日本未公開でもDVDは発売するよ「解救吾先生(2015)」

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ネットの片隅がざわざわしていたので、ちょっと見てみたら「誘拐捜査」というタイトルで5月26日に日本語字幕付DVDが発売されるようだ。その前にWOWWOWでも放送されていてこれを見た人の感想とかいろいろあった。

私は2015年の台湾金馬賞の時に観た。しっかり作られた内容で、王千源の演技が素晴らしかった。アンディは今回大スターの役なのでそのまんまwしかし華やかなシーンは無くずっと縛られっぱなし。殆ど望みの無い中でそれでも生きて戻ろうとする姿勢は感動する。

実際にあった誘拐事件が元ネタ。こういった罪を犯す人間は悪なんだろうが、虚無感もある。王千源演じる主犯格にしても頭はいいし、親孝行だし、決して心からの極悪人ではないはずなのに、どこかで道を踏み外して犯罪者になってしまった。そういった背景が王千源の演技を通して伝わってくるので、私はこの犯人たちを憎むことが出来ない。

大陸でも駄作だと失笑される超大作が海外ですぐに公開され、こういった佳作が一般公開されないというのは非常に残念だ。しかし例えば東京で単館公開したとしても元も取れないだろう。ならばネットで有料で流すのが一番いいと思うが。DVDかさばるしね。

絶対お薦め!台湾ドラマ「麻酔風暴(2015)」

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常々大陸ドラマに対して「話が長ければ長いほどいいってもんじゃないだろう」と口を酸っぱくして言ってきたが、まさにお手本となるような台湾ドラマがこれだ。

私が台湾にいる時に既に話題になっていたが6話しかないので見そびれたままだった。大陸でも騰訊(テンセント)動画サイト独占放送のため、無料で見られるのは第1話だけ。後は有料の会員にならないと見られないのでまとめて見られるまでずっと我慢していた。

そしてとうとう20元(安いけどすでに毎月愛奇芸に会費を払っている身なので今まで渋っていた)払って全部観た。作りが凝っていて見ごたえのある医療ドラマだった。無料の第1話だけだとほんのさわり程度で冷静に観ることが出来たが、回数を重ねるごとに真相が露わになって、どんでん返しの繰り返しに興奮してくる。まさかあのチャラい保険セールスマンが最後こうなるとは!そして結末にも大納得。

俳優のレベルがかなり高い。主人公の2人以外でも院長、副院長、麻酔科の看護師までキャラが確立していて手を抜いていない。私は院長がかなり好きなんだけどな。

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せんせい!(と教え子たちから日本語で呼ばれている)

日本語字幕付きはまだ出ていないっぽいが、是非是非作って欲しい。今年「麻酔風暴2(全13話)」も製作されることだし、合わせてどこかの会社で出して欲しい。

 

その後2も制作された。うまく主役を世代交代させた好例だと思う。

mingmei2046.hatenablog.com

關錦鵬( スタンリー・クァン)プロデュース×阮經天(イーサン・ルアン)映画2本立て

最近イーサンは何をしているのかと最近の映画をネットで見てみた。

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 紐約紐約(New York New York)2016年4月公開

90年代の上海とニューヨークの設定だが、もっと昔のレトロな雰囲気がする。実際の90年代の上海なんてこんなもんじゃないだろうと思うが、服装設定に張叔平(ウィリアム・チョン)、美術顧問に「一代宗師(グランド・マスター)」を手掛けた 邱偉明(アルフレッド・ヤウ)が担当しているので、とてもロマンティックで上品な仕上がり。

移民詐欺にあう話だが主人公の2人がどちらもワケアリなクールな人間なので、あまり話として盛り上がるところがない。そんな抑えた演出も好きだが、今の大陸ご時世に合っていないらしく、興行成績はまったく振るわなかった。

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ホテルマン姿のイーサンが目の保養になる。ものすごく繊細な役どころで、それを愁いを秘めた演技で表現している。大人の男子に対して言うのはどうかとも思うが、やっぱりかわいいものはかわいい

「謊言西西里(Begin Again)」2016年8月公開

西西里はイタリアシチリア島のこと。撮影は2015年の1月だが、当時まさか大陸の韓流がこれほど急速にシボむとは夢にも思っていなかったに違いない。怖い怖い。

監督は台湾の林育賢。と言えばスポ根と見せかけて実はチンピラ映画だった「翻滚吧!阿信 (2011)」だ。

この映画でも、イタリアロケ、韓国人スター、駆け出しのインタリアコーディネーターが着れるはずのないオサレ衣装の数々、レトロな上海のアパートとオシャレ要素いっぱいなのにオシャレ映画になっていないところが素敵だ。

イーサンは友情出演なので出番はそれほど多くない。それでも過去にワケアリ気な雰囲気は十分すぎるほど醸し出している。

早いうちから「はいはい、不治の病を隠すために突然イタリアに行くなんて言うのね」とネタバレしているが、その後の展開にヒネリが入っていて最後までひっぱっていってくれる。細かいエピソードが積み重なって、最後クマの着ぐるみと抱き合うシーンとか素直にジーンときた。だってものすごくゼイゼイ言ってるからw

敢えていうなら会社の同僚をあそこまで美男美女で揃えないほうがいい。最低2人は整形していそう。もしこれが台湾映画だったらもっと個性的で印象的な俳優を集めるだろう。

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2人が住む部屋がかわいい。パッチワークのカーテン欲しい。

そして周冬雨がますます若い頃の周迅(ジョウ・シュン)みたいになってきた。薄い顔に似合わずギラギラガツガツしているというのが最近分かってきた。確かに演技力は飛び抜けている。今回も涙のタイミングが超絶妙。

そして最近何となくついていないイーサンだが、スターの輝きも演技も決して衰えてはいない。アンニュイな役が続いたので、このあたりでハジけた役も見てみたい。

モヤモヤするサスペンス映画「那年夏天你去了哪里(あの娘が消えた夏)2016」

これもネットで鑑賞。

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まず宣伝用のポスターがどれもひどい。この映画の世界観がまったく伝わってこない。

見終わった後モヤモヤするので、調べたら監督は陳奕迅(イーソン・チャン)主演映画「贖命(2010)」の監督周隼(クリス・チョウ)だった。「贖命」と同じ種類のモヤモヤ感で納得出来た。

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バイオレンスやホラーには独自の美学が必要だと思うが、周隼にはそれがない。そして思い切りが悪いので、残忍なシーンはどれも中途半端だ。それで「やりたいことは分かるんだけど・・・もうちょっとやりようが・・・」でモヤモヤしてしまうのだ。

脚本家としてのキャリアが長いので、話は決して悪くない。撮り方とCGの使い方が良くない。飛び降りシーンのCGも効果音も軽い軽い。超高層ビルから落ちてあれは無いと思う。ハエが目に止まるシーンももうちょっとハエに動きつけたらいいのに。というかもうちょっとハエとの印象的なエピソードが欲しい。しかし相手がハエなだけになあーーーといちいちモヤモヤモードに入ってしまうのが嫌だ。

友情出演なのに胡歌が誘拐犯の1人という重要な役を演じるのも不思議。寧櫻役は台湾映画「六弄珈琲館」でも主役を務めた顏卓靈(チェリー・ガン)。「六弄珈琲館」でもそうだったが、もっとキャラを掘り下げて欲しかった。誘拐犯と家族の間を揺れ動くおいしい役だと思うのだが。

好きな大陸女優の1人でもある宋佳は、がんばって怖がっていたと思う。宋佳(ソン・ジャア)は派手さはないけど、「気が付いたら10年連続連ドラ出演していた俳優」みたいなかんじが好き。

大陸ではサスペンス&ホラー映画が増えてきてはいるが、佳作にはまだ出会えず。幽霊全否定の当局に対してがんばっているとは思うけど。

 

追記:Netflixで視聴可能。 

台北電影節で「薔薇の葬列(1969)」上映

今年の台北電影節は6月29日から7月15日まで。詳しくはここから。

2017 台北電影節

まだ上映スケジュールは未定だが、小出しで最新ニュースを知ることが出来る。それで知ったのが「薔薇の葬列」の上映だ。

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大昔、東京で観た。20代の地方出身女子を「新宿ってすげー!」とうならせるには十分すぎる映画だ。

今台湾で同性結婚を法的に認めるかどうか議論をしているが、反対派の意見も多くすんなりとはいかなさそう。個人的には何故反対するのか分からないぐらい同性結婚には賛成だ。台北は特に女性のカップルが多いような気がする。手をつないで街を歩く姿とか微笑ましい。

以前香港で「美輪明宏ドキュメンタリー ~黒蜥蜴を探して~」を上映した時、私も香港で観た。罵声と賞賛を同時に浴びながらもまっすぐ前だけを見つめる美輪様の神々しいお姿に触れ伏すのみである。

今年の台北電影節はがっつり見に行けそうなので今から楽しみ。

「西遊記之孫悟空三打白骨精(西遊記 孫悟空 vs 白骨夫人)2016」をネットで見る

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日本でも2016年8月6日から公開された。早っ!しかし評判はあまりよろしくないようで。「中国で大ヒット!」に騙されてはいけない。

西遊記」関連の作品は毎年のように製作されて「いやもうお腹いっぱいだから‼」なので見るつもりはなかった。しかし鞏俐(コン・リー)姐さんの評判があまりにも良くてネットで見たくなった。

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白バージョン&黒バージョン。キャラ設定と衣装デザインは奚仲文。

鞏俐がオファーをOKしたのにも驚いたが、その高い演技力で更に驚かされた。実際この映画は鞏俐でもっているようなものだ。特に81歳の老婆になった時の目線だけで心情を演じきるシーンとかもう痺れまくり。コスチュームも見どころで着せ替え人形のようだ。

どうしてこんなにも多くの「西遊記」映画が製作されるのか不思議だが、中国人にとっては特別な作品らしい。多くの俳優が一生に一度は孫悟空を演じたいと思っている。でも80年代のTVドラマ「西遊記」の影響が強すぎてみんな六小齢童さんを超えるに至っていない。

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この孫悟空を演じた人。サルの真似がうますぎ。そしてこの人以降の俳優はみんなこの人のモノマネにしか見えないw

この映画のテーマソングも実はこのTVドラマのテーマソングと同じだ。流石に現代的にアレンジはしているが、ピョコーンピョコーンという電子音は変えていない。

つまりそういう昔からの歴史があっての西遊記映画なので、その歴史を知らない人が見てもそりゃピンとこないだろう。逆に日本で「三蔵法師は女優が演じるのが定番」なんていうのは中国的に「けしからん!」のだ。

でも、個人的にはもうほんとにお腹いっぱい・・・。

でも夏にポンちゃん西遊記映画が公開されるんだよね。

見るか・・・。

 

 

 

彭順(オキサイド・パン)監督映画「宅女偵探桂香(2015)」

ネットで鑑賞。彭順が好きなので。

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まず断っておくと、桂香はオタクではない。腐女子でもない。バイクを乗りこなして不法侵入も厭わない普通の女の子。多分主演の王珞丹の中に「病み要素」が無いからだろう。

覗きを発端に殺人事件が発覚する。しかし謎解き部分が弱すぎた。ホラー+ミステリーでは面白い作品を撮ってきた彭順だが、ホラー部分が無いと強弱がつけづらいのか、あまり盛り上がらなかった。しかも今回仔仔(周渝民・ヴィック・チョウ)もスカした刑事なので、趙又廷(マーク・チャオ)のように熱血刑事として叫んだりもしない。

彭順映画の一番の見どころはやっぱり美術だろう。

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リンゴレッド×ピンク×白を基調とした桂香の部屋。色を統一しているので、ごちゃごちゃしていてもおしゃれ。

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ライフルスコープでの覗きが趣味なおばあちゃんの部屋。剥製がいっぱい。

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怪しい整形外科医の部屋も古いアメリカ映画っぽい。

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無国籍な風景。見ながらずっとロケ地を推測していた。派手なカーチェイスあたりで「もしかして台北?」と思ったが確信できず。

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サンフランシスコか?!と軽めにツッコミ。エンディングロールでは台北市新北市がクレジットされていた。でも極力中華な場所を避けているので言われないと分からない。

そしてまたまた地味すぎて気付かないそっくりさん発見。

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間野田徹ではなく、許時豪という台湾の俳優。チョイ役で出演してもすぐ分かる。

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ドラマ「BORDER」ガーファンクル 役は良かったなあ。

あと気になったのは王珞丹のスタントが6人もいること。そのうちアクションシーンのスタントは1人だけ。え、じゃあ後姿とかはもしかして本人ではないとか?最近ではAngelababy主演ドラマでスタントがAngelababyのお面を被って演じていたのが叩かれたが、最近こいうことが多いかも。

それと王珞丹専属のヘアーさん&メイクさん&スタイリストさんがいて更に専用の通訳もいた。道理で衣装もメイクも垢ぬけていたわけだ。

中国映画だけど極力大陸色は排除している。俳優も王珞丹以外は香港台湾で固めている。

大陸色をあまり出さない(出したくない?)中国映画も最近増えたかも。