香港国際電影節で「自由行」を観る

2018年東京フィルメックスでも上映。

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中国大陸から実際に出禁になった応亮(イン・リャン)監督の経験を元にした映画。

香港人と結婚した女性映画監督が台湾で故郷(四川省)にいる年老いた母親と会うが、お互いの心の距離はなかなか埋まらない。夫の気遣いで何とか二人だけで話が出来るようになるが、そこで持病の発作で母親が倒れてしまう。

映画の後に監督とのQ&Aの時間が設けられた。監督の隣にいらっしゃるのは香港国際映画祭では毎度お馴染みの司会兼通訳の方。この人の仕切りにはいつも感心する。

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脚本を書く段階で、主人公を男性監督から女性監督に変更した。何故かというと2人の板挟みになるのが妻だったらもっと悲愴な内容になるから。自分の経験以外にも、友人の祖父からもリサーチしていて話を構成している。

というお話を北京語、普通語交えて語ってくれた。

今回の香港国際電影節は台湾映画を締め出したのかと思えるほどで、唯一この映画が台湾を舞台にしているのでないか。

映画祭と言えども政治と距離を置くのは難しいらしい。

香港国際電影節で「撞死了一隻羊(轢き殺された羊)」を観る

2018年東京フィルメックスでも上映。

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チベット映画なのに、プロデューサー王家衛(ウォン・カーワイ)のテイストがあちこちに点在している。それとも監督の元からあるセンスなのか?

最初に現れるチベットの諺が肝。「もしあなたに私の夢を語ってもあなたは忘れるでしょう。もしあなたを私の夢の中に引き入れたならば、それはあなたの夢に変わりましょう」という意味。まさにそのままの映画だった。

夢心地のような感覚で現実と非現実が交じり合う。運転手のジンパはいつしか復讐者のジンパになる。それは轢いてしまった羊を成仏させようとお寺まで持っていくほど素直な男だからこそ諺の術に嵌まったのかもしれない。

現代の御伽噺。

大阪アジアン映画祭で「パパとムスメの7日間」を観る

遂に最終日。

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原作も監督も日本人。ベトナムは最近韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」もリメイクしていて、積極的に海外の良い部分を取り入れようとしている。

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主役の女の子が超かわいいのにオヤジの演技もちゃんと出来ている。パパもしっかりJKになりきっている。

コメディ映画なので全体的にPOPでカラフル。そんなベトナム映画の変貌にまず驚かされる。女の子の親友や元カレ、大家さん、パパの同僚のキャラも濃くてみんな好き。

現地のベトナムでは大ヒットしたそうで、これが受け入れられる今のベトナムにも興味が湧く。

大阪アジアン映画祭で「アサンディミッタ」を観る

人生初のスリランカ映画。一筋縄ではいかない摩訶不思議な映画。

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アサンディミッタは2度離婚歴のある2児の母親だ。ある日バスでイケメンヴィッキーと出会い、そのまま同棲する。しかしヴィッキーは時々老人に変わる時がある。もともとダメ男のヴィッキーはアサンディミッタと共謀して別の女を騙そうとその女の家に行くが、揉めて3人とも殺してしまう。そしてヴィッキーはそのまま逃亡し、アサンディミッタは捕まり絞首台に送り出される。

ヴィッキーが老人に変わるのは人間の中の黒い部分の代表なのは分かる。実はヴィッキーは外見こそイケメンだが、その実殺人も厭わない悪徳詐欺師なのだった。

監督はスリランカでは有名な監督。銀行員と掛け持ちしているおそらくエリート。そんな頭のいい人が観念的に撮った映画なので、「?」がいっぱい。

スリランカでも多くの映画を製作しているが、この映画では照明がイマイチ。冒頭の夜の屋内のシーンは何故か家の中より窓の外の方が明るい。なのでところどころ顔に影が出来て表情がよく見えなかったりする。これはスタジオ内の撮影のはずなんだけどな。

撮影自体もそのまま撮っている部分があってもう少し工夫が欲しい。ただそれもスリランカの映画がこれから国際的に発展していけば、解決する問題ではある。

主演女優のニルミニ・シゲラさんは映画祭の期間中いろいろな場所で出会えた。精力的に他の映画をたくさん見ているようだ。銀行の仕事が忙しくて来日出来なかった監督の分を補うように動いていて、薬師真珠賞まで受賞したのも納得だ。

大阪アジアン映画祭で「Sad Beauty」を観る

女優とその親友との友情物語。

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仲の良い2人が誤ってDV男を殺してしまう。死体の処理に困った2人がおじさんの家を訪ねて相談にのってもらう。その解決策としてワニに食べさせるというのもすごい話だ。

その帰り2人は大げんかをして別れるが、1年後ガンが末期まで進行した友人を再び訪ねてようやく仲直りする。

基本となるのは仲の良かった友人を亡くした悲しみなのだが、そこから何故殺人死体遺棄事件にまで発展させたのかが少し謎。監督はタイの有名女優ボンコット・ベンジャロンクン。多分友情だけだと話として弱いと思ったのだろうか。でもワニに食べられるシーンはかなりグロで、そっちに話の重点が持っていかれてしまう。

そういった構成としてアンバランスなところはあるが、クラブで踊るシーンやクスリでラリるシーンはかなり上手に撮ってある。

タイの今を知ることが出来る映画の1つ。

大阪アジアン映画祭で「過春天(THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女)」を観る

香港とシンセンとを運び屋として行き来する高校生の物語。「過春天」はその運び屋の隠語でボーダーを渡ること。

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英語のタイトルは「The crossing」。ボーダーを越え、運び屋という犯罪の世界を越え、少女から大人へ越える物語だ。

シンセンで母親と一緒に暮らしている佩佩(ペイペイ)の父親は香港に住んでいて別の家族がいる。佩佩は香港で生まれた香港市民なので、毎日ボーダーを越えて香港の高校に通っている。親友はお金持ちでクリスマスに一緒に日本へ行こうと誘われる。旅費を稼ぐためにバイトを始めるが、ある日偶然「運び屋」の手助けをする。そこから自分も「運び屋」のバイトをして稼ぐようになるが、次第に犯罪の世界から抜け出せなくなる。

彼女がどんどん犯罪の世界にのめりこんでしまうのには、背景に孤独と、アイデンティティーの揺らぎがある。一応香港人だがクラスメイトのように無邪気に香港人として振舞えない。父親は佩佩にやさしいが、いつもこっそり会っている。しかし運び屋の仕事をしている時は、女ボスやその仲間は自分を家族のように扱ってくれるのだ。そりゃ、抜け出せなくなるよね。しかし仲間の一人が佩佩を心配して足を洗うように忠告する。それが親友の彼氏で、次第に彼と仲良くなることで親友とは絶交することになる。

結局、ぎりぎりのところで佩佩は警察に捕まり、普通の高校生の生活に戻る。しかしそこには少し大人になった佩佩の姿があった。

監督は大陸の西北部から香港に移民をして2003年から映画の勉強をするために北京に移っている。つまり監督自身が中国と香港の歴史のど真ん中にいるような人なのだ。そしてこの映画は田壮壮ティエン・チュアンチュアン)監督の協力も得ている。

なので映画の骨格は中国の文芸調。脚本も起承転結があって、教科書に出てきそうな出来映えだ。なので高校生が主役だが、玄人向けの映画だと言える。

 

追記:2020年11月20日から日本でも「THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女」の邦題で一般公開。

大阪アジアン映画祭で「淪落人(みじめな人/淪落の人)」を観る

黄秋生(アンソニー・ウォン)のうまさが分かる香港映画。

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黄秋生と言えば、香港映画を代表する実力派俳優のはずなのに、最近も「失眠」というキワモノ映画に主演したりしてよく分からない人である。

この映画は万人受けするいいお話だ。なので大阪アジアン映画祭でも「観客賞」に選ばれた。

フィリピン人メイドと半身不随の男との心温まるファンタジー。これを撮ったのは新人の陳小娟(オリバー・チャン)監督。しかし陳果(フルーツ・チャン)がプロデューサーとしてしっかりサポートしているに違いない。劇中でもレストランのオヤジ役としてちょびっと登場している。

監督を交えてのQ&Aでは、撮影現場では黄秋生がアドリブで粗口(広東語スラング)をガンガンしゃべるので、危うく三級片(18禁)になりそうだったと語ってくれた。

主役のフィリピン人女優も映画初主演ながら好演している。その友達役のフィリピン人もそれぞれいい味出していた。

そんなメイド社会も最近はマレーシア系、インドネシア系が増えて更に国際化している。それが外国人労働者が増えた現在の日本の姿とダブる。共存は難しくても、そう出来るように努力することが大事だ。

追記:香港では2018年11月に上映して2019年4月11日から再び一般上映する予定。台湾では4月19日から一般上映する予定。

追記2:日本では2020年2月1日から新宿武蔵野館その他で一般公開が決定。これに伴い黄秋生も来日。

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相変わらずカッコいいオヤジ。