穏やかな風景の中に漂う深い悲しみ「流水落花」

2022年の香港亞洲電影節のクロージング作品で、この時が世界初上映。今年の3月2日から香港で一般公開が始まった。

里親として様々な子供たちと暮らす夫婦の物語。

ロケ地は新界の錦田(ガムティン)。映画の中で錦田河に架かる橋が何度も登場するが、実はとても重要な意味を含んでいる。

監督の賈勝楓(カー・シンフォン)は元朗(ユンロン)出身なので、錦田も知り尽くしている。そこに撮影監督の司徒一雷が加わって、映画「幻愛」のように今回も香港の郊外を美しく見せてくれた。

賈勝楓監督はこれが長編処女作の新人なのだが、スタッフがベテラン揃いでバックアップ体制がすごい。独特な編集は張叔平(ウィリアム・チョン)だし、衣装デザインは文念中(マン・リムチョン)だ。主演の鄭秀文(サミー・チェン)もノーギャラで出演している。

おまけだけど、鄭秀文演じる天美がいつも通っている小さな雑貨店の店長に、MIRRORの名物マネージャー花姐が出演している。上映後のQ&Aで「花姐が出演した由来は?」という質問に、「役柄にぴったりだから」という答えだったw

映画の最後のほうに、今まで一緒に暮らしてきた子供たちが次々と天美に会いに来るシーンがあって、そこだけでもう胸にジーンと来るものがあるが、そこから夫が犬を連れて橋を渡るシーンにつながって、その流れだけで何があったのか表現されているのがすごいと思う。

これはドラマにしてじっくり見せてもいい作品。それぐらい脚本もいい。