人を突き動かすもの「白日之下(白日の下)」

香港では11月2日から一般公開で、台湾では11月17日から一般公開。初日の朝イチに公館の映画館に駆け込んで鑑賞。

A1新聞社の記者凌曉琪は、仕事に対する情熱はもう既にない。介護施設での実態を取材するため、認知症がある入設者の孫に成りすまして侵入する。そしてそこでの人間扱いされない人々の生活に衝撃を受ける。虐待や性犯罪の記事を公表し、介護施設を告発するが、それはそこでしか生活できない人々も追い詰めることとなった。

香港の介護施設の様子は映画「桃姐(桃さんのしあわせ)2011」にも少し登場する。古いビルの一角で、細かく間仕切りされた部屋と呼べないようなところに人を押し込んでいく。香港は地価が高く高齢化社会なので絶対的に人手と予算が足りない。

凌曉琪を演じる余香凝(ジェニファー・ユー)の後ろ姿が映画の中でたびたび映し出される。表情はもちろん見えないが、その強い意志を持った背中が印象的だ。

とにかく俳優が芸達者揃い。院長役の林保怡(ラム・ボウイ)、知的障害者役の梁雍婷(レイチェル・リョン)、強面看護師長の寶珮如(ベイビー・ボー)、そしておじいちゃん役の姜大衛(デビッド・チャン)と胡楓(ウー・フォン)。特に姜大衛がおちゃめ。

実際にあった介護施設の事件が元ネタだが、社会派映画はお金を集めにくい。最終的にプロデューサーの爾冬陞(イー・トンシン)が古天樂(ルイス・クー)の天下一映画会社に持ち込み完成出来た。

監督の簡君晉(ローレンス・カン)はこれが長編映画2作目。簡君晉も映画「年少日記」監督の卓亦謙(ニック・チェック)と同じく金像獎の仕事を爾冬陞と一緒にしている。香港映画界は常に若手の発掘に熱心だが、特にここ数年は才能のある新人監督がどんどん世に出ている。

金馬奬では5部門でノミネートされている。来年の香港金像獎でもノミネートされるかもしれない。