「ヘルター・スケルター」を観る

原作は未読。
りりこの深い井戸の中でもがくような焦燥感も生々しい欲望も、「別に」と言えてしまうゆとり世代沢尻エリカやブームの中でも浮かれることなく自分の写真を取り続ける蜷川実花の中にはないんだろうなと映画を観て思った。かといって沢尻エリカ北島マヤ並の演技力があるわけでもなく、「言いたいことは分かるけど」と言う程度で終わってしまった。
期待していたりりこの部屋の装飾も、結局蜷川実花が好きな物で埋まっただけでりりこの部屋には見えなかった。
一番リアルだったのは寺島しのぶの羽田ちゃんで、ああいうダメな35歳の女ってたくさんいると思う。「私がいないともうみんなだめなんだから」と自分に言い聞かせるところとかホントお寒い。
桃井かおりの最後まで腹の底では何考えているのか知れない女社長もよかった。
一番力が入っていたのはグラビア撮影のシーンだろう。何パターンもメイク衣装を用意して万華鏡のようにくるくる変化していくのはとても楽しい。
映画の中で女子高生の姿が何度も登場するが、最近の若い子達はあまり欲がないのでりりこのようになりたいとも思わないのではないか。それよりバブル時代に青春を送ったアラフォー世代の業の深さには恐れ入る。りりこを「40代なのに20代に見えるセレブなカリスマモデル」に変えたらもっとドロドロした映画になっただろうなw
アートをど真ん中に置いた映画といえばターセム・シン監督を思い出す。あのうっとり感はやはり他では味わえない。