こねくり回しすぎなドラマ「猟場(2017)」

ドラマ「琅琊榜(琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~)」の制作会社が「琅琊榜」のすぐ後に製作したドラマ。撮影は2015年だが放送予定のテレビ局と揉めてしまい、実際に放送出来たのは2017年の11月。

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なので「琅琊榜」で出演している俳優もチラホラ。そしてドラマ「潜伏」の俳優も混ざっているのは実は同じ制作会社だから。

これも52話までいらない。半分でいい。それぞれのエピソードはいい内容なのに、無理に引き伸ばしているのがみえみえ。最後の展開もかなり無茶苦茶だし、精神分裂症を安易に用いるのも問題だ。

ヘッドハンティングがテーマなので、出演者の平均年齢は高め。なので他のドラマよりも落ち着いている。大陸のお仕事ドラマは内容云々の前にツッコミどころ満載で前になかなか進めない。20代で既に外資系大企業の部長だったり、オフィスに不釣り合いな服装で登場したり。そして最後は必ずみんな大出世してめでたしめでたしってありえないっつーの。

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渋いところを突いたキャスティング。

但し、それぞれの登場時間はあまり多くない。おそらくギャラ高騰のあおりを受けてゲスト出演扱いにしか出来ないのだろう。孫紅雷とかもっと絡んで欲しかったが。

日本のドラマは過去の話をする時、再現ドラマにしたりして視覚に訴えることが多いが、中国は語りで説明する。長~い長~いセリフをとうとうと役者に語らせる。それでもうまい役者ならまだいいが、若い下手な役者だと見ていられない。あと音楽で盛り上げるのがうまくない。中国ドラマにとって音楽、照明、編集はまだまだ苦手分野だ。

経歴詐称とか、データ持ち出しで金儲けとか、ヘッドハンター達のターゲットの取り合いとか、おもしろい話はいっぱいあるのだから、それをメインにすればよかったのではないか。あと主人公の恋の相手が「とことん男運がないハイスぺ女」という設定も良かったのに。

大陸の現代ドラマはなかなかいい作品に出会えない。

大陸では11月16日から公開「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」

2016年の「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」から約2年経過しているので、前回の内容を何とか思い出しながら2を鑑賞。

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今回の舞台はイギリスとフランス。魔法学校も登場して好きな人にはたまらない内容だと思うが、ハリーポッターシリーズさえ全部まともに見ていないので、個人的にはそこにそれほど感慨は無い。

映像はとてもきれい。衣装メイクもかなり好き。1920年代のヨーロッパの街並みにもうっとり。CGとのつながりも自然だ。但し3Dは動きが速すぎると細かい部分がブレて、何が起こっているのか不鮮明になる。最初の脱走するシーンもぐるんぐるん回っているだけで何がなんだか。何でも3Dにすればいいってものでもない。

今回登場するファンタスティック・ビーストたち。

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日本代表の河童には「こういう解釈もあったか!」と膝を打った。

相変わらずエディ・レッドメインは可愛いし、ジュード・ロウは一瞬渡辺謙かと思ったし、ジョニー・デップは更にコスプレ俳優として磨きがかかっていた。この人は今後も素顔で演技をするつもりはないのだろうか?

予定ではこれから3、4、5と続いていくらしい。次回からはあらすじくらいは復習して見た方が良さそうだ。

中国映画「喊・山(MOUNTAIN CRY)2016」をネットで見る

2015年釜山映画祭のクロージング作品。

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80年代の山西省の田舎が舞台。どれくらい田舎なのかというとこれくらい。

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去年、上海から銀川まで列車に乗って移動した時に山西を通過したが、山奥のすごいところに人家があったりして驚いた。

その山奥の村で爆発事故が起こり、男が死んでしまう。男には口のきけない妻と2人の子供がおり、いたずらで爆弾を仕掛けた男が賠償金の代わりに世話をすることになる。

次第に心を通わせる二人だったが、警察が爆発事故のことをききつけ、男が自首すると決めたことで村中大騒ぎとなる。何故なら自首=殺人確定=即死刑となるからだ。そこで女が取った決断とは。

主演の2人に見覚えがあると思ったら「華麗上班族(香港、華麗なるオフィス・ライフ)」でも恋人を演じた王紫逸(ワン・ズーイー)と郎月婷(ラン・ユエティン)だった。撮影時期で考えると「喊・山」のほうが先かもしれない。「華麗上班族」での都会的な役柄とはうって変わって、この映画ではすっかり田舎者になりきっている。2人のこの演技の振り幅はすごい。

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内容としては中国の田舎を舞台としたよくある映画である。閉塞的なムラ社会の中のピュアな愛。その中にミステリー要素も取り入れて話を盛り上げている。

内容は平凡でも、出演している俳優はベテランが多い。爆破で死んだ男も、ムダにイケメンオッサンな主人公の父親も、中国の映画やドラマでよく見かける人たちだ。

夫が死んだ次の朝、女は山の頂上で琺瑯の洗面器を打ち鳴らす。そしてラストシーンにもう一度このシーンが登場する。これがタイトルの「喊・山」にも繋がっていて(「喊」は叫ぶという意味)、声を出せない彼女が精いっぱい叫んでいるんだと分かる。

こういうオチにはうまい!としか言いようがない。

陳偉霆(ウィリアム・チャン)の良さが詰まっている香港映画「前度(ex)2010」

お金が集まらない、マーケットが小さいと映画が作られにくい環境が続く香港映画だが、それでも意欲的な佳作はたくさんある。特に才能のある若手監督を発掘して撮らせようとする気概が香港映画界全体に感じられる。

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香港で一番有名なエンターテイメントグループの英皇电影(エンペラー・モーション・ピクチャーズ)が製作した映画。主演も英皇所属の阿嬌(鍾欣潼/ジリアン・チョン)と陳偉霆(ウィリアム・チャン)だ。

監督は脚本家としても有名な麦曦茵(ヘイワード・マック)。なので内容がとてもスマート。単なる下世話な若い男女の恋愛のもつれ話になりがちなところを、もう一段高い場所に押し上げている。但し杜汶澤(チャップマン・トー)がプロデューサーなので、さわやかなままでは終わらない。

阿嬌が恋多き女を演じていて、出会う男から次々アプローチされてそのまま付き合っていく。それを嫌味に感じてしまうとこの映画は見続けられない。でも現実に阿嬌みたいな女の子がいたらそりゃモテるだろうさ。

そこにちょっとイケてない前カレ役として陳偉霆が登場する。この眼鏡を掛けただけで一気に平凡な男になれるところが彼の良いところだ。大陸ドラマでの常にドヤ顔の王子様役とは雲泥の差。大陸ドラマで変な演技癖がつく前に、まっとうな作品に戻って欲しいと願うばかりだ。

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このちょっと間の抜けた感じがいい。

騰訊視頻(テンセントビデオ)では広東語バージョンで視聴可能。

「FOREVER Dr.モーガンのNY事件簿(2014)」を騰訊視頻(テンセントビデオ)で見る

全22話のニューヨークを舞台にしたドラマ。人気が出れば永遠とシリーズ化するアメリカドラマだが、ヒットしなかったのか続編は無し。かといって面白くないわけではない。

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おそらく「主人公が不老不死」という設定がそれほど受け入れられなかったせいだと思うが、そこさえ乗り越えれば楽しめる。

200年間ずっと年も取らず何度も生き返るニューヨーク警察の監察医モーガンが、不審な殺人事件を次々と解決していく。

基本一話完結型で過去と現在を行ったり来たりしながら、自身の不老不死の謎にも迫っていく。しかしシリーズ化を見越して作られたせいなのかその謎は最後まで明らかにされない。その辺りで少しモヤモヤが残る。

流石ニューヨークというかロケ地がどこも様になる。事件のテーマも、ジャズ、SM、亡命した元国王、バレエ、ネット犯罪と様々。そこに過去のシーンとして奴隷を運ぶ船が登場したり、オリエント急行が登場したりする。

ドラマに登場する人物たちもキャラが濃い。

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それぞれ一癖も二癖もある。特に好きなのはモーガンのパートナーであるジョーの上司(写真の一番右側)。

モーガンアビゲイルモーガンとエイブの関係性がものすごく素敵だ。

監察医なので毎回解剖された遺体が登場するが、これがリアルで結構グロい。こんな特殊技術メイクも惜しげもなくじゃんじゃん見せられるのもアメリカドラマならではである。

最近、温い気の抜けたコーラみたいな大陸ドラマを多く見たので、こういった良心的な作品を見るとホッとする。

ドラマ「パトリック・メルローズ」が大陸でも愛奇藝で放送中

日本ではBS10スターチャンネルで12月から放送するが、大陸では今、毎週木曜日20時から1話ずつ更新中。

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全5話。有料会員になれば5話全部一度に見られるが、無料でも毎週1話ずつ見られる。

ベネディクト・カンバーバッチが主演で、製作総指揮も担当している。5話しかないが中身が濃い濃い。彼のイカれたヘロイン中毒者の演技がすごい。下手な役者がやると肩の力が入りまくりの大熱演をしてしまいがちだが、流石ベネディクト・カンバーバッチだ。力むことなくきちんと表現している。

第2話は子供時代に話が戻るのでほとんど子役に変わる。でもこの子役もすごい。この2話を見るとパトリックが何故ヤク中のアル中になったのかが理解できる。

それぞれの年代の美術、衣装も見どころのひとつ。

大陸は海外の映画の上映は制約があって厳しいが、ネットでの公開はまだ緩い。こんなヤク中の話も舞台が国内なら速攻アウトだが、海外だからOKになる。

たまに「もしかして単に審査官の趣味で審査が通ってるんじゃないのか?」なんて思う。

 

その後最後まで鑑賞。すごかった。ずっと圧倒されっぱなし。

第1話で主人公のデタラメな生き方に驚かされるが、その後第2話、第3話と見続けると、「実はデタラメなのはこの世界の方なんだ」と気付かされる。そこからあらためて第1話を見直すとそのもがき苦しむ姿に対してもう嫌悪感は無くなっている。

第3話で何とかヘロインを断つが、その後も断酒は出来ないまま。そんなアル中な姿を自分の息子たちに見せてしまい自己嫌悪に陥ったり。

最後は両親の死によって何とか前向きに進めるようになるが、やはり人生は苦しいままだろう。

基本うまくいっていない大人達ばかり登場する。そしてチョイ役でもそれぞれ何かを象徴している。

あー、原作も読みたくなってきた。

周跨ぎでとうとう最終回「如懿伝(如懿伝(にょいでん)~紫禁城に散る宿命の王妃~)」

ネット配信が月曜日から金曜日の1日2話ずつで最終回の87話だけ次の週の月曜日放送となり、まんまと2日間焦らされてしまった。

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mingmei2046.hatenablog.com

 

87話は長かったが見応えはたっぷり。今回の周迅(ジョウ・シュン)は実によかった。目線で心情を表現できるのは素晴らしい。特に中年にさしかかった皇帝が、辺境のお姫様に一目ぼれして「こんなに好きになったのは初めてなんだよ~。皇后なんだから何とかしてくれよ~。」と言われたシーンの「何をぬかしてんだ、この色ボケジジイは」という如懿の目がたまらなかった。皇帝相手に口に出しては言えないからね。

女子向けのドラマなので、男はあまりぱっとしない。

如懿は最初から少し風変わりな女の子として表現されていて、権力闘争には関心がない。しかしヤラれたらしっかりヤリ返す心意気は持っている。

周迅以外にも鄔君梅(ヴィヴィアン・ウー)が若手を抑える要としてしっかり機能していた。台湾でトレンディドラマの出演が多い張鈞甯(チャン・チュンニン)も大陸時代劇に馴染んでいたし、新人の辛芷蕾(シン・ジーレイ)も映画「長江圖(長江 愛の詩)」での高い評価通り、いい演技だった。

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しかし如懿の最大のライバルを演じる李純は完全に役不足。よく見たら映画「心理罪」で頭空っぽなかわいこちゃんを演じていた女優ではないか。成り上がり者の悲哀や欲望が全然足りない。色仕掛けで周りの男に取り入ろうとするにも、色気があまりにも足りない。セリフに頼るんじゃなくて、間の取り方とか声の高低さとか表現方法はいろいろあるだろうに。

このドラマで「おっ」と思ったのは梅のシーンで造花じゃない本物の梅が使われていたこと。もしかしたら造花かもしれないけど、かなり本物っぽい。ドラマ「甄嬛伝(宮廷の諍い女)」と比べて見ると、衣装やセットのこの数年の大陸ドラマの進化が良く分かる。

多分日本でも近いうちに放送するでしょう。

 

追記:予想通り、日本でも2019年5月25日からWOWOWで放送開始。