人生の修行

日本で一緒にお仕事をした先輩の話。その人は例えば「今日は林檎が食べたいなあ」と思うと、別に約束したわけではないのにその後誰かが買ってきたりする。そういうことがしょっちゅうあるらしい。
 その後田口ランディのエッセイの中で「願い事がいつも叶う人は、人生すごろくでいえば上がりの状態で、来世でもう輪廻転生しなくていい人」なのだと書いてあるのを読んだ。つまり人生の修行は今世で卒業なのだ。確かにその先輩は、下に慕われ上に頼られと人徳があり、でもそれは本人のたゆまぬ努力から生まれたもので少しも厭味がないという素敵な人だった。
 そして私はと言えば。ずっと食べていないケーキが食べたくなって唯一の小さなスーパーに行き、「好朋友」という森永エンゼルパイそっくりのというかそのまんまだろうというお菓子を買おうとして財布が無いのに気付き、逃げるように外に出るというていたらく。
 しかしその後夕ご飯を食べに食堂に行くと「ハッピーバースデー」のメロディが聞こえてきた。見ると大きなバースデーケーキが2つも!メロディはそのケーキにつきささった花型キャンドル立てから流れていたのだ。聞けばスタッフうちの2人の誕生日が今日なのだった。しかしそのケーキはスポンジと生クリームのみで作られた超ローカル中国式ケーキで、味はまあ、スポンジと生クリームの味しかしないというもの。
一応願いは叶ったといえるかもしれないけど、私の人生修行はまだまだだ。