大阪アジアン映画祭で「有鬼(ノーボディ)」を観る

この作品もネットでは一切資料がなく、白紙のまま鑑賞。

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自分で仕立てたスーツを着て毎日同じバスに乗り唾を吐くお婆さんと、父親の浮気現場を撮影しようとする少女との交流を描いた作品。

たびたびインサートされる女性は実はお婆さんの若かりし頃の恋人であり、ある日病気の治療を拒否してバスに轢かれて死んでしまう。そこで実はこれは女性同士の恋愛映画なのだと気付く。

年を取るとあまり性差が感じられなくなるが、このお婆さんも少女の兄からお爺さんだと勘違いされる場面がある。そこから援助交際の疑惑が広まり、近所の人々から責められてしまう。このシーンが見ていてつらい。寡黙なお婆さんはここでも沈黙したままだ。

世間を憎みながら過ごしてきたお婆さんが何故少女には心を開いたのか。ちょっと強引な少女にかつての恋人の面影を重ねたのかもしれない。

ある日少女がお婆さんの部屋にいる時に急に生理になってしまう。そこでお婆さんは少女のために生理用品を買ってあげて、恋人の大事な洋服も貸してあげている。ここでは少女はまさに現在進行形で生きている「生の象徴」なのだ。恋人が死んでから終わってしまったお婆さんの人生がまた動きだしそうになってこの映画は終わる。

LGBT作品はどちらかというと悲劇が多いような気がする。差別や無理解は昔に比べて少しは減っただろうか?

全ての人が心安らかに生きていけるような社会になればいい。