名作はいつ見ても名作「蜘蛛女のキス(1985)」

最近久々に原作を読み返したばかりで、そこに映画の再上映のニュース。これは観なくてはと京都シネマまで参上した。

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日本での初上映の時、私はまだおぼこい田舎の女の子だったので観ていない。ただ当時吉田秋生がイラストでこの映画を絶賛していたのを今でも覚えている。1980年代はエイズが最初に流行して、エイズ=同性愛者たちの病気だという偏見に満ちていた時代である。そんな同性愛者たちに対して風当たりの強かった時に製作されたこの映画は、世界中で高い評価を得た。

原作は会話だけで進められ、場所もほぼ刑務所の中なので舞台のほうが向いている。そこをこの映画はうまい具合に映像化に成功している。

とにかくモリ―ナの愛情を追い求める姿がせつない。そしてそれはいつも報われない。今でもそうだが、ハッピーエンドで終わる同性愛映画はまず無い。それが決まりだとでもいうように。この映画でもモリ―ナは愛するヴァレンティンのために命を懸けて死んでしまう。

そこで疑問が残る。はたしてヴァレンティンはモリーナを愛していたのだろうか?ヴァレンティンがいつも思い浮かべるのはかつての恋人マルタだ。外にいる仲間と連絡を取るためにモリーナの好意を利用したのか?もしかしたらヴァレンティンもモリーナに対して感謝と好意を持っていたかもしれない。しかしガチストレートな男が素直にそれを受け入れるとは考え難い。そんなこんなで映画のラストはマルタとモリーナが一体化したようなかんじになったのかなと思った。刑務所から出られないヴァレンティンにとって愛というのはすべて夢か幻想でしかない。

京都シネマさんは上映前の注意はスタッフさんが直接説明をする。そこで「上映の時は帽子をお脱ぎください」という一文が加えられた。

「普通映画が始まったら脱ぐでしょ⁈常識として」と思ったが、脱がない客がいるからこうやって説明しているのだろう。

前に「前の席を蹴るのをやめましょう」という注意が出来た時も「そこまで言うか⁈」とのけぞったが、今ではそれがどの映画館に行っても聞かされるようになった。

京都シネマさんに来るようなお客でこうなら、輩が多そうな他の映画館は推して知るべしである。

「2時間じっとして鑑賞するなんてもう無理!」みたいな風潮になっていることは確実だな。