こんな映画がもっと増えればいい「心迷宮(2015)」

中華圏の映画やドラマが好きな人なら「一体・・何時になったら華流は来るんだろう・・・(遠い目)」と何度も思ったことだろう。

今はネットがあるので情報収集も便利になったが、まだまだ全体を網羅出来るとは言い難い。そんな中で「アジアンパラダイス」さんは貴重な情報源だ。

アジアンパラダイス

「心迷宮」は「アジアンパラダイス」さんの紹介で観た中国映画。

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実際にあった話を元ネタに、新人監督の忻鈺坤(シン・ユークン)が1年かけて脚本を書き、撮った初の長編映画。「メメント」以降過去に遡って進行する映画が増えたがこの映画もそうだ。河南省の小さな村で、一つの死体をめぐって住民の思惑がそれぞれ交差していく。

監督の経歴がおもしろい。北京電影学院文学科と監督科の試験に落ちた後、自分で商売を始める。その後西安で音声の助手をしたり、撮影現場で雑用係として働く。西安の地元テレビ局に移り多くのテレビ番組を制作、そしてまた北京電影学院撮影科の1年コースに入る。卒業後は北京で広告や宣伝用の映像を撮影。大陸ではこういった紆余曲折は結構ある。現場の雑用係が次に会ったら音声さんになっていたり、記録さんが脚本家になっていたり。

無名の新人監督の作品なので予算はない。予算がないとまず削られるのは照明と美術。カメラは手持ち。衣装は自前。出演者も全員無名だ。

そんな低予算映画だが、香港、台湾、ヴェネツィアで賞も獲得し大好評だった。

とにかく脚本の構成が素晴らしい。すべての伏線が最後にピタッと収まって気持ちいい。村特有の濃い人間関係とかちょっと腹黒い打算とかの描写もうまい。そして最後のシーンで棺桶を挟んで見つめあう親子を持ってきたのに座布団三枚あげたくなった。

その後忻鈺坤はその実力を徐々に認められ、2人の監督と一緒に陳柏霖(チェン・ボーリン)主演の中国映画「再見、在又不見(2016)」を撮り、新作「爆裂無声」が今年上映される予定だ(本来なら2017年10月に公開予定だったが延期され、未だに確定していない)。

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これは予算たっぷり。

 

追記:「中国映画祭電影2018」にて、東京と大阪で上映。