陳英雄監督「I come with the rain」を観る

今季2度目の大雪と寒波で部屋に籠りっきりである。暇なのでたまっていた映画を観ることにした。しかし最近買物にも行っていないので殆どが人からもらったもの。こういうのも自分の趣味以外のものが見られておもしろい。
陳英雄とはトランアンユンのこと。ベトナムもかつて漢字を使用していた時期があったので、ベトナム人は中国に来ると(自動的に)漢字表記になる。
知らなかったが日本でも去年既に公開済だった。
「青いパパイアの香り」しか知らないとのけぞるかもしれない。トランアンユンは作品ごとに自分の変態性を高めている気がする。もちろんいい意味で。
今回は「肉体」と「苦痛」を大きく取り上げている。「苦痛」も刺されたら痛いレベルのものすごくストレートな意味あいだ。
「肉体」を見せるためにヨメ(主演女優のトラン・ヌー・イェン・ケー)の肌の露出もぎりぎり。でもヌードはエキストラのみ。
男性俳優は世界イケメン選手権になっており、
アメリカ代表=ジョシュ・ハートネット
日本代表=木村拓哉
香港代表=ショーン余文楽
韓国代表イ・ビョンホン
で、鍛えられた上半身を披露している。
木村拓哉については「2046」ではまだ残っていた「キムタク」臭が、この作品では消えていたのでいいことだ。
イ・ビョンホンは柄シャツが変。いかにもなヤクザだ。
「イエスキリストの再来」というモチーフが出て来るが、宗教的意味合いよりもここではキリストが受けた「苦痛」の方に重点が置かれているのではないか。それも「張り付けにされたらどれだけ痛いか」という単純で直接的な疑問。
とにかく最後まで「痛いこと」の連続なのだ。そして連続殺人犯がつくりだす奇妙な芸術品。肉体に潜む美を一度壊してまた構築する作業。しかしあの作品の中に私は美は見出せなかった。
美術的に言えばヤクザの部屋の赤いソファーに目が行く。あれを探し出した美術助手はガッツポーズだったんじゃないかな。後、啓徳空港跡地。ここは再開発計画が進行中なのだが、いっそのこと撮影用にずっと残して欲しい。他にもいくつか作品に使用されている場所だ。
好き嫌いがはっきり分かれる映画。「青いパパイアの香り」しか知らない人は「シクロ」をまず見よう。