大阪アジアン映画祭で「アサンディミッタ」を観る

人生初のスリランカ映画。一筋縄ではいかない摩訶不思議な映画。

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アサンディミッタは2度離婚歴のある2児の母親だ。ある日バスでイケメンヴィッキーと出会い、そのまま同棲する。しかしヴィッキーは時々老人に変わる時がある。もともとダメ男のヴィッキーはアサンディミッタと共謀して別の女を騙そうとその女の家に行くが、揉めて3人とも殺してしまう。そしてヴィッキーはそのまま逃亡し、アサンディミッタは捕まり絞首台に送り出される。

ヴィッキーが老人に変わるのは人間の中の黒い部分の代表なのは分かる。実はヴィッキーは外見こそイケメンだが、その実殺人も厭わない悪徳詐欺師なのだった。

監督はスリランカでは有名な監督。銀行員と掛け持ちしているおそらくエリート。そんな頭のいい人が観念的に撮った映画なので、「?」がいっぱい。

スリランカでも多くの映画を製作しているが、この映画では照明がイマイチ。冒頭の夜の屋内のシーンは何故か家の中より窓の外の方が明るい。なのでところどころ顔に影が出来て表情がよく見えなかったりする。これはスタジオ内の撮影のはずなんだけどな。

撮影自体もそのまま撮っている部分があってもう少し工夫が欲しい。ただそれもスリランカの映画がこれから国際的に発展していけば、解決する問題ではある。

主演女優のニルミニ・シゲラさんは映画祭の期間中いろいろな場所で出会えた。精力的に他の映画をたくさん見ているようだ。銀行の仕事が忙しくて来日出来なかった監督の分を補うように動いていて、薬師真珠賞まで受賞したのも納得だ。

大阪アジアン映画祭で「Sad Beauty」を観る

女優とその親友との友情物語。

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仲の良い2人が誤ってDV男を殺してしまう。死体の処理に困った2人がおじさんの家を訪ねて相談にのってもらう。その解決策としてワニに食べさせるというのもすごい話だ。

その帰り2人は大げんかをして別れるが、1年後ガンが末期まで進行した友人を再び訪ねてようやく仲直りする。

基本となるのは仲の良かった友人を亡くした悲しみなのだが、そこから何故殺人死体遺棄事件にまで発展させたのかが少し謎。監督はタイの有名女優ボンコット・ベンジャロンクン。多分友情だけだと話として弱いと思ったのだろうか。でもワニに食べられるシーンはかなりグロで、そっちに話の重点が持っていかれてしまう。

そういった構成としてアンバランスなところはあるが、クラブで踊るシーンやクスリでラリるシーンはかなり上手に撮ってある。

タイの今を知ることが出来る映画の1つ。

大阪アジアン映画祭で「過春天(THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女)」を観る

香港とシンセンとを運び屋として行き来する高校生の物語。「過春天」はその運び屋の隠語でボーダーを渡ること。

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英語のタイトルは「The crossing」。ボーダーを越え、運び屋という犯罪の世界を越え、少女から大人へ越える物語だ。

シンセンで母親と一緒に暮らしている佩佩(ペイペイ)の父親は香港に住んでいて別の家族がいる。佩佩は香港で生まれた香港市民なので、毎日ボーダーを越えて香港の高校に通っている。親友はお金持ちでクリスマスに一緒に日本へ行こうと誘われる。旅費を稼ぐためにバイトを始めるが、ある日偶然「運び屋」の手助けをする。そこから自分も「運び屋」のバイトをして稼ぐようになるが、次第に犯罪の世界から抜け出せなくなる。

彼女がどんどん犯罪の世界にのめりこんでしまうのには、背景に孤独と、アイデンティティーの揺らぎがある。一応香港人だがクラスメイトのように無邪気に香港人として振舞えない。父親は佩佩にやさしいが、いつもこっそり会っている。しかし運び屋の仕事をしている時は、女ボスやその仲間は自分を家族のように扱ってくれるのだ。そりゃ、抜け出せなくなるよね。しかし仲間の一人が佩佩を心配して足を洗うように忠告する。それが親友の彼氏で、次第に彼と仲良くなることで親友とは絶交することになる。

結局、ぎりぎりのところで佩佩は警察に捕まり、普通の高校生の生活に戻る。しかしそこには少し大人になった佩佩の姿があった。

監督は大陸の西北部から香港に移民をして2003年から映画の勉強をするために北京に移っている。つまり監督自身が中国と香港の歴史のど真ん中にいるような人なのだ。そしてこの映画は田壮壮ティエン・チュアンチュアン)監督の協力も得ている。

なので映画の骨格は中国の文芸調。脚本も起承転結があって、教科書に出てきそうな出来映えだ。なので高校生が主役だが、玄人向けの映画だと言える。

 

追記:2020年11月20日から日本でも「THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女」の邦題で一般公開。

大阪アジアン映画祭で「淪落人(みじめな人/淪落の人)」を観る

黄秋生(アンソニー・ウォン)のうまさが分かる香港映画。

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黄秋生と言えば、香港映画を代表する実力派俳優のはずなのに、最近も「失眠」というキワモノ映画に主演したりしてよく分からない人である。

この映画は万人受けするいいお話だ。なので大阪アジアン映画祭でも「観客賞」に選ばれた。

フィリピン人メイドと半身不随の男との心温まるファンタジー。これを撮ったのは新人の陳小娟(オリバー・チャン)監督。しかし陳果(フルーツ・チャン)がプロデューサーとしてしっかりサポートしているに違いない。劇中でもレストランのオヤジ役としてちょびっと登場している。

監督を交えてのQ&Aでは、撮影現場では黄秋生がアドリブで粗口(広東語スラング)をガンガンしゃべるので、危うく三級片(18禁)になりそうだったと語ってくれた。

主役のフィリピン人女優も映画初主演ながら好演している。その友達役のフィリピン人もそれぞれいい味出していた。

そんなメイド社会も最近はマレーシア系、インドネシア系が増えて更に国際化している。それが外国人労働者が増えた現在の日本の姿とダブる。共存は難しくても、そう出来るように努力することが大事だ。

追記:香港では2018年11月に上映して2019年4月11日から再び一般上映する予定。台湾では4月19日から一般上映する予定。

追記2:日本では2020年2月1日から新宿武蔵野館その他で一般公開が決定。これに伴い黄秋生も来日。

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相変わらずカッコいいオヤジ。

大阪アジアン映画祭で香港映画「非分熟女」を観る

「大藍湖(Big Blue Lake)」の女性監督ということで期待していたが、英皇と阿saのガードはあまりにも固かった。

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監督がこだわったのは、「既婚の処女」が「外部の男」によって自分を解放するという物語だ。なので相手役は香港の俳優ではなく台湾の呉慷仁(ウー・カンレン)が相応しい。

しかし阿saで官能映画を撮るのは所詮無理だ。今回も例にもれず乳尻NG。しかも相手が触れるのもダメ。何でずっと服着たままなんだ?そこから見える婆臭いモカ茶のブラジャーがまた興ざめ。カラミがないポールダンスのシーンでは無理矢理寄せた胸の谷間をチラ見せしているが、カマトトぶったダンスにセクシーの要素は全くない。

その分呉慷仁は形のいいお尻を惜し気も無く出して健闘している。ビッチな八百屋さん(笑)とのセックスシーンも手を抜いていない。

セックスシーンはそのまま撮っても滑稽にしか映らないのだから、もう少し見せ方を工夫して欲しかった。香港映画でもセックスをテーマにした映画はあるが、直接すぎたり、隠しすぎたりでなかなかいいのは無い。

「性の解放」=「自己の解放」というのも一種のファンタジーだと思うが、なかなか根強い信仰がある。

大阪アジアン映画祭でインドネシア映画「アルナとその好物」を観る

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ポスター通りのインドネシア各地の美味しい料理と恋の行方を追う楽しい映画だ。

アルナはかつての同僚で片思いの相手と鳥インフルエンザの現地調査に行くことになるが、そこに奥手のシェフと、不倫ばかりしてしまう美食研究家が参加することに。4人で各地を廻っていくが、調査は意外な結果に辿り着く。

料理は高級なものではなく、庶民が日常口にするものばかりでどれもおいしそう。

4人のファッションも街の風景も都会的で垢抜けていて、無理した背伸び感も無い。アジアの映画はどんどんおしゃれになっている。唯一可笑しかったのは船上パーティのシーン。ビデオで流れるダンスと音楽はかなりシュールだ。

 話は4人の恋がうまくいくかどうかに重点がおかれているが、結局たいした盛り上がりも無くすんなりまとまった。あれ?同僚は結局年上の上司とは不倫していなかったの?照れ隠しの嘘だったの?とその点はちょっとスッキリしなかった。

 観終わった後はナシゴレンが食べたくなる映画。

 

追記:「ABCテレビ大賞」を受賞したので、2020年1月10日25時59分からテレビで放送される(関西地区のみ)。真夜中だが、地上波でインドネシア映画が放送されることなどなかなかないよ。

日本映画「洗骨」を大阪で観る

ガレッジセールのゴリが脚本監督している映画。

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予想以上に良かった。但しゴリが笑わそうとしているあざとい部分は笑えなかった。

キャストがうまい。奥田英二は白ブリーフ姿までさらけ出したダメ男っぷりも良かったし、その姉役の大島蓉子はしっかりこの映画の要になっている。

一つの島の中に「あの世」と「この世」が同時に存在しているのがいい。「葬式は死者のためではなく残された者のために行う」と言ったのは永六輔だが、全くその通り。この映画でもずっと妻の死を受け入れられずにいた父が立ち直っていく。骨になった姿を見ればその死は一目瞭然だから。そしてこの事は犯罪の抑止力にもなる。悪い事をしたら自分の死後に洗骨してくれる人がいないのだから。

洗骨の現場でお産が始まるのはお約束。しかしそれを父親の手で取り上げるのは女として嫌だ。これはちょっとご都合主義だ。

あと島の自然に圧倒される。嘘みたいな海の青さを画面に出されたら、細かい短所なんて全部吹っ飛んでしまうよ。