今、中国人が何を悩んでいるのかが分かるTV番組「四大名助」

中国でおもしろいテレビ番組を次々と制作している上海の東方衛生テレビ局。

最近よく見ているのは悩み相談番組「四大名助」。4人が司会となって視聴者の悩みに応えるもの。

まず驚くのはそのスタジオの広さ。観客は200人で最後にこの観客が相談者の悩みにジャッジを下す。

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コンサートホールみたいだ。

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ステージでは寛いだ雰囲気で悩みを訊く。

相談の内容は万国共通。夫婦間の性格の不一致とか親子間のすれ違いとか。

4人の受け答えが絶妙。相談者へのイジリもうまい。特に孟非さん(禿げの人ね)の畳みかける説法が素晴らしい。相談者が訴える相手もスタジオに呼んでいてお互いの言い分を公平に訊いている。ときにほぼ完全な親子の断絶みたいなヘビーな内容もあるが、それもきちんと受け止めてくれる。

この中でしみじみ思うのは、「中国人てほんとお金持ちになったなあ」ということ。

よく知らない友人たちに総額30万元(約480万日本円)貸しちゃった夫とか

5歳の子供を1週間に9つの習い事に行かせている夫とか

一回の買い物に50着以上服を買う母親とか

ネット中継している女性(動画サイトで自分の日常生活を生で流すのが流行っていて、ケータイを通じてお金を相手に送れる)に毎月ほぼ給料の全額を貢いでいる彼氏とか

東方衛生テレビは全国で見られるので、相談者も全国各地からやって来る。もちろん前もって選考しているから、極端な人は出てこない。中国の中流階級と言っていい。

今はシーズン4だがネットで過去の放送も見られる。テレビでは毎週木曜夜放送。

 

 

 

李安監督映画「BILLY LYNN’S LONG HALFTIME WALK(ビリー・リンの永遠の一日)」を観る

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日本では2017年2月11日から公開予定。

最近猫パンチ並みの映画が多かったので、こういうボディブローでじわじわくる映画は久しぶりだ。

深い。無駄な説明は一切なく、かといって足りないわけではない。

私はアメリカという国があまり好きではない。アメリカのマネをしたところでアメリカみたいになってしまうだけからやめとけと心から思う人間である。

この映画はアメリカのダメっぷりが上手に描かれている映画だと思う。しかし撮っているのは李安監督なので批判的な主張ではなく、緻密な観察になっている。

その洞察力と構築力に脱帽である。やっぱすげー。

いろんな人がいろんな意見を軍人であるビリー達に披露するが、それがそのままイラク侵攻に対するアメリカの意見なんだろう。しかしビリー達は軍人なので、政治だとか、意義だとか、観念とかには関係なく任務を遂行するだけだ。その辺りの世間と自分との間にあるズレに戸惑いを感じる心の揺れがずっと続く。

とにかく情報量が多すぎて1日経った今でも全部消化しきれていない。ほんのちょっとしか登場しないイベントの演出家でさえ「『情熱大陸』に出てきそうなやり手敏腕女性演出家」みたいな物語がつい脳内で発生してしまうせいだ。ちょい役からしてそうなので、常にケータイを手放せない映画プロデューサーだとかオロオロするだけのへなちょこ担当とか、口達者な隊長とか頭の中はいろいろたいへんなのである。

今回4Dで観たのだが、はっきりいって無駄なサービスだった。椅子が動いたり風を吹かせなくても映像からしっかり想像できるのだから逆に邪魔。

「ジェラシックパーク」みたいな「キャー、恐竜が近づいてくるー、逃げろー」みたいな映画には有効だろうと思うが、李安はやめて。

 

 

 

突き抜けない青春映画「我的青春期(ぼくの桃色の夢)2015」

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2015年の東京国際映画祭で上映。

「青春初恋映画」は毎年たくさん制作されて、過去の名作も多すぎて若手監督が挑戦するのは少しリスクがあると思うが、それでも撮りたくなってしまうのは青春のなせる業なのか。

舞台は河北省の田舎町。80年後(80年代生まれの人)の青春を描いている。しかしエピソードが超個人的過ぎて

「どさくさに紛れて己の伝奇を美化して映画にした」

としか思えなかった。もともと大陸の青春映画は感情移入がしにくい。例え同じ中国人でも経済格差と地域格差が相まって、共感できる共通項がとても少ないのだ。

中心の初恋の話にしても、何故この女の子が主人公を好きになったのか全然分からない。更に分からないのは、その主人公をフッて別の男と付き合うことだ。相手は全然かっこいいわけでもない田舎でよく見かけるような男なのに。

若い頃は非モテ系だったであろう男性監督の作品にはよく「謎の美少女」とか「ミステリアスな美女」とか登場するが、ただ単に女性が描けないだけだ。岩井俊二のようにモテ系で尚且つ心に乙女が住んでいるような男性監督はまた違うと思うが。

その後この女の子は迷走し、最後映画監督になった主人公にいいよるが、これって単なるダメンズ好きだろう。これでは中身が空っぽのかわいこちゃんで終わりだ。主人公が分かれた後も何年も片思いするのはその容姿のせいだけなのか?(この主人公なら、そうかもしれない・・・)

それでも映画のラスト、これも完全にファンタジーに現実逃避しているんだけど、その逃げ切り方が潔かったので、最後の最後で全体の評価がぐっと上がってしまった。

きれいな絵が多いし(カメラマンさんのおかげ)、駄作というわけでもない。もう少し「那些年,我們一起追的女孩(あの頃、君を追いかけた)」的なお馬鹿で性的な内容もあるのかと思ったが、大陸では無理なのかな。

あぁ、香港がたいへんなことに!「ドクター・ストレンジ」

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アメコミにもマーベルにも全く興味のない人間でも、観ることになるのがアメリカンメジャー大作の怖いところである。当然おごりで。

それでも主演がベネディクト・カンバーバッチで、ヒール役がマッツ・ミケルセンというのには心惹かれた。マッツ・ミケルセンはドラマ「ハンニバル」がハマり過ぎて超怖かったが、今回はそれほどでもない。ディズニーだから。

前半の鼻持ちならない天才脳外科医役は、いかにもベネディクト・カンバーバッチですごくかっこ良かった。

それがマントと髭を加えると一気にアメコミ化に。ああ~~。

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ニューヨークの街が立体万華鏡のようにパタパタと回転する様は流石に見応えがあった。「トランスフォーマー」的「これ、こういう風には絶対収納できんだろう」みたいなツッコミがないようにCG処理もされていたし。

ディズニーでアメコミだからとはいえ、今回の「絶対悪」の設定が曖昧すぎ。これでは戦い甲斐が無いだろうに。あと細か~い笑い(主にマント関連の)にも少しイラっとする。笑いの沸点が低い人はこれで大爆笑するんだろうな。

地球を守る組織の支部がロンドン、ニューヨーク、香港にあるが、何故香港www

その香港も湾仔と廟街をMIXさせたようなセットで、引きの画面でも有名な建物がちっとも入り込まないので、香港感はあまり無い。エンディングロールにも香港ユニットの部分がないので全部セットで撮影したのだと分かる。

エンディングロールの途中と最後にも映像が流れて続編を匂わせている。

でもベネディクト・カンバーバッチ×マッツ・ミケルセンなら、アメコミじゃない渋い別の映画で観てみたいよ。

 日本では2017年1月27日から公開予定。

 

「月蚀(月食)(1999)」「图雅的婚事(トゥヤーの結婚)(2007)」を観る

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どちらも王全安監督の作品。「月蚀」がデビュー作で、この時はまだ見ている方が頬を赤らめるような青臭さがいっぱい(個人的にそういうのも嫌いじゃないけど)だが、「トゥヤーの結婚」ではそれが洗練されている。

主演の余男も「月蚀」がデビュー作。まだ北京電影学院の生徒だった時に監督にスカウトされた。デビュー作で1人二役を見事に演じ分けている。その存在感が圧倒的で、共演の男たちの影の薄いことといったらない。

その存在感が「トゥヤーの結婚」にも存分に発揮されている。トゥヤーモテモテ。遠方から次々と求婚する男がやってくる。

夫が事故で足を怪我してからトゥヤーが一家の大黒柱になって切り盛りしているが、無理がたたって自分の体にも支障が出てしまう。それで家族を守るために夫込みで再婚先を探す。もちろんそんな条件はなかなか受け入れてもらえない。

家族を守るために自分が犠牲になる話だが、石油王が無理矢理押し倒そうとした時きっぱりと拒否したように潔さが感じられて悲惨さはあまり感じられない。

それでもいざ結婚式を挙げる時に小屋に閉じこもって号泣してしまう。元夫と求婚してきた隣人は式で大酒くらって酔っぱらって暴れているし、新しい夫は親のいいなりでいかにも頼りない。まだ小さい息子は外で取っ組み合いのけんかをしている。

ダメ男のダメさ加減に容赦がないのは王全安監督の特色なのかもしれない。そんな監督も買春容疑で捕まって、刑期を終えたら張雨綺(キティ・チャン)と離婚してしまった。

中国では稀有な存在の余男。日本で例えていうなら樹木希林

 

中国映画「盲井」(2003)「盲山」(2007)を見る

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以前DVDを買ったが、やっすい海賊版だったのでぶつぶつ途切れるわフリーズするわでちゃんと観られていなかった。今はネットで観られるから便利だ。あんまり古い作品だと流石に画像は粗いが。

どちらも中国農村部の暗部をテーマにしている。海外での評価が高い作品だが、国内では「盲井」は上映禁止だし、「盲山」は当局のチェックが入って内容を変更して上映された。

2000年代の作品なのに70年代の空気がする。時代設定が90年代の西北部で、この「90年代」という設定は中国の暗部に触れる作品によく出てくる。爾冬昇(イー・トンシン)監督の「新宿事件(新宿インシデント)」も不法入国者の話なので「90年代」という設定にして検閲をクリアしようとしたが,やっぱりダメで中国国内で上映できなかったという逸話がある。つまり「90年代=昔の出来事」という意味で当局をけん制する言葉なのだ。

そんなこと言っても、子供女性の未解決誘拐事件が後を絶たないのはみんな知っているし、死んだ人に結婚相手をあてがう「冥婚」のために死人が今でも売買されているのも珍しくなかったりする。

エキストラ役者の希望の星王宝強はこの「盲井」に出演し、それが、馮小剛(フォン・シャオガン)監督の目に留まり、「天下無賊(イノセントワールド天下無賊)」に抜擢されたのは有名。まさにシンデレラボーイ。

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確かにハマっている。素人が出演しているみたいだw

ただ、この映画は主役のオッサン2人が映画の世界をがっちり固めていたからというのもある。映画「Hello!樹先生」も観たけど、ピンで主役を張るより、自分より有名な人の横にピタッと張り付いてかき回すみたいな役のほうが合っていると思う。あらためて「こいつすごい」と見直したのはTVドラマ「暗算」の中で、超人的な聴力で暗号を見破る変人を演じた時。今後の活躍が楽しみな俳優だ。

「盲山」は同じ女性としてつらい。でも主人公は絶望せずに何度も逃亡を図る。歪んだ儒教観念が事件の背景になっている。でもあの子供はきっと雑貨店のオヤジの子供だと思うよ。

主人公が最初と最後で顔つきが全然違う。信念が滲み出ている。これも内容がかなり当局によって変えられているので、オリジナルが観たい。私が観た国内版は結局は最後めでたしめでたし中国の公安はがんばってますよみたいなメッセージでおしまいだが、監督の言いたいことはこんなことではないだろう。

 

 

悪夢を見そうな胡巴グッズいろいろ

友人からこんな写真をもらった。

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まじこえーよ!新手のお化け屋敷?

中国で大ヒットした映画「捉妖記」のイベントの写真なのかな?何故今頃・・・。

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私も映画を観たが、美術(種田陽平)と衣装(奚仲文)はほのぼのファンタジーでいい感じなのに、妖怪のぬめっとした質感が気持ち悪かった。しかしキャラ文化が日本ほど浸透していない中国ではこの真ん中のチビ妖怪「胡巴」が人気者となった。

そうなるとバッタもん含めいろいろグッズが作られたが。

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これを日本の子供にあげたら泣くと思う。こういう作り物は香港や台湾は大得意なんだが。

それでも2次元の世界では必死にかわいくしようとしているみたい。

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元ネタからここまで妄想できるって逆にすごいかも。