなタイトルの本はどれが未読でどれが既読かもううろ覚えだ。うんと分厚い文庫分を読んでいる途中で「あ、この本読んだことある」と気づいた時の疲労感といったら。

そしてようやく以前からずっと読みたかった「流」を手にすることが出来た。

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舞台が青島と台湾なので、文章を読みながら自然と映像が目に浮かぶ。祖父を殺した犯人捜しのミステリーの要素もあるが、青春小説というほうが似つかわしい。主人公がチンピラとやり合うシーンなんて台湾映画「艋舺(モンガに散る)」そのままだ。おもしろいのが台湾語の表現の仕方。確かにこういう風に聞こえたりするよなw

中国語に馴染みのない人はやはりとっつきにくいかもしれない。人物相関図はあるが、当時の台北市内の地図もあった方が良かっただろう。

台北の街の喧騒とは対照的な大陸の田舎の風景描写も、まさしく私が知っている北方の田舎の風景だ。

ただ、それで「20年に一度の傑作」と言われると正直そこまではいかないんじゃ?と思う。作品の全体に通る一番太い筋がピンと張っていなくて、多少蛇行しているような感じを受けた。犯人との最後の対決も盛り上がりに欠けてちょっと拍子抜けした。

好みは人それぞれだ。もしこの作品が映画化したら是非見てみたいと思った。