大阪アジアン映画祭で「過春天」を観る

香港とシンセンとを運び屋として行き来する高校生の物語。「過春天」はその運び屋の隠語でボーダーを渡ること。

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英語のタイトルは「The crossing」。ボーダーを越え、運び屋という犯罪の世界を越え、少女から大人へ越える物語だ。

シンセンで母親と一緒に暮らしている佩佩(ペイペイ)の父親は香港に住んでいて別の家族がいる。佩佩は香港で生まれた香港市民なので、毎日ボーダーを越えて香港の高校に通っている。親友はお金持ちでクリスマスに一緒に日本へ行こうと誘われる。旅費を稼ぐためにバイトを始めるが、ある日偶然「運び屋」の手助けをする。そこから自分も「運び屋」のバイトをして稼ぐようになるが、次第に犯罪の世界から抜け出せなくなる。

彼女がどんどん犯罪の世界にのめりこんでしまうのには、背景に孤独と、アイデンティティーの揺らぎがある。一応香港人だがクラスメイトのように無邪気に香港人として振舞えない。父親は佩佩にやさしいが、いつもこっそり会っている。しかし運び屋の仕事をしている時は、女ボスやその仲間は自分を家族のように扱ってくれるのだ。そりゃ、抜け出せなくなるよね。しかし仲間の一人が佩佩を心配して足を洗うように忠告する。それが親友の彼氏で、次第に彼と仲良くなることで親友とは絶交することになる。

結局、ぎりぎりのところで佩佩は警察に捕まり、普通の高校生の生活に戻る。しかしそこには少し大人になった佩佩の姿があった。

監督は大陸の西北部から香港に移民をして2003年から映画の勉強をするために北京に移っている。つまり監督自身が中国と香港の歴史のど真ん中にいるような人なのだ。そしてこの映画は田壮壮ティエン・チュアンチュアン)監督の協力も得ている。

なので映画の骨格は中国の文芸調。脚本も起承転結があって、教科書に出てきそうな出来映えだ。なので高校生が主役だが、玄人向けの映画だと言える。

 

追記:2020年11月20日から日本でも「THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女」の邦題で一般公開。