監督が「バッド・ジーニアス 危険な天才たち(2017)」のナタウット・プーンピリヤで、プロデューサーが王家衛(ウォン・カーウァイ)となれば観に行くしかあるまい。
なるべくネタバレなしで感想を少し。
音楽と共にタイの地方を廻るロードムービーである。そこに登場するのはウードの父親の形見でもあるBMW 2000Cというちょっとレトロな車。カセットしかないというところもエモい。
まず最初に行く場所はナコーンラーチャシーマー(KORAT)。ここでダンサーのアリスと再会する。
次に行くのはサムットソンクラーム。この映画に登場する聖母生誕大聖堂は有名な教会らしい。
ここで会うのはチュティモン・ジョンジャルーンスックジン(オークベープ)演じる女優のヌーナー。短い出演だが流石の存在感。
次は一番バンコクから遠いチェンマイ。ここではカメラマンのルンと出会おうとするが・・・。
そしてボスの実家があるパタヤへ。ここでボスの過去が明らかにされる。このウード(Aood)のA面からボス(Boss)のB面への物語の切り替えしが実にうまい。
10年前のボスにちゃんとニキビがあるのがいいwここでボスの複雑な家庭環境が明らかにされる。そして初恋も。
そしてウードとプリムの関係性も明らかになる。でもこれを友情の裏切りと捉えていいのか。ウードにしてみればボスは憎いライバルだったわけだし。その後も言い出せなかった気持ちも理解できる。とにかくウードはずっとしくじり人生なのだ。3人の元カノとの付き合いがうまくいかなかったのも根底にずっと最初のしくじりが影響しているからだ。でも下心無しで好きな相手と接するのは無理だと思う。そして「そんなつもりじゃなかった」と言いながら相手の好意に甘える方にも打算はあるはずだから、責める権利はないと思う。
別に不治の病にかからなくても、人生を振り返ってやりなおしたくなるのはしょっちゅうだ。最期にいい人になってあわよくばプラマイゼロよりはちょっとプラスにしたいなんて思うことも。でもそれこそ自分勝手な考えだと思う。ここは全てを受け入れたウードの潔さを見習うべきだ。
最後は急いでまとめた感じがするが、結局ボスはウードを許して治療を受けさせて面倒をみたのだろうか。そして自分も自暴自棄の人生から抜け出すことが出来た。みんな傷だらけだけど、めでたしめでたしだ。
エンディングロールの音楽にも一番最後にニクい演出があるので、最後まで聞いてほしい。でも日本人以外はみんな席を立つんだろうなあw
今年の香港国際電影節でも上映。
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