「催眠大師(2014)」と「記憶大師(記憶の中の殺人者)(2017)」をネットで見る

名前やロゴタイトル、雰囲気は似ているが、話としては別物。「記憶大師」は2017年東京/沖縄・中国映画週間でも上映された。

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どちらも台湾出身の陳正道(レスト・チェン)が監督している。陳正道と言えば「盛夏光年(花蓮の夏)2006」。この映画以降あっさり大陸に拠点を移し、コンスタントに映画を撮っている。ヒットとは言えないが損もしていない。調べたら「幸福額度(2011)」「101次求婚(101回目のプロポーズ)(2013)」「重返20歳(20歳よ、もう一度)(2015)」など、彼の作品とは知らずに見ていることが多かった。

「催眠大師」は2人芝居的な演出で、莫文蔚(カレン・モク)と徐峥(シュウ・チェン)のやり取りは緊張感があってぞくぞくする。

有名な心理療法士の元に多くの医者から匙を投げられた謎の女が患者としてやってくる。というだけで最後のオチが分かってしまうのだが、そこからまたどんでん返しで一つ謎が明らかになる。メインとなるのはその心理療法士のオフィス。「無限道(インファナル・アフェア)」以降、どの中華系映画も「心理療法といえばこれ」みたいな似たような美術になるのは何故なんだろう?

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スパイラルモチーフはこの映画で繰り返し登場する。

 

「記憶大師」は近未来のお話。記憶を出し入れできる技術が開発され、離婚のために妻との記憶だけ削除したが、逆に妻から削除を取り消さないと離婚に応じないと言われ、復元しようとしたら手違いで殺人犯の記憶を入れられてしまった男の話だ。記憶にまつわる映画はいくつかあるが(「トータル・リコール」とか)、この映画はその記憶の取説があまりにも作り手側の都合がいいようになっていてそこでちょっと興ざめする。

そして美術もちぐはぐ。記憶の出し入れをする場所は超近代的。なのに実際に記憶を取り出す装置はスチームパンク的なレトロ感いっぱい。どう見てもこれでは取り出せないだろう。

主人公が住む部屋は、人気作家が住むに相応しい豪華なマンション。これは現代でもありそう。なのに警察署が何故か60年代の欧米。犯罪現場の家もアメリカのサスペンスドラマに出てきそうな造りだ。そして一番謎だったのが巨大な人頭の彫刻。何かを暗示していると思うのだが、唐突過ぎるし浮いている。

「盛夏光年」は最後のオチに納得いかなかった。「幸福額度」はファンタジーだと思えばリアリティーの無さは目をつぶれる。「101次求婚」は武田鉄矢も登場して「101回目のプロポーズ」の話がずっと続いているんだと思ってうれしかった。しかし何故今更リメイク?と当時ずいぶん大陸人民を当惑させていた。「重返20歳」は写真館のシーンだけ力が入りすぎていたのが個人的にはおもしろかったが全体としては普通。

というまったくの駄作というわけでもないが、いつも何か欠けている陳正道。今後章子怡チャン・ツィイー)主演で華誼兄弟(フアイ・ブラザーズ・メディア)の映画が控えている。毎回役者は実力派を排していた陳正道なのに、ここにきて章子怡か・・・。